誰がどうやって建てたのか、国宝・投入堂に挑む〜三朝温泉の名物は温泉だけにあらず

誰がどうやって建てたのか、国宝・投入堂に挑む〜三朝温泉の名物は温泉だけにあらず

更新日:2014/02/04 11:32

SHIZUKOのプロフィール写真 SHIZUKO 舞台演出者
鳥取県の真ん中あたりに位置する三朝温泉は、世界屈指のラドン放射能泉。ラドンはラジウムが分解されて生じる弱い放射線で、身体に浴びると新陳代謝が活発になり、免疫力や自然治癒力が高まると言われている。ラジウムを発見した女性初のノーベル物理学賞受賞者で化学賞をも受賞した『キュリー夫人』を称え、フランスとの国際交流にも力を入れている温泉です。でも、その魅力は温泉だけにとどまりません。バスで15分。そこには…

全身を駆使し精神を集中して挑む、国宝三徳山投入堂

全身を駆使し精神を集中して挑む、国宝三徳山投入堂

写真:SHIZUKO

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ある日、新聞記事で見た三徳山三佛寺(みとくさんさんぶつじ)・投入堂(なげいれどう)は衝撃的でした。

断崖絶壁に立つ、謎めいた美しいお社。

一体どうなってるんだろう…、どうやって登るんだろう…、どうやって建てたんだろう…、と気になっていた場所。いよいよ、念願かなっての訪問です。

三朝温泉からバスで15分、三徳山投入堂は、平安後期の建築物で、神社本殿形式日本最古のもの。    

登山事務所から、標高差200メートル。距離は往復1500メートルを、手と足を使ってよじ登っていくんです。まさに、よじ登るんです。写真で見てすごいなーと思っても、実際行ってみると、なーんだ…ってことがよくありますが、ここは、全く違ってました。

裸足にわらじで岩場を登る

裸足にわらじで岩場を登る

写真:SHIZUKO

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この山は、滑落事故も起こっている危険な修行の山。入山規則も厳しく、靴裏チェックを受けて、ダメな人は草鞋(500円)に履き替えて登ります。一人での入山も禁止です。入山料は600円。入山届けを済ませ、輪袈裟をかけて、スタートです。

三途の川に見立てられる川にかかる『宿入り橋(しくいりはし)』を渡り、修行の道のスタート。行き道では自分の今までの人生を振り返り、穢れを落とし、戻り道で再び生き返るというという意味を持つ登山です。      

写真でお判りいただけるように、ほぼ垂直の岩場。

前に登っている人がいなかったら、どう登っていいのか、本当に登れるのか、全く判りません。でも、木の根を頼りによじ登ります。登れる場所が狭いので、降りてくる人を待ったり、待ってもらったり、道を譲りながら進みます。

エッチラオッチラ、なんとか進むと文殊堂に到着。

垂直に近い岩場に建つ文殊堂には、クサリを頼りに上がります。このあたりまで来ると草鞋って、すごくいいんだなって実感できます。裸足だから怪我するかと思っていたんだけど、大丈夫でした。むしろ、快適なくらいです。

突然、あの風景が目に飛び込んでくる!

突然、あの風景が目に飛び込んでくる!

写真:SHIZUKO

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苦労して登りきると、爽やかな風。眼下には中国山地の山々。絶景です。水分補給して進みます。

馬の背と呼ばれる滑り易い岩の道を抜け、しばらく行くと、鐘楼堂を経て、観音堂に出ます。  

先へ進むには、観音堂の裏の、細い岩の間を抜けるしかありません。ここが、また、なんとも怖いんです。いえ、危険って意味じゃなくて、なんとも言えない霊気を感じるんですよ。    

