スリルとサプライズの連続 奈良・笠置山の行場めぐり

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スリルとサプライズの連続 奈良・笠置山の行場めぐり

スリルとサプライズの連続 奈良・笠置山の行場めぐり

更新日:2014/06/30 17:18

ナツキのプロフィール写真 ナツキ きのこの文化研究家、博物学者

笠置は、古来の磐座信仰と仏教思想が一体となった標高わずか288mの笠置山を中心とし、月が瀬街道と京よりの伊賀街道が交わる木津川沿岸の古代交通の要衝地。
平安時代の末法思想に伴う弥勒信仰の隆盛によって鎌倉時代まで、全盛を極めた天皇・公家の「笠置詣で」の栄華のあとを訪ねてみましょう。

笠置山系の底抜けに明るい独立峰・笠置山

笠置山系の底抜けに明るい独立峰・笠置山

写真:ナツキ

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笠置山は、奈良東大寺の奥山から柳生街道を北へ抜け木津川に突き当たったところにある独立峰です。
標高は288mときわめて低いのですが、取りつきより徒歩では急坂30分の道のりで、登りきると軽い達成感が得られます。
この山の重要性にいち早く気づき、足繁く通い平城京の建築資材の独占権掌握を図った人物が行基とともに大仏建立に心血をそそいだ良弁です。彼に続く南都仏教の山林修行者たちがこの山のパワースポットを整備しました。
不幸にも、後醍醐天皇がここを要塞として行在所を置いたことにより、鎌倉幕府との攻防戦の舞台となり全山焼失し衰退してしまいます。
しかし、堅牢でからりとした花崗岩からなるこの山は、登山者にとてもさわやかな印象を与えるため、山伏はもちろん遊山客にも愛され、鎌倉時代に戦乱で寺が衰微したのちも「笠置詣で」は江戸時代まで連綿と続けられてきました。

交通の不便さから今では車利用客以外訪う人も稀となりましたが、笠置寺本坊の住職はじめ、この山の歴史を伝え、素晴らしい景観を保存しようという地元の人達の努力でいつ訪れても安全でさわやかな山中でのひとときを過ごすことが出来ます。

写真はJR笠置駅より望む笠置山

鹿鷺山・笠置寺
拝観入山料 300円 中学生まで100円

京都府相楽郡笠置町笠置山29
電話0743-95-2848
拝観時間 7時〜17時(冬期は16時)

JR関西本線「笠置駅」より徒歩40分
但し、JR木津駅、加茂駅から接続するこちら方面の列車は単線で1時間に1本しかなく、時刻表をよく調べて行動してください。

悠久の歴史を孕みつつ炎と化した笠置寺跡

悠久の歴史を孕みつつ炎と化した笠置寺跡

写真:ナツキ

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『枕草子』に「寺は壺坂、笠置」とある笠置寺は、歴史的には奈良時代より南都仏教の重要な修験の地であると同時に、鎌倉幕府打倒を企てた後醍醐天皇の行在所のあったところ。
縁起では、天智天皇の皇子で壬申の乱で敗れた大友皇子がこの地で狩りをしているとき、奈落を成す絶壁に阻まれ進退きわまり、山の神に祈り一難を逃れたお礼に、目印に置いて帰った笠(地名の由来)のある巨岩に弥勒菩薩を彫ったという伝承があります。
その15mもの高さに刻まれた弥勒磨崖仏は、元弘の変(1331)に続く数度の火災で笠置寺と一緒に焼け落ち、光背のみを残して今に伝えられています。
崖を望む正月堂には、仁和寺絵巻から写したと思われるその弥勒像のホログラム映像が飾られ、往時を偲ぶことができます。

鮮明に残る巨大な線刻 虚空蔵菩薩 磨崖仏

鮮明に残る巨大な線刻 虚空蔵菩薩 磨崖仏

写真:ナツキ

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正月堂の北には、東大寺初代別当の良弁が籠って千手の秘法を修め、一番弟子の実忠が、ここから弥勒の兜率天に至り、お水取りの行法を持ち帰ったとされる千手窟があり、笠置山で最も神聖な場所とされてきました。今は見る影もない状態ですが、その脇の花崗岩の岩壁には、宝相華(ほうそうげ)の上に置かれた蓮台に座し、右手に施無畏印(せむいいん)、左手に与願印(よがんいん)を結んだ、高さ12m、幅7mの見事な線刻の虚空蔵菩薩像が刻まれていて圧倒されます。
寺伝では虚空蔵菩薩求聞持法で頓悟した弘法大師が一夜にして彫り上げたとされますが、中国山西省雲崗の磨崖仏彫刻様式に共通することから奈良時代の渡来人が刻んだという説が有力です。

わくわくドキドキ行場めぐり

わくわくドキドキ行場めぐり

写真:ナツキ

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そこからは胎内くぐりで禊(みそぎ)をすませ、不思議な音がする太鼓石、やがて視界が開けると江戸時代にはお月見の名所とされた平等石、元弘の変の防御の名残りの片手で軽々と揺り動かすことのできる巨岩・ゆるぎ石、と息つく暇もないほど愉快な岩づくしの行場巡りが続きます。
平等石の下は蟻の戸渡りと呼ばれ狭くなっており、奥の不動明王像を拝んだ後は、東ののぞき、二の丸跡、山伏が法螺の練習をしたという貝吹石を経て行在所跡を過ぎれば、西ののぞき、大師堂(旧正月堂)、そして本坊へと至ります。その間、わくわくすること40分。ここが多くの人たちに愛されてきた理由がわかります。
こころよい汗をかいた後は、ふもとの笠置駅近くの地下1200mから湧き出るわかさぎ温泉・笠置いこいの館のナトリウム泉で疲れを癒して帰りましょう。

天然わかさぎ温泉
笠置いこいの館

〒619-1303京都府相楽郡笠置町隅田24
電話0743-95-2892(代)

午前10時〜午後9時
定休日 第1・3水曜日。大晦日・元日
入浴料 大人800円 小学生400円 70歳以上650円
全天候型ゲートボール場完備・喫茶・食堂・売店・マッサージルーム完備

おわりに

笠置山の中腹から麓にかけては3軒の料理旅館があり、春の山菜、初夏の鮎、秋のきのこ、冬は名物のきじ料理はじめボタン鍋、かも鍋、そして通年楽しめる鯉料理と盛りだくさん。
この料理旅館と、本文中に述べた天然わかさぎ温泉笠置いこいの館の入湯がセットされたお得な山あい宿泊プランもあります。
また近くには全国でもめずらしいこうもり博物館もあり、銀の帯、緑のしぶき、史の道、鹿ケ淵と銘打たれた笠置駅起点の片道1〜2時間のんびり歩くハイキングコースも整備されており、楽しみ方もいろいろ。時間のゆるす方は是非1泊してリフレッシュしてください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/08/11 訪問

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