狛犬じゃないのだニャー!京都峰山町「金刀比羅神社」の“狛猫”

狛犬じゃないのだニャー!京都峰山町「金刀比羅神社」の“狛猫”

更新日:2021/06/23 15:17

乾口 達司のプロフィール写真 乾口 達司 著述業/日本近代文学会・昭和文学会・日本文学協会会員
狛犬といえば、神社の拝殿あるいは本殿の脇にひかえる一対の神獣として、ご存知の方も多いでしょう。神社ではしばしば見かける存在ですが、京都府峰山町の金刀比羅神社には、何と狛犬ならぬ「狛猫」と称さる神獣がひかえています。その名のとおり、「狛猫」の造型は猫そのもの!今回は世にも珍しい金刀比羅神社の「狛猫」とそれが作られた歴史的背景をご紹介しましょう。

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京都府京丹後市峰山町の金刀比羅神社

京都府京丹後市峰山町の金刀比羅神社

写真:乾口 達司

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「金刀比羅神社(ことひらじんじゃ)」は、京都府京丹後市峰山町にある神社。1811年(文化8)、峯山藩第7代藩主・京極高備の命により、創建されました。以来、「丹後のこんぴらさん」として、歴代藩主のみならず地域住民に篤く崇敬されています。

京都府京丹後市峰山町の金刀比羅神社

写真:乾口 達司

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神域の最頂部には、本殿・拝殿・絵馬舎が置かれています。御祭神は大物主神。本殿にお参りするには180段もの石段を登らなければなりませんが、狛猫を拝観する前に、まずは本殿にお参りしましょう。

京都府京丹後市峰山町の金刀比羅神社

写真:乾口 達司

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「狛猫」があるのは、本殿へと向かう途中、石段の脇に鎮座する木島神社・猿田彦神社。社殿の前に一対の狛犬ならぬ「狛猫」がひかえていること、おわかりになりますか?

京都市の木嶋坐天照御魂神社の境内社「養蚕神社」より勧請されたことからもわかるように、木島神社は養蚕や丹後ちりめんの生産のさかんであった峰山の守護神とされています。峰山では、古来、機織に欠かせない蚕をネズミから守ってくれる猫が大切にされており、その守護神である木島神社に「狛猫」が奉献されたという次第。

その意味で「狛猫」は峰山の地を象徴する歴史的遺産であるといえるでしょう。

親子猫の造型が珍しい!阿形の「狛猫」

親子猫の造型が珍しい!阿形の「狛猫」

写真:乾口 達司

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では、「狛猫」を詳しく見ていきましょう。

写真は向かって左側の「狛猫」。親猫にしがみついた子猫を親猫が包み込んでいるような愛くるしい造型に特徴があります。

口を大きく開けている造型はネズミを威嚇する様子を示していると思われますが、狛犬の造型に多く見られる「阿吽」の造型のうちの阿形を示しているともいえますね。

親子猫の造型が珍しい!阿形の「狛猫」

写真:乾口 達司

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台座には「江州 外村氏」と刻まれています。すなわち、阿形は「江州」(近江国)出身の外村氏によって奉献されたものなのです。

外村氏は織物をあつかう商人であり、機織業の盛んだった当地に機織・養蚕の守護神である木島神社が勧請されたことにちなみ、「狛猫」を奉献したものと考えられます。

親子猫の造型が珍しい!阿形の「狛猫」

写真:乾口 達司

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こちらの面には、製作者の名前が刻まれています。「天保三戴壬辰九月 石工 鱒留村 長谷川松助」とあるように、阿形は鱒留村の石工・長谷川松助によって作られ、1832年(天保3)に奉献されました。

長谷川松助は丹後地方では名の知れた石工で、京都府下では最大級の石仏・平地地蔵を造った名工でもありました。

製作時期にズレがある吽形

製作時期にズレがある吽形

写真:乾口 達司

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一方、向かって右側に立つ「狛猫」は、左側の阿形に対して、口をしっかりと閉じた吽形の造型となっています。