でも、頑張って通過。

そして、次の角を曲がると、突然そこに、かの投入堂がドーン!と見えます。もう、そのなんともいえない出会い方。感動です。

自然に涙が流れます。何に対して? 人間の営み? 建物の美しさ? 登山の険しさ? 絶壁の岩の中に建つ荘厳さ? いや、どれも違う。それらの感覚は、一部ではあるけど、全身が震える感動は、何かがスーッと浄化されていくような清清しさは、なんだろう。

しばらくは皆、無言。言葉を失います。ただ佇み、ここに登ってきた意味を考える数分間。その後は自然に、晴れやかな気持ちで周りの人とも会話が始まりました。

下山中は、登ってくる方々との挨拶も楽しく、あんなにおっかなびっくりだった道も、足取り軽く降りていけます。もちろん、細心の注意を払ってです。

一緒に投入堂に連れて行ってくれた草鞋に感謝。こういう機会に恵まれたことに感謝。

登山事務所を後にして、参道にあるお茶屋さんで、疲れを癒す『みたらしだんご』をいただきます。レンコン入りの、地元のお米で作られたお団子、大振りでとっても美味しい。鳥取の名産・梨から作られた蜜のたれは、上品な甘さ。疲れも一気に吹っ飛びました。

三朝温泉の川原の足湯で疲れを癒して

三朝温泉の川原の足湯で疲れを癒して

写真:SHIZUKO

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三朝温泉には、川原に露天風呂があります。

さすがに、ここで露天風呂に入る勇気もないし、周りにもご迷惑なので、みんなで足湯です。かなり熱めのお湯なので、すぐに足が真っ赤に茹で上がります。   

今回、泊ったホテルは、この足湯まではかなりの距離。ほろ酔いで歩くって距離じゃないので、夕食前に、車でメインストリートにやってきたというわけ。

温泉に付き物のスマートボールにもチャレンジ。

まあ、よく玉の入ること! どんどん玉が入るので、途中で飽きてきて、打ち手が交代。とりあえず、もう、入るな! と願いつつ、玉を減らします。贅沢な話です。もちろん、射的にも挑戦です。

三朝温泉には、古くからの温泉場らしい場所があって、温泉情緒を楽しみたい方にはお勧めです。

テーブルで焼く干物で海の幸に感謝

テーブルで焼く干物で海の幸に感謝

写真:SHIZUKO

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さて、遅めの夕食タイム。土曜日なので、全館満室。駐車場も車が溢れてました。

さてさて、どんな夕食かなあ…

山陰らしく、干物がドーン! と。これは、なかなか嬉しいです。テーブルには、かんてき(七輪)が用意されてます。自分で好きな干物をチョイス。魚好きにはたまりません。ミニバーベキューのような夕食に、会話も自然と盛り上がります。    

揚げたての天ぷらに、その場で握ってもらえるお寿司。子どもも大好きなパスタやピザ。デザートもしっかり並んでいます。全部で77品目だそうです。

そこそこしっかり夕食をいただいた後は、お待ちかねの温泉。露天風呂です。大きめの露天風呂はやっぱり気持ちいいですねえ。無色透明、匂いもないけど、肌がピーンとする感じ。風呂上りはマッタリといろんなトークで夜は更けます。

これからの鳥取は、蟹が美味しい季節。世界屈指のラジウム温泉につかって、蟹三昧。身体も心も大満足。そして、投入れ堂で心も身体も清めて、新しいエネルギーをもらう旅。皆さまもいかがですか?

チャレンジしてみて…

実際に投入堂に行ってみると、本当に登れるのかと不安になりますが、登る苦労が、身の垢を落とす修行だと言われれば、ただ無心に足を動かそうという気持ちになれます。もちろん厳しい道ですが、決して登れない道ではありません。危険な場所も、ひとつひとつの距離は短いですから、注意して一歩一歩進めば大丈夫。とても感動的な体験ができますから、ぜひ、一度お参りしてみてください。清々しい気持ちになれること請け合いです。

掲載内容は執筆時点のものです。 2009/09/12−2009/09/13 訪問

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