巨大割石に無明橋も!大分・国東半島夷地区に残る不思議な石の世界

巨大割石に無明橋も!大分・国東半島夷地区に残る不思議な石の世界

更新日:2020/12/03 14:41

小野 浩幸のプロフィール写真 小野 浩幸 ミステリアス・スポット研究家
大分県国東半島の夷地区は、不思議な石の世界が伝わる小さな集落。中世以降は天台宗密教の修行の地として栄え、豊富な石材と石工集団により人々の祈りを石で語り継いできました。戦国時代には豊後国はキリスト教の国へと変貌を遂げ、禁教・道教の時代を経て現在に至ります。
また、人気の漫画「鬼滅の刃」で登場する割石を彷彿とさせる直径10メートルを超す巨大な割石も!この集落に残る石の世界を巡ってみませんか。

かつては人を飲み込むと云われた恐ろしい巨岩「兄弟割石」

かつては人を飲み込むと云われた恐ろしい巨岩「兄弟割石」

写真:小野 浩幸

地図を見る

夷地区は中山仙境(夷谷)と呼ばれる切り立った岩峰の両側に「東夷」と「西夷」という二つの谷が続いています。かつては悪魔や魔物が棲む大魔所として人々に恐れられ、平安時代から鎌倉時代にかけて厳しい修行を課すために天台宗寺院の僧侶たちが仏事に勤しむ傍らで谷の開拓を行い、少しずつ夷谷を人々が暮らせる里にしていった歴史があります。

その二つの谷に大きさも形も類似した「兄弟割石」と呼ばれる巨岩があります。
岩の中心には大きな割れ目があり、中に入ると中山仙境の地下で繋がっているという伝承がありますが、一旦中に入った者は割れ目に挟まれて2度と出られないと伝えられてきました。また、地元では「西の割石が雉を食えば東の割石が人を食い、東の割石が雉を食えば西の割石が人を食う」という言い伝えもあります。

かつては人を飲み込むと云われた恐ろしい巨岩「兄弟割石」

写真:小野 浩幸

地図を見る

東の割石は、夷谷温泉へと続く竹田川沿いの六所神社前にそびえており、こちらも迫力満点!間近から見上げることが出来ます。
現在、人気の漫画「鬼滅の刃」で登場する割石が話題になっていますが、いずれの割石もどこかそれを彷彿とさせる姿ですね。

コレって何の神様?異形の庚申塔

コレって何の神様?異形の庚申塔

写真:小野 浩幸

地図を見る

中山仙境の入口には、大変不思議な石像があります。
これは、中国の道教をルーツとし、日本には江戸時代中期以降に多く建立された庚申塔。通常は三猿や鶏、邪鬼などが青面金剛(しょうめんこんごう)と一緒に彫られているのですが、これは少し内容が異なっています。

中心に彫られているのは青面金剛ですが、舟形の形に収められた尊像の手には十字架や蛇。衣装やいでたちも日本人っぽくなくて、異国の風情が漂っています。

コレって何の神様?異形の庚申塔

写真:小野 浩幸

地図を見る

先程の庚申塔のあった中山仙境入口交差点から、右(西夷)へ約550mほど登っていきますと、左手にこんもりとした小山があります。備え付けられた脚立を使い、一番上まで登っていくと、ここにも不思議な庚申塔が祀られています。

コレって何の神様?異形の庚申塔

写真:小野 浩幸

地図を見る

風化が進み全体的に彫りがまろやかになっていますが、台座の方をよく見るとカニが彫られていることが分かります。
国東半島には1,000基を超える庚申塔がありますが、カニが彫られているのはこれだけです。道教に全く無縁なカニがなぜ彫られているのでしょう?鹿児島県カテドラル・ザビエル記念聖堂の鐘には、十字架を持ったカニが描かれていますが、こちらのカニもザビエルと関係があるのでしょうか。

実は、この夷地区の隣町は「世界を歩いたキリシタン」として有名なペトロ・カスイ岐部の出生地で、広く国東半島一帯や豊後高田市内にもキリシタン史跡が点在しています。地元教育委員会やキリシタン研究会も長年にわたって調査を行ってきましたが、現在も謎に包まれたままなのです。

断崖絶壁に架かる「無明橋」は修行の為に架けられた石橋

断崖絶壁に架かる「無明橋」は修行の為に架けられた石橋

提供元:豊後高田市観光まちづくり株式会社

https://www.showanomachi.com/地図を見る

国東半島の寺院では、古くから「峯入り」と呼ばれる歩く修行がありました。中山仙境もその代表的な峯道のひとつで、これらの道やお堂などは全て天台宗寺院の僧侶によって拓かれました。

中山仙境は、最も高い高城と呼ばれるポイントでも標高は317mと低山ですが、周囲を遮るものがなく、パノラマの景観が広がっています。中でも人気あるポイントは「無明橋」と呼ばれる幅50cm程の石橋。これを歩いて渡るにはかなりの勇気が必要。まさに天空の橋ですね。登山口から無明橋までは1時間ほどで辿り着きます。

断崖絶壁に架かる「無明橋」は修行の為に架けられた石橋

写真:小野 浩幸

地図を見る

片側(写真右側)は断崖絶壁で滑落すれば命の保証はありません。渡ってみたいという方は、自己責任ということを忘れないでくださいね。
無理して渡らなくても、実はもう片方側(写真左側)に、高さ2m弱と低く安全な迂回路がありますので、そちらへ回りましょう。

断崖絶壁に架かる「無明橋」は修行の為に架けられた石橋

写真:小野 浩幸

地図を見る

迂回路から撮った写真です。無明橋は、ふたつの大きな石材を両側から架け、支え合ってバランスを保っています。

橋の向こう側は切り立った絶壁になっており、山道も狭く斜面も急なため、このような場所によく橋を架けられたなと感心させられます。ここまで石材を運び、死と隣り合わせながらの過酷な労働。修行の道を拓くというのは、僧侶の命運をかけた壮大なプロジェクトであったことが分かります。

国東半島夷地区に残る石の世界はいかがだったでしょうか。他にも恐ろしい言い伝えのある石像や不思議な磨崖仏など数えきれないほどの石像物が点在しています。

豊後高田市夷地区の基本情報

住所:大分県豊後高田市夷
電話番号:0978-23-1860(豊後高田市観光まちづくり株式会社)
アクセス:大分空港から車で約1時間、JR宇佐駅から車で約40分

2020年12月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2020/09/14−2020/11/18 訪問

- PR -

条件を指定して検索

- PR -

この記事に関するお問い合わせ

- 広告 -