写真:万葉 りえ
地図を見る室町時代に木曽氏が木曽谷に進出し、領内を整備をするうちに形作られていった木曽路。その後、武田家の支配などを経て、江戸時代に中山道の一区間となっていきました。
木曽では11宿が定められたのですが、その中で一番大きな宿場町だったのが奈良井宿。その賑わいは“奈良井千軒”と言われていたほどです。その宿場町で、ぜひ泊まってほしいのが「御宿 伊勢屋」。ご覧のように、ここは旅人が行き交った江戸の面影が現在も随所に残る御宿です。
写真:万葉 りえ
地図を見る街道を参勤交代の大名や幕府の関係者などが通行していた江戸時代。宿場内には本陣、脇本陣、問屋などの施設が定められていました。ざっくり言えば、本陣は大名や高位の役人などが泊まる高級旅館。そして本陣だけでは足りない場合の宿舎が脇本陣です。
伊勢屋はその時代に脇本陣と問屋を務めていた家。奈良井宿を散策してもらえば、ご覧のように間口が他の家に比べて大きいことがわかるでしょう。
特に外観を見ていただくのにお勧めしたいのが、夕闇につつまれる頃!表の行燈(あんどん)に灯りがはいり、屋内からの明かりが暖簾の文字を浮かび上がらせ・・・さらに風情が増していきます。
写真:万葉 りえ
地図を見るこの建物は江戸時代末期に建てられたもので、外観だけでなく内部も随所に往時の名残があります。今では手に入らないような材を使った太い梁(はり)も、屋内に入ったらぜひ見上げてみてください。
さて、脇本陣というのはわかったけれど、問屋って何?と思いませんでしたか。宿場と宿場の間の荷物運搬の便宜を図るため、江戸時代の幕府は馬と人足(運搬の補助人)を管理する役職を定めていました。その役職をするのが問屋です。奈良井宿では、上問屋と下問屋が半月交代で役職を担っており、伊勢屋は下問屋をしていました。
その牛馬宿だった名残がこちら。昔はこのあたりは土間で、左奥の壁の向こうは馬屋になっていました。今はリニューアルされて、坪庭を眺められる素敵なお風呂等に変わっています。
写真:万葉 りえ
地図を見るそしてこちらが本館二階の客室で、もちろん江戸期からの部屋になります。
二階が少し街道にせり出した出梁(だしばり)づくり。その窓の格子の間から、家並みを眺めてみてください。家と家との境には袖壁が設けられ、庇(ひさし)の上では奈良井宿独特の猿頭(さるがしら)といわれる桟木(さんぎ)が波打っているのが見えるでしょう。各家々の庇を長い年月風雪から守ってきた猿頭。
それ以外にも町屋の意匠がいくつも見えてきて、それは江戸の旅人が見ていた景色と大きく変わっていないはずです。
写真:万葉 りえ
地図を見る旅館で楽しみな夕食は、本館の1階の和室でいただくようになっています。昔の面影が残る和室ですが、イス・テーブル席なので海外からの方もくつろいで召し上がれます。
写真では手前にお品書きが写っていますが、品数が多く、料理が写真に入りきらないほど。宿の手作り味噌が添えられ、春の山菜、秋のキノコ、川魚などこの土地の恵みがテーブルの上にならびます。しっかりおなかをすかせて席についてください。
写真:万葉 りえ
地図を見るその食事をいただく和室の奥にあるのが、こちらの中庭です。本館の部屋の様子をご覧いただきましたが、この庭の奥には増築された総ヒノキ造りの新館の部屋があります。
表の間口も広めでしたが、奥にも深い建物の造りがお分かりいただけるでしょうか。山に近い側になるので、静かさを求める方には新館もお勧めです。
写真:万葉 りえ
地図を見る宿の食事や名物の蕎麦店で木曽漆器を使ってみたら、その軽さと使いやすさに「欲しい」と思った方もいるはずです。
木曽五木(ヒノキやコウヤマキなど)というほど良質の材料に恵まれて、多湿で空気が綺麗だったことから漆器づくりが発展したこの辺り。起源は600年以上前と言われていて、旅の土産品としても人気です。隣の木曽平沢の町は「漆江町」というほど漆工芸に携わる家が多い所ですが、奈良井宿にも漆器を扱う店が何軒もあります。
軽く、かさばらないうえに、価格も嬉しい箸などは、お土産にだんぜんお勧め。調理用品など生活雑貨が充実した店も多く、ちょっといい椀や弁当箱などは自分用に検討してみては。
なお、木曽平沢との間は、11月まで土日祝を中心にクラシックなボンネットバスが無料で往復しています。
写真:万葉 りえ
地図を見るまた、こちらの「百草」と表示された薬も奈良井宿でよく見かけるでしょう。
修行の山である御嶽山を開山した行者が、地元住民に秘伝の製法を伝えたというこの薬。食べ過ぎ、飲み過ぎはもちろん、胃弱、消化不良、食欲不振…と、胃腸の万能薬。200年以上前からこの地の生活に欠かせないものになっています。
昔は家ごとに健胃効果のある生薬を大鍋で煮だして作っていたそうですが、今は製薬会社から製品が出ています。伊勢屋の向かいには日野百草本舗の奈良井宿店も。
ストレスの多い現代。飲みやすい丸剤の小瓶は500円台から購入できます。
写真:万葉 りえ
地図を見るもちろん伊勢屋でも土産品を扱っています。
海外から旅人には、帰国してから部屋着として使える浴衣が人気。また、ご覧のような味噌もこの土地らしさたっぷりです。木曽の地酒に、豆腐や野菜をこの味噌であえた一品を合わせてみるのも乙(おつ)なのでは。宿の入り口近くに置かれているので、夕食後にでもゆっくり見てみてください。
昔の面影が残った場所を中心に伊勢屋をご案内しましたが、風呂、トイレ、洗面所などは、もちろん現代の生活様式です。さらに2023年4月にもリニューアルされて快適に滞在できる御宿となっています。
室町時代の後期には木曽家の当主が。そして戦国期には武田家が、宿場町として指定したという交通の要衝・奈良井宿。
古い建物がいつの間にか姿を消していった日本の中で、重要伝統的建造物群保存地区になってから30年。町なかでは今もこんこんと湧き出る水場が守られ、この懐かしい風景が先々まで伝わるようにと努力が続けられています。そんな奈良井宿へ、伊勢屋へ。懐かしい空気を胸いっぱいに吸い込みに訪れてみませんか。
2023年6月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
この記事の関連MEMO
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索
(2025/2/9更新)
- 広告 -