チュニジア「エル・ジェム」の古代ローマ闘技場とモザイクに驚嘆

チュニジア「エル・ジェム」の古代ローマ闘技場とモザイクに驚嘆

更新日:2021/04/14 11:12

大竹 進のプロフィール写真 大竹 進 元旅行会社勤務、元旅行専門学校講師
ローマ帝国はその領土に多くの巨大建造物を建設して来ましたが、その代表的なものが円形闘技場です。チュニジアに25ヵ所残る中でエル・ジェムの円形闘技場は最も保存状態が良くローマをも凌ぐと言われています。
エル・ジェムはローマ帝国のアフリカ領の中で最も豊かだった都市の一つで、2世紀には繁栄を極め、市民が豪華な邸宅を建てた際作らせた見事な多数のモザイクが、現在は当時の住居跡と共に博物館に展示されています。

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ローマよりも保存状態が良いと言われる円形闘技場

ローマよりも保存状態が良いと言われる円形闘技場

写真:大竹 進

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エル・ジェムは首都チュニスの南方約200kmの内陸にある都市ですが、古代ローマの時代はシスドラスと呼ばれていた地で、1世紀頃には人口4万人を数え、北アフリカのサヘル地方でオリーブオイルを中心とした主要な交易都市となっていました。

この円形闘技場は繁栄を極めた2世紀に建設が始められ、3世紀初めに完成しましたが、長径149m、短径124mの楕円形で、高さは36mあり、35,000人もが収容出来る巨大さで、世界遺産に登録されています。

ローマよりも保存状態が良いと言われる円形闘技場

写真:大竹 進

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先程と反対側から見た所です。こちら側が崩れているのは、1695年に当時この地を支配していたオスマントルコに抵抗する人々がここに立てこもり、それに対してオスマントルコ側が大砲を撃ち込んだため、一部が破壊されてしまった結果です。

ローマよりも保存状態が良いと言われる円形闘技場

写真:大竹 進

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円形闘技場の長径側にあるアリーナへの出入口からの眺めです。手前の出入口は長い歴史の中で上部が失われてしまいましたが、反対側の出入口は創建時のままの高いアーチが残り、当時の様子を伺い知る事が出来ます。

円形闘技場の内部

円形闘技場の内部

写真:大竹 進

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円形闘技場のアリーナ内は長径65m、短径40mあり、ここでローマ時代には剣闘士の戦いや、奴隷や罪人と猛獣との闘技などが行われていましたが、35,000人収容出来た観客席は、階級によって三層に分かれていました。

修復・改装された現在では毎年7・8月に壮大な音楽フェスティバルが開催されていますが、1700年の歴史を刻んで来た闘技場で行われるフェスティバルは雰囲気抜群ですね。

円形闘技場の内部

写真:大竹 進

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円形闘技場の建設に当たっては、エル・ジェムから東に38km離れたセレクタから切り出された石が使われていますが、アーチの連なる通路は絵になる光景です。柱の影と隙間から差し込む光のコントラストは、まるでジョル・デ・キリコの絵の様にも見えます。

円形闘技場の内部

写真:大竹 進

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地下には何本もの通路が設けられ、多くの部屋がありますが、ここには動物や奴隷などが入れられており、地下から地上へ上げるエレベーターも設置されていました。

<エル・ジェム円形闘技場の基本情報>
住所:El Jem Amphitheatre, El Jem
アクセス:エル・ジェム駅から650m
営業時間:(夏期)7:30〜18:30、(冬期)7:30〜17:30
休業日:無し
入場料:12チュニジア・ディナール(約500円)

モザイクの素晴らしいエル・ジェム博物館

モザイクの素晴らしいエル・ジェム博物館

写真:大竹 進

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円形闘技場の南方約1km程の所に1971年に開館したエル・ジェム博物館があり、19世紀末からフランス人考古学者によってエル・ジェムで発掘されたモザイクや大理石の彫像などが多数展示されています。写真は博物館の入口ですが、屋上にはチュニジア国旗が翻っています。

