西太后ゆかりの品も!駒込・東洋文庫ミュージアム「大清帝国展完全版」

西太后ゆかりの品も!駒込・東洋文庫ミュージアム「大清帝国展完全版」

更新日:2021/02/20 17:55

澁澤 りべかのプロフィール写真 澁澤 りべか 西洋史ブロガー
圧巻のモリソン書庫で知られる駒込の東洋文庫ミュージアムで、注目の展覧会が開催されています。「大清帝国展 完全版」です。2020年3月に会期半ばで臨時休館となってしまった「大清帝国展」がパワーアップして帰ってきました。清朝の歴史における重要人物、李鴻章、西太后、ラストエンペラー溥儀(ふぎ)などにゆかりのある貴重な品々を見られる絶好のチャンスです。

清朝の歴史がしっかり頭に入る展示構成

清朝の歴史がしっかり頭に入る展示構成

写真:澁澤 りべか

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東洋文庫ミュージアムでは年に3度、約100万点の所蔵品の中から特定のテーマに沿って選んだ資料を展示公開する特別展を開催しています。

2021年の「大清帝国展 完全版」は前年に中断された「大清帝国展」を補完するもので、2つの展覧会における展示品の重複はわずか。今回の展示では時系列に配置された各種の資料により、建国からアヘン戦争を経て衰退していくまでの清朝の様子がとてもよく分かります。

まず1階のオリエント・ホールでは「中国歴史名所めぐり」と題して、歴代王朝の首都やそれに匹敵する重要する都市に関する資料を展示。北京、洛陽、西安、開封…。そして赤壁に成都。書物でめぐる中国古都の旅、といったおもむきです。

それでは2階に上がりましょう。

清朝の歴史がしっかり頭に入る展示構成

写真:澁澤 りべか

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有名なモリソン書庫のある大空間を抜けて特別展エリアに進むと、まずは清朝の太祖ヌルハチがお出迎え。

ここでは「帝国の栄光I」として明朝末期から清朝の成立にかけての歴史資料を扱います。日本とゆかりの深い鄭成功に関するものも。文楽や歌舞伎のファンなら「国姓爺合戦」の主人公といえばお分かりですね。

清朝の歴史がしっかり頭に入る展示構成

写真:澁澤 りべか

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次の「帝国の栄光II」でまず目につくのが円明園。イタリア人宣教師が設計した中国初の西洋建築の離宮です。残念ながらアロー戦争(1856〜60年)の際に英仏軍の攻撃を受け壊滅。往時の華麗さがしのばれます。展示室のどこかに円明園のカケラも展示されていますので、探してみてください。

教科書でおなじみの風刺画『マカートニーを謁見する乾隆帝』や、その乾隆帝の威風堂々たる騎馬肖像画(レプリカ)も必見です。

書籍だけじゃない!ユニークな資料に瞠目

書籍だけじゃない!ユニークな資料に瞠目

写真:澁澤 りべか

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次の展示室へと続く幻想的な通路「回顧の道」では、清朝末期の人々の装いや女性の髪形がよく分かる写真を見ることができます。

そして通路の突き当りのキャビネットの中にご注目。西太后人形や清朝女性の爪カバーなど珍しい品が収められています。

清朝の女性は爪を長く伸ばし、折れないようにカバーを付けていました。それが「指甲套(しこうとう)」と呼ばれる爪装飾具。ギャルもびっくりの長さです!

書籍だけじゃない!ユニークな資料に瞠目

写真:澁澤 りべか

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2つ目の展示室には、やはり教科書でおなじみの『アヘン戦争図』が!
銅版画の前にはアヘン吸引具の実物もあり驚かされます。アヘンはケシ科の植物由来の麻薬で、火であぶってタバコのように喫煙しました。

アヘン戦争終結時に結ばれた南京条約の調印式を描くプラットの『南京条約図』も、歴史好きなら見逃せません。
香港の割譲、五港開港などを約束させられた清は、帝国主義の高まりの中で、これ以降急激に衰退していきます。

書籍だけじゃない!ユニークな資料に瞠目

写真:澁澤 りべか

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次の目玉展示に行く前に、ちょっと一休み。クスっと笑える展示があります。それが『点石斎画報』という絵入り新聞の総集編。

主な内容は三面記事や海外事情ですが、なんだか奇妙な事件も紹介されています。
さて、ここに描かれているヒョウ人間(右)の正体は?
足が生えた魚(左)を食べた人たちはどうなった!?
ぜひ館に足を運んで確かめてくださいね。

西太后や溥儀の絵画、そしてなんと纏足の…!

西太后や溥儀の絵画、そしてなんと纏足の…!

写真:澁澤 りべか

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全展示品の中でもっとも華やかなのは、壁にかかる皇后用の礼服。長袖の上から羽織るものです。その前に見える扇には蘭が描かれています。作者はなんと、あのラストエンペラー溥儀です。
礼服の左の掛け軸は、西太后の手になる水彩画。様々な草花が「寿」の文字を形作る、美しくて縁起の良い作品です。

太平天国が発行した貨幣、太平天国軍と戦った曾国藩や李鴻章の日記、李鴻章の書などもぜひご覧ください。

西太后や溥儀の絵画、そしてなんと纏足の…!

写真:澁澤 りべか

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東洋文庫ミュージアムの常連の方なら、これはもうご存じですね。そう、『殿試策』。官吏登用試験である科挙の最終試験「殿試」の答案です。これは受験生が書いたものを役人が清書したものと思われます。大変美しい文字で書かれており、何度見てもため息がでます。

この『殿試策』をプリントしたクリアファイルはミュージアムショップの人気商品で、軒並み売り切れます。

西太后や溥儀の絵画、そしてなんと纏足の…!

写真:澁澤 りべか

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そろそろ終りかな…と思ったところで、最後に驚きの展示品が待ち構えています。それこそが纏足(てんそく)の靴。

宋代に始まった纏足は、幼女の足を成長しないように布で縛る習慣です。成人しても足のサイズは7センチほどにしかなりません。その小さな足のために作られた靴が展示されています。新品に近く大変保存状態も良い珍品です。

写真は纏足の女性。その足にどんな靴を履いていたのか…ぜひ見に来てくださいね。

緑の文字だけ読めばだいたいOK!

東洋文庫ミュージアムといえば日本最大級の本の博物館ですが、その展示品は書物だけではありません。とはいえ展示室には文字情報が多く、そのすべてを読んでいるとかなり時間がかかります。

そこでおすすめなのは、キャプション(各展示品に付けられた説明書き)の3行目、緑の文字を読むことです。この一文は、展示品の特徴を分かりやすく簡潔に、時にユーモアたっぷりに表現しています。時間がない方はここだけ読んでください。また、嬉しいことに館内は撮影自由です!

2020年「大清帝国展」と2021年「大清帝国展 完全版」の図録、各570円が2冊セットで1000円ととってもお得なので、家でゆっくり読みたい方はこちらをどうぞ。

2021年2月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2021/02/05 訪問

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