製作時期にズレがある吽形

写真:乾口 達司

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顔をじっくり観察すると、ヒゲまで丁寧に刻まれており、こちらも猫であることが一目でわかりますね。

製作時期にズレがある吽形

写真:乾口 達司

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とりわけ、注目したいのは、台座に刻まれた文言。阿形と異なり、製作者の名を示すものは見当たりませんが、「弘化参午青祀」と記されているように、1846年(弘化3)に奉献されたことがわかります。阿形の奉献が1832年であったことを思い返すと、吽形は阿形の奉献後、14年も経ってから作られたことになります。

ここからわかることは、左右一対の「狛猫」が当初から狛犬の身代わりを意図して作られたものではないということです。すなわち、阿形がまず外村氏によって単体で奉献された後、その阿形を意識して吽形が作られ、やがて狛犬の配置形態にあわせて現在の形に配置しなおされたというわけです。したがって、狛犬をもじって「狛猫」と呼ばれてはいますが、正確には猫型石像物と表現するのが適切でしょう。

「狛猫」にこんな歴史があったとは、驚きですね。

「狛猫」を作ろう!「こまねこまつり」の製作物

「狛猫」を作ろう!「こまねこまつり」の製作物

写真:乾口 達司

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木島神社の社殿には、猫を模したこのような置物が供えられています。

もちろん、これは「狛猫」にちなんだもの。近年、町おこしの一貫としてはじめられた「こまねこまつり」にちなんで製作されたもので、「狛猫」がいまもなお峰山の人たちに愛されていることがうかがえます。

「狛猫」を作ろう!「こまねこまつり」の製作物

写真:乾口 達司

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社務所の横の軒下には、同様の置物がずらり。それぞれ表情が異なっているため、眺めていると楽しく感じられますよ。

皆さんも「こまねこまつり」に参加し、思い思いの「狛猫」を作ってみてはいかがでしょうか?

「狛猫」を作ろう!「こまねこまつり」の製作物

写真:乾口 達司

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奉納されている絵馬もやっぱり猫!それぞれ個性的な猫の顔が描かれており、こちらも必見です。

丹後ちりめんの隆盛をいまに伝える絵馬

丹後ちりめんの隆盛をいまに伝える絵馬

写真:乾口 達司

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境内には「狛猫」以外にもあちらこちらに狛犬を見かけます。

写真の狛犬もその一つ。やはり子どもを抱いています。「狛猫」の阿形の方と見比べてみましょう。

丹後ちりめんの隆盛をいまに伝える絵馬

写真:乾口 達司

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境内社の稲荷社に立つのは、もちろん、キツネです。

丹後ちりめんの隆盛をいまに伝える絵馬

写真:乾口 達司

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最後に注目していただきたいのが、絵馬舎に掲げられているこちらの絵馬。峰山町の祭礼の様子を描いたものです。

たくさんの山車が連なっているのが、ご覧いただけますね。山車が何台も連なる様子からは、峰山の町が丹後ちりめんの生産によって大いに繁栄していたことが見て取れます。こういった繁栄があったからこそ、ネズミを撃退してくれる猫が神さまの使いとして篤く敬われ、「狛猫」まで奉献されたわけですね。

「狛猫」がいかにユニークな石像物であるか、おわかりいただけたでしょうか。「狛猫」について学ぶことは、そのまま丹後ちりめんで繁栄をきわめた峰山の歴史を知ることにもなります。峰山町の金刀比羅神社を参拝し、世にも珍しい「狛猫」を通して、丹後ちりめんで繁栄をきわめた峰山の歴史や風土にも思いをめぐらせてみてください。

金刀比羅神社の基本情報

住所:京都府京丹後市峰山町泉1165-2
電話番号:0772-62-0225
アクセス:丹後鉄道「峰山駅」より徒歩約10分

2021年6月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2021/04/04 訪問

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