写真:乾口 達司
地図を見る「造山古墳(つくりやまこふん)」は、岡山県岡山市にある前方後円墳。墳丘の長さは350メートルにおよび、岡山県下最大。大阪府の大山古墳(大仙陵古墳)、誉田御廟山古墳、上石津ミサンザイ古墳に次いで、全国第4位の規模を誇ります。
築造年代は古墳時代中期の5世紀前半頃と推定されており、古墳の規模から推定して、被葬者は当地に勢力を有していた古代吉備王国の盟主であると考えられています。
駐車場の奥に横たわっているように見えるのが、造山古墳。あまりに大きく、その全体像を把握するには、上空から見下ろすしかありません。
写真:乾口 達司
地図を見る写真は前方部側に設置された石段。そうなんです、造山古墳は墳丘へ立ち入ることができるのです。
先にご紹介した大阪府の大山古墳以下の3基の巨大古墳は宮内庁が「天皇陵」として管理し、一般人の立ち入りを厳しく制限しているのに対して、造山古墳は宮内庁の管理下には置かれていません。したがって、造山古墳は、墳丘にのぼることのできる巨大古墳としては、全国最大の古墳でもあるのです。
造山古墳を訪れたら、ぜひ、墳丘上まで足をお運びください。
写真:乾口 達司
地図を見る前方部から石段を登っていくと、「荒神社(こうじんじゃ)」が現れます。現在、神社の施設が点在している付近が、前方部の中心部分であったと考えられています。
写真:乾口 達司
地図を見る神社の一角には、大きな加工石が置かれています。これは被葬者を安置していた刳抜式の長持型石棺の棺身部分です。
写真の長持型石棺が造山古墳から出土したものであるかどうかは確定していませんが、熊本県宇土市周辺で産出する特定の石材を加工したものであることが判明しているため、当時の古代吉備王国と九州とが強い結びつきを有していたことはうかがえます。
写真:乾口 達司
地図を見る写真は後円部から前方部を見下ろした一枚。どうですか、この長大さ。その規模に圧倒されること、間違いありません!
写真:乾口 達司
地図を見る後円部は被葬者が眠る埋葬施設としての役割をになっていますが、造山古墳では近年まで発掘調査がおこなわれておらず、埋葬施設の存在は明らかになっていませんでした。
ところが、2022年におこなわれた調査において、埋葬施設にともなうと見られる複数の板状の石板が発見されました。さらに、2023年には素粒子「ミューオン」を活用した地下レーダー探査により、後円部の地下に「空洞」のようなものが存在することも判明。そのため、これまで確認されていなかった埋葬施設が現存する可能性が高まっています。
埋葬施設は果たして現存するのか?被葬者や副葬品は残されているのか?興味は尽きないですね。
写真:乾口 達司
地図を見る後円部を見てまわると、各所に土の高まりを確認することができます。これは中世に築かれた土塁の痕跡。羽柴秀吉による中国攻めに際して、敵対する毛利勢が造山古墳の後円部に陣を構え、羽柴勢と対峙したことが知られているため、土塁はこのときに築かれたものであると考えられています。
写真:乾口 達司
地図を見る後円部の高さは30メートルほどあるため、眺望は抜群。吉備の平野部を一望することができます。
写真:乾口 達司
地図を見る大王クラスの古墳には、周囲に水をたたえた周濠がそなえられていますが、造山古墳にはこれまで周濠が存在しないと考えられてきました。ところが、近年の調査により、造山古墳にも幅20メートルほどの周濠がめぐらされていたことが判明しています。
写真は後円部東側の田畑を撮影したものですが、墳丘に沿うようにして畦道が歪曲しているのが、おわかりいただけるでしょう。これは周濠に築かれていた堤の痕跡と考えられています。
写真:乾口 達司
地図を見る造山古墳は「陪塚(ばいちょう)」と呼ばれる小さな古墳を6基従えています。陪塚は主墳の周辺に築かれた小型の古墳で、主墳に埋葬された被葬者の関係者や副葬品を埋葬した塚のこと。
写真は約20メートル四方から成る第2号墳です。ほかにも、古代の文様である「直弧文(ちょっこもん)」を刻んだ「石障(せきしょう/石室を構成する板状の石材)」を有する「千足古墳」なども存在します。
あわせて見てまわりましょう。
写真:乾口 達司
地図を見る造山古墳の東側には、造山古墳および吉備の古墳群について解説した「造山古墳ビジターセンター」も設置されています。造山古墳ビジターセンターで事前に造山古墳についての知識を仕入れてから訪れるのも一計ですよ。
<造山古墳ビジターセンターの基本情報>
住所:岡山県岡山市北区新庄下789
電話番号:086-803-1332(岡山市観光振興課)
営業時間:10:00〜15:00
定休日:月曜日および年末年始
写真:乾口 達司
地図を見る造山古墳の周辺では、歩道にご覧のようなペイントがほどこされています。造山古墳やその陪塚をめぐるには、有難い配慮ですね。
造山古墳がいかに魅力的な古墳であるか、おわかりいただけたでしょうか。全国第4位の規模を誇る造山古墳を実際に散策し、古代吉備王国の勢力の大きさを実感してください。
住所:岡山県岡山市北区新庄下
アクセス:造山古墳ビジターセンターよりすぐ
2023年8月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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この記事を書いたナビゲーター
乾口 達司
これまでは日本文学や歴史学の世界で培った見識にもとづいて数多くの評論や書評を執筆してまいりました。奈良生まれ、奈良育ちの生粋の奈良っ子。奈良といえば日本を代表する観光地の一つですが、地元民の立場からい…
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