モザイクの素晴らしいエル・ジェム博物館

写真:大竹 進

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博物館の敷地には古代ローマ人の住居跡が広がり、当時の家の間取りや街並の様子などが判ります。遺跡を歩くと、1700〜1800年前ここに住んでいた人々は一体どの様な生活をしていたのだろうかと、想像を掻き立てられます。

モザイクの素晴らしいエル・ジェム博物館

写真:大竹 進

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博物館にはローマ時代当時の住居を復元した「アフリカの家」と呼ばれる建物がありますが、周囲に回廊を巡らし中庭を持つこの家は、アフリカのモザイクがある事からこう名付けられています。

神話に題材をとったモザイク

神話に題材をとったモザイク

写真:大竹 進

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博物館内には古代ローマの住居跡から発掘された多くのモザイクが展示されていますが、そのどれもが実に見事で保存状態も良い事に驚かされます。

モザイクの題材はギリシャ・ローマ神話からとったものも多く、写真は愛と美の女神アフロディーテ(ローマ神話ではヴィーナス)が海から現れたところです。

神話に題材をとったモザイク

写真:大竹 進

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頭に麦やブドウなどを飾っているのは豊穣とブドウ酒の神ディオニュソス(ローマ神話ではヴァッカス)です。周囲をかたどるモザイクもブドウやザクロなど豊穣の神に相応しいもので飾られています。

神話に題材をとったモザイク

写真:大竹 進

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ディオニュソス(ヴァッカス)は酩酊の神でもあるので、このモザイクの様に酩酊して従者に抱えられている姿で表される事もあります。神様がこの様なだらしない姿で表現されるというのも面白いですね。

現実の世界をテーマにしたモザイク

現実の世界をテーマにしたモザイク

写真:大竹 進

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博物館に展示されているモザイクの多くは当時の豪邸の床を飾っていたものですが、モザイクのテーマとして神話以外では鳥や動物を描いたものが多く見られます。写真は虎が馬を襲っているところですが、驚いて飛び逃げる様子や、噛みついた背中から流れ出る血がリアルに描かれています。

この様なモザイクは、発掘時には一部損傷しているケースも多いのですが、エル・ジェム博物館に展示されているものは保存状態が良く、千数百年も前に制作されたとは思えない素晴らしさです。

現実の世界をテーマにしたモザイク

写真:大竹 進

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これはライオンがイノシシを襲っているところですが、獲物をむさぼり食いながらもこちらに鋭い視線を投げかけるライオンは、その様子を見る者に「食べるのを邪魔するな」とでも言って威圧している様です。

現実の世界をテーマにしたモザイク

写真:大竹 進

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モザイクの中には残虐な場面を描いたものもあり、写真は罪人または弾圧されていたキリスト教徒が腕を縛られて円形闘技場に引き出され、ヒョウの様な猛獣に襲われている様子ですが、噛みつかれ鋭い爪で引き裂かれた体から滴り落ちる大量の血が何ともリアルで無残です。

この様なモザイクを日々眺めながら過ごす感覚は現代人とは違う様に思われますが、当時の人々には何でもない事だったのかも知れません。

<エル・ジェム博物館の基本情報>
住所:El Jem Museum, Al-jamm
アクセス:エル・ジェム駅から550m
営業時間:(夏期)7:30〜18:30、(冬期)7:30〜17:30
休業日:無し
入場料:12チュニジア・ディナール(約500円)

迫力満点の円形闘技場と、保存状態の良い素晴らしいモザイク

エル・ジェムへは、首都のチュニスから列車で約3〜4時間で行け、1日に5〜7本が運行されています。保存状態の良い円形闘技場は、アリーナに出たり地下通路を通ったり最上階の3階まで登る事も出来ますから、訪れた際はあちこち足を延ばしてみて下さい。

博物館にはご案内した通り、素晴らしいモザイクが多数展示されている他、ローマ時代の住居跡も見学する事が出来ますので、千数百年前に思いを馳せて散策するのも楽しいと思います。

エル・ジェムを訪れてその歴史をあなたも辿ってみませんか。

2021年4月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2020/03/04 訪問

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