写真:乾口 達司
地図を見る「老杉神社(おいすぎじんじゃ)」は滋賀県草津市下笠町に鎮座する神社。社伝によると、704年(慶雲1)、スサノオノミコトが出雲国から諸国をめぐり、同地の大杉に降臨したことにちなみます。
写真:乾口 達司
地図を見る老杉神社の名はそういった降臨伝説によっていますが、以後、同地きっての古社として地元民の崇敬が篤く、中世には領主であった下笠氏に庇護され、1487年(長享1)には、室町幕府第9代将軍・足利義尚も参拝しています。
老杉神社がいかに神格の高い神社であるか、おわかりいただけるのではないでしょうか。
写真:乾口 達司
地図を見る写真の奥、透かし塀の向こうに屋根だけ見えているのが、本殿。1452年(宝徳4)に建立された室町時代中期の建造物で、現在、国の重要文化財となっています。
写真:乾口 達司
地図を見る本殿の構造は三間社流造の檜皮葺。母屋の正面欄間には桐や椿、魚など多種多様な極彩色の彫刻が見られます。その華麗な造型は県内屈指のものであり、豪壮華麗な安土桃山文化に見られる造型の先駆的な作例とされています。
写真:乾口 達司
地図を見る正面・軒下に見られる「蟇股(かえるまた/カエルの足のような形をした建築部材)」には、三つに重ねられた玉や二連の椿の花をかたどった意匠がほどこされており、こちらも華やかさを演出しています。
写真:乾口 達司
地図を見る本殿の前に位置する拝殿は入母屋造・桟皮葺の建造物。四方にはガラス戸が嵌め込まれています。珍しいガラス戸の嵌め込まれた拝殿にも、ぜひ注目してみてください。
写真:乾口 達司
地図を見るこちらは境内に居並ぶ摂社。注目していただきたいのが、それぞれの社の名を記した掲示板に「宮座」と記されていること。宮座とは、中世以来、村の住人を構成員として祭祀をになってきた組織のことで、老杉神社には八村からなる宮座が存在しています。
興味深いのは、そんな宮座がいまなお実際に機能していること。老杉神社では、毎年2月15日、宮座の運営によって「オコナイ(エトエト祭り)」という祭礼がおこなわれており、中世以来の宮座のありようをいまに伝えています。毎年5月3日におこなわれる「サンヤレ踊り」とともに、老杉神社の代名詞というべき貴重な祭礼です。
写真:乾口 達司
地図を見る社務所には狛犬一対も飾られています。
写真:乾口 達司
地図を見る境内をめぐると、写真のように動物をかたどった石の造型物も見掛けます。
たとえば、バナナを手にしたこちらの造型は、もちろん、サル。しかし、それは単なるサルではありません。「御神猿」と呼ばれている神さまの一種で、子授けや安産などの神さまとされています。
写真:乾口 達司
地図を見るこちらは「戌神像」。子孫繁栄、家内安全、商売繁盛の神さまとされています。
ほかにも、ウサギやウシなど、さまざまな動物の造型物が見られるため、境内をめぐってみましょう。
写真:乾口 達司
地図を見る本殿の前にあるのは「おもかる石」と呼ばれる願掛け石。おもかる石の前に立ち、お願い事をしてから本殿にお参りし、その後、石を持ちあげ、思ったよりも軽く感じられたら願いが叶うとされています。
お願い事のある方は、おもかる石を持ちあげてみてはいかがでしょうか。
老杉神社がいかに貴重な神社であるか、おわかりいただけたでしょうか。どこにでも見られる集落に国の重要文化財となっている本殿が鎮座していることからも、滋賀県における古建築の層の厚さを実感することができるはず。老杉神社に参拝し、その豊かな歴史性と民俗性を体感してみてください。
住所:滋賀県草津市下笠町1194
アクセス:近江鉄道バス「下出」下車して徒歩約5分
2024年1月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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この記事を書いたナビゲーター
乾口 達司
これまでは日本文学や歴史学の世界で培った見識にもとづいて数多くの評論や書評を執筆してまいりました。奈良生まれ、奈良育ちの生粋の奈良っ子。奈良といえば日本を代表する観光地の一つですが、地元民の立場からい…
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