写真:乾口 達司
地図を見る戦前からミステリーの世界の第一線で活躍してきた横溝正史が岡山県に疎開したのは、第二次世界大戦末期の1945年。義理の姉の勧めにより、夫人と子どもたちをともなって現在の岡山県倉敷市真備町の地にやって来たのでした。以後、1948年の夏に東京に戻るまで、3年あまり、当地に滞在。その間、『本陣殺人事件』や『獄門島』など、横溝正史の代表作に挙げられる傑作ミステリーが執筆・発表されています。
横溝正史の暮らした疎開宅は、その生誕100年に当たる2002年の秋より、一般に公開されています。
写真:乾口 達司
地図を見る横溝一家が暮らしていた母屋は、こちら。この家で岡山県を舞台にした『本陣殺人事件』や『獄門島』が執筆され、『八つ墓村』などの構想が練られたことに感動をおぼえるファンも多いのではないでしょうか。
写真:乾口 達司
地図を見る入口には「横溝正史」以外にも「金田一耕助」と刻まれた門札もかかげられています。ファンには嬉しい配慮ですね。
写真:乾口 達司
地図を見る横溝正史が書斎として使っていたのは、こちらの部屋。床の間には、横溝正史のほか、疎開中の横溝一家を物心両面から支え、ときに岡山県に残る土俗的な因習や伝承を語り、作品の構想に多大な影響を与えた加藤一の写真も置かれています。
写真:乾口 達司
地図を見る注目したいのは、軒下に水平にわたされた鴨居。鴨居をよく見ると、太い柱の下に少し隙間があるのが、ご覧いただけるでしょう。
凶器の刀が水車とそこに結び付けられた糸の運動によって軒下の欄間をくぐり抜け、外部へと運ばれる『本陣殺人事件』の密室トリックが、もしかしたら、この隙間にヒントを得たものではなかったかという思いを強くします。
写真:乾口 達司
地図を見る当時から残る土間には、現在、横溝正史関連の資料や写真などが展示されています。
写真:乾口 達司
地図を見る奥座敷では、金田一耕助をモデルにしたシルエットが障子に映し出されています。
写真:乾口 達司
地図を見る観光地によく見られる顔出しパネルも、ご覧のとおり。横溝正史のにこやかな笑顔も印象的です。
写真:乾口 達司
地図を見る疎開宅の門前に広がる畑も「金田一畑」と名付けられています。付近一帯までふくめて、金田一耕助尽くしですね。
<横溝正史疎開宅の基本情報>
住所:倉敷市真備町岡田1546
電話番号:086-698-8558
入館料:無料
開館時間:午前10時〜午後4時
開館日:火・水・土・日曜日(ただし年末年始は休館)
アクセス:JR清音駅より徒歩約40分
写真:乾口 達司
地図を見る疎開宅の前の道を下ると、ご覧のような辻に出くわします。辻にまつられている祠の名称は「濃茶の祠(こいちゃのほこら)」。横溝正史のファンならピンとくるでしょうが、そう、『八つ墓村』のなかで「祟りじゃあ、八つ墓明神の祟りじゃあ」と連呼し、村中を不安に陥れた「濃茶の尼」のネーミングの由来となった祠です。
もともとは、江戸時代、藩の家老の奥方が旅路で病に苦しんでいたとき、茶店の老女の親切で神社に祈願し、平癒したことにちなみます。帰国後、奥方は祠を建立して平癒のお礼としたようですが、それを「濃茶の尼」のような存在に大胆に変えてしまうところは、作家ならではの構想力ですね。
<濃茶の祠の基本情報>
住所:倉敷市真備町岡田953
アクセス:JR清音駅より徒歩約40分
写真:乾口 達司
地図を見る疎開宅の西方にある大きな池は「岡田大池」。『空蝉処女』には、岡田大池とそこに鎮座する大池の弁天様が登場します。
写真:乾口 達司
地図を見る岡田大池で見逃せないのが、こちらの像。『悪魔の手毬唄』に登場する老女おりんを模した像です。土手沿いにさり気なく安置されているため、つい見落としてしまいがち。注意しましょう。
<岡田大池とおりん像の基本情報>
住所:倉敷市真備町岡田大池
アクセス:JR清音駅より徒歩約45分
写真:乾口 達司
地図を見る岡田大池に隣接するこちらの建物は「倉敷市真備ふるさと歴史館」。江戸時代、当地をおさめていた岡田藩に関する史料のほか、横溝正史ゆかりの品も多数収蔵・展示されています。
写真:乾口 達司
地図を見る写真は館内を撮影したものですが、画面の右奥に見られるのは、東京都世田谷区成城にあった横溝正史の自宅書斎の一部を再現したもの。執筆の際、実際に使われていた文机などが展示されています。
写真:乾口 達司
地図を見る館外には、ご覧のような金田一耕助の像もあります。
<倉敷市真備ふるさと歴史館の基本情報>
住所:倉敷市真備町岡田:610
電話番号:086-698-8433
入館料:無料
開館日時:火・水・土・日曜日
開館時間:午前10時〜午後4時
休館日:月・木・金曜日および年末年始
アクセス:JR清音駅より徒歩約45分
岡山県真備町の横溝正史疎開宅とその周辺のスポット、いかがでしたか?ほかにも、付近には『獄門島』に登場する「千光寺」の名前の由来となった千光寺などもあり、見どころ満載。
また、毎年秋には金田一耕助の格好に仮装したファンの集い「1000人の金田一耕助」などももよおされており、2022年には角川映画の横溝正史シリーズで金田一耕助役を演じた石坂浩二さんも登場したほど。金田一耕助になった気分で横溝正史疎開宅やその周辺を散策してみてはいかがでしょうか。
※2023年のコスプレイベント「1000人の金田一耕助」は11月25日(土)にもよおされます
2023年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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この記事を書いたナビゲーター
乾口 達司
これまでは日本文学や歴史学の世界で培った見識にもとづいて数多くの評論や書評を執筆してまいりました。奈良生まれ、奈良育ちの生粋の奈良っ子。奈良といえば日本を代表する観光地の一つですが、地元民の立場からい…
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