巨樹に圧倒!“汗かき観音”を本尊とする滋賀県「岩間寺」

巨樹に圧倒!“汗かき観音”を本尊とする滋賀県「岩間寺」

更新日:2023/07/02 17:39

乾口 達司のプロフィール写真 乾口 達司 著述業/日本近代文学会・昭和文学会・日本文学協会会員
滋賀県大津市の「岩間寺(正法寺)」は、西国三十三所霊場第12番札所として、日々、多くの参詣者でにぎわう古刹。岩間山の山頂付近に位置する岩間寺は「汗かき観音」の名で親しまれている御本尊がいらっしゃる上、境内には樹齢数百年を超える巨樹も複数見られます。今回は見学スポット満載の「岩間寺」をご紹介しましょう。

「汗かき観音」をご本尊とする岩間寺

「汗かき観音」をご本尊とする岩間寺

写真:乾口 達司

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岩間寺は滋賀県大津市にある古刹。標高443メートルの山頂付近に位置しています。正式な寺名は「岩間山正法寺」ですが、一般的には「岩間寺」の名で親しまれています。

寺伝によると、開祖は奈良時代の高僧・泰澄。722年(養老6)、元正天皇の病を法力によって治癒した功績により、元正天皇の勅願所として開かれました。泰澄は岩間山の山中にあった桂の大木から等身大の千手観音像を刻んだ上、胎内に元正天皇の念持仏である金銅千手観音立像を納め、ご本尊としました。

泰澄自刻の千手観音像は失われていますが、その胎内におさめられていた金銅千手観音立像は、現在、秘仏として安置されています。その像高は4寸8分(約15cm)。夜ごと、厨子を抜け出て人々を救済し、汗みずくになって帰還することから「汗かき観音」の名で親しまれています。

本堂以外の堂宇

本堂以外の堂宇

写真:乾口 達司

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写真は本堂の東側に位置する不動堂。その名のとおり、不動明王立像(国重要文化財)や薬師如来坐像・阿弥陀如来坐像などが安置されています。

本堂以外の堂宇

写真:乾口 達司

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写真の大師堂には、岩間寺の開祖・泰澄と宗祖・空海がまつられています。

本堂以外の堂宇

写真:乾口 達司

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岩間寺は西国三十三所第12番札所となっているほか、ぼけ封じ近畿十楽観音霊場第4
番札所ともなっています。

境内にある巨大な「長寿桂」

境内にある巨大な「長寿桂」

写真:乾口 達司

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岩間寺のもう一つの魅力は、境内に樹齢数百年となる巨樹が複数存在すること。

写真はその代表格である桂の大木。境内の裏手の斜面に生えており、樹高は35.5メートル、幹まわり11.6メートル。樹齢は500年以上と考えられており、その樹齢から、一般的に「長寿桂」と呼ばれています。

先にご説明したように、岩間寺では開祖・泰澄が桂の大木から等身大の千手観音像を刻み、本堂に安置したという寺伝から、「長寿桂」自体が信仰の対象となっています。「長寿桂」の手前にお堂が建てられているのは、その証です。

境内にある巨大な「長寿桂」

写真:乾口 達司

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「長寿桂」の根本をご覧になると、一本の茎の根元から複数の茎が分かれて立ち上がっている様子がうかがえます。

境内にある巨大な「長寿桂」

写真:乾口 達司

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樹齢が500年を超える古木とは思えないほどの立派な枝ぶりです。青葉も生き生きとしており、「長寿桂」の名にふさわしい存在感を発揮しています。

境内に点在するその他の巨木

境内に点在するその他の巨木

写真:乾口 達司

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画面の中央、「稲妻龍王社」の背後に屹立するのは銀杏の大木。樹齢350年と伝わっており、「火伏の銀杏」と呼ばれています。

開祖・泰澄が伽藍を造営する折、法力によって雷を弟子とし、善男善女に雷のわざわいをもたらさないように約束させたという寺伝により、岩間寺は「雷除けの観音」としても篤く信仰されています。「火伏の銀杏」の名は、その寺伝に由来します。

境内に点在するその他の巨木

写真:乾口 達司

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写真の「夫婦桂」は、泰澄が本尊を刻むために切り出した桂の切り株から生えてきたものの子孫。岩間寺では、霊木として信仰されています。

境内に点在するその他の巨木

写真:乾口 達司

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切り株しか残されていないこちらは「天狗杉」「黒龍王の杉」と呼ばれていた杉。黒龍王が棲んでいたと伝わっている巨木で、かつては三重県の鈴鹿峠からも遥拝することができるほどの巨木であったようです。

由緒ある水源地

由緒ある水源地

写真:乾口 達司

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たとえ、巨樹が自生するほどのめぐまれた自然環境であるからといって、水がなければ、山岳寺院で人は暮らしてはいけません。したがって、各地の山岳寺院には必ずといっていいほど、境内に水が存在します。

岩間寺の場合も同様。境内の下手には、「雷神爪掘湧水」と呼ばれる水源地が存在します。「雷神爪掘湧水」は安泰の弟子となった雷がみずからの爪で井戸を掘ったと伝わっているところ。数匹の鯉が泳いでいることからも、「雷神爪掘湧水」がいかに清らかな水源地であるか、おわかりいただけるでしょう。

由緒ある水源地

写真:乾口 達司

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本当の脇にあるこちらの池は「芭蕉の池」と呼ばれており、岩間山に参籠した松尾芭蕉が「古池や蛙とびこむ水の音」と呼んだ池とされています。

由緒ある水源地

写真:乾口 達司

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境内からは石山寺や立木観音へといたる巡礼道がのびています。岩間寺の拝観後はそういったお寺まで足をのばすのも一計でしょう。

岩間寺がいかに多面的な魅力を有した古刹であるか、おわかりいただけたでしょうか。岩間寺を訪れ、「汗かき観音」の信仰の世界に触れたり、巨樹に圧倒されたりして、それぞれの魅力をお楽しみください。

岩間寺(正法寺)の基本情報

住所:滋賀県大津市石山内畑町82
電話番号:077-534-2412
入山料:500円
アクセス:京阪バス中千町より徒歩約50分(日によって岩間寺までの直通バスもあり)

2023年7月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2022/06/19 訪問

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