六甲東部・北山巨石群の最南端に位置する当社本殿・背後の甑岩(こしきいわ)は、大小三座から成る磐座で、江戸時代前期の明暦2(1656)年に西宮戎神社の祭神の蛭子(ひるこ)大神が勧請されるまでは、高さ10m、周囲30mの花崗岩の巨石をご神体とする古式ゆかしい聖地でした。
ここを真夏に訪れた室町時代の俳人、山崎宗鑑(1464〜1553)は、この巨石を蒸し器のセイロに見立て、江戸前期の俳人松尾芭蕉(1644〜1694)もすぐ脇のご神水の涼味を詠い、それぞれ発句を残しています。
照日かな蒸すほど暑き甑岩 宗鑑
さざれ蟹足這い上る清水かな 芭蕉
現在の本殿は、昭和11年、拝殿は昭和58年に造立されたもので、西宮えびすに対し、北の戎とされ、甑岩の祭神は市杵島姫大神(いちきしまひめのおおかみ)に比定されています。
この巨石がパワースポットの持つ強烈な神威を発揮して人々を震撼させたのは、秀吉による大阪城築城の際のこと。秀吉は、城壁の石垣を築くため近畿一円から石材を徴発しましたが、この霊石を切り出すべく石工たちに命じて割らせていたところ、今にも割れんとする岩の間よりするどい鶏鳴が発せられ真白な煙が立ち上り、石工たちは岩もろとも転げ落ち、何としても甑岩は運び出せなかったと伝えられています。
全山花崗岩から成る六甲山系は、その老成した穏やかな表情とは裏腹に、方々でこうした巨石の祟りめいた逸話が数多く伝えられてきています。
しかし、そのパワーは常に傲慢な権力者や、私利私欲にとらわれた亡者、すなわち自身の醜さが見えなくなった人にのみ発現されるものであることは、多くのパワースポット同様ですので記憶にとどめておくべきでしょう。
脅威的なパワーを発揮して思い上がった人達を調伏した巨岩は、他の多くのパワースポット同様、その持てる力を弱者庇護へとそそいできました。
この地も今日では、女性守護・安産・子授けの神として崇敬を集めています。
それは、甑岩そのものが豊穣・多産のシンボルである女陰石とも感受されることにもよります。
そして、縄文時代より庶民の善意により大切に守られてきたこの神社の杜(もり)も、可憐な花椿の土鈴(500円)にシンボライズされ、そのほほえましい音色は参拝客たちに人気です。
越木岩神社社務所
阪急苦楽園口駅より徒歩20分
電話0798-71-8375
JRと阪急に挟まれた芦屋市東部の瀟洒な住宅地の真ん中に、森閑と鎮もる御陵があります。古くから「親王さんの墓」として親しまれてきた阿保親王墓です。
阿保親王(792〜842)は、桓武天皇の孫であり、平城天皇の第一皇子で、伊勢物語などで浮名を流した在原業平の父です。阿保親王は、薬子の変に連座して太宰府へ左遷され、10数年後に許されて都にもどり、彼は請うて彼の息子たちに在原の姓を賜ります。
阿保親王は芦屋の打出の浜をこよなく愛し、当所に別荘を建てたと言われていますが、陵墓そのものは、4世紀後半に築造された径30m、高さ3mの周濠のある見事な円墳で、臣籍降下して在原を名乗った彼の墓であるとはとても思えません。
山手幹線道路ができて、陵のそばを車道が通るようになるまでは芦屋市民でも地名は知っていても町中にかくも広大な地所を占める陵(みささぎ)が実在するのを知る人は稀でした。
社務所も縁結びグッズ売り場もなく、しかも宮内庁管理といういかめしい御陵が、恋愛成就を願う人達のひそかなパワースポットとなったのは、塚の近くに業平橋や業平町といった地名が残っているように、「昔男ありけり」で始まる『伊勢物語』の物語によります。
いつしか親王塚は在原業平の所業とも重なり合って、お父さんを越えて業平と結びつき、秘めやかで艶な恋のゆくえを占うパワースポットとして愛されるようになったのです。
芦の屋の灘の塩焼き暇無(いとまな)み黄楊(つげ)の小櫛も挿さず来にけり
晴るる夜の星か河辺の蛍かも我が住む方の海人(あま)のたく火か
『伊勢物語』第87段より
このようにさまざまな怪異現象によってではなく、和歌すなわち言葉の力でパワースポットとなった全国でも稀有の例として、私は特に注目しています。
親王塚
阪急芦屋川駅より東南方向に徒歩20分。
JR芦屋駅より東に徒歩10分。
親王塚のすぐ西の宮川の小流れに沿って、OPENして間もない気がかりなカフェがあり、店内に入ると、昨今のブームで生まれたカフェとは一味違うお洒落なコンセプトによる店づくりが一目瞭然で、しかもアット・ホーム。階上では、アロマ・セラピーも随時実施していただけるそうですが、希望者は念のため電話予約してください。
この店の売りは、ロー(生)スイーツ。生の野菜や果物、ナッツを熱を加えずに調理するので、加熱することによりこわれてしまう酵素をそのまま摂取できるというもの。砂糖、小麦粉、乳製品、バターなども一切使っていないので、アレルギーが気になる人たちにも安心とのこと。
ナチュラルでリーズナブルなメニューの中でも、僕のおすすめは、当店オリジナルのベジキーマ カレー(900円、ドリンク・セット1200円)。
肉を一切使用せず、大豆でできたベジ・ミートを使用し、新鮮なオーガニック野菜をルーも用いず、スパイスだけで仕上げた一品ですが、びっくりするおいしさです(写真)。また季節限定のランチ・メニューもいろいろ取り揃えており、僕はセットで当季2ケ月限定、柑橘系の香りが口中に広がる不思議なアフリカのコーヒーをいただきました。
パワースポット巡りの後は、きよめ塩、あるいは神事のあとの共食行為の直会(なおらい)にかえて、こうしたお洒落なカフェやレストランを訪ねるのも一興です。
ADVANCED STYLE STUDIO CAFÉ アーユス
芦屋市親王塚町9-7 電話0797-23-6789
AM10:00〜PM7:00 木曜定休
今回ご紹介する六甲山系のパワースポットは、2市にまたがっているとは言え、芦屋東部と西宮北部に位置し、距離的にはとても近く車ならあっと言う間に巡ることができます。
電車では半日かけて巡ることになりますが、その分、これらのパワースポットが如何に市民生活に溶け込んでいるかが理解できることでしょう。
この2つのパワースポットは、六甲山系の数あるパワースポットの中でも、とてもお洒落で現代的なオーラを放っており、縁結びの新しいデート・スポットとしてカップルにおすすめのコースです。
そして、この旅にふさわしい近未来型のカフェもぜひご体験くださいませ。
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