写真:鷹野 圭
地図を見る荒川に沿うようにして左右に長く伸びた形をした埼玉県戸田市。その西の端に彩湖・道満グリーンパークは広がっています。池と呼ぶにはあまりに大きなそのスケールは、湖畔に広がる芝生広場やヨシ原の広さも相まって、訪れる人に解放感をもたらしてくれることでしょう。
高木があまりなく視界が開けており、風通しもいいので、ランニングやサイクリングにピッタリ。また湖ではヨットなどのマリンスポーツを楽しんでいる人も見かけます。ジャングルジムなどの遊具やピクニックに適した広場、野球場などもあり、スポーツやレクリエーションの場としてもピッタリな場所です。
それと同時に見逃せないのが、湖周辺の緑空間。かつての荒川流域の水辺景観を極力自然に近いまま保全しています。豊かな自然は数多くの生きものを育み、特に夏場には数多くの鳥や昆虫が姿を見せてくれます。
写真:鷹野 圭
地図を見る写真の花はイヌヌマトラノオ。サクラソウの仲間で、その名の通りトラの尻尾のような細長い穂状の花が咲きます。これは一つの花というわけではなく、近くで見ると、小さくてかわいらしい花がいくつも集まって穂の形を作っていることがわかります。この花は同じサクラソウ科のサワトラノオとオカトラノオの交雑種という説もありますが、自生している姿はめったに見かけられません。彩湖・道満グリーンパークでは、自然学習センターの下にある観察池の周辺でその姿を見ることができます。この池の周囲にはハンゲショウの群生地などもありますので、ぜひ一度チェックしてみてください。
その他、パーク内では絶滅の心配されるサクラソウの自生地(開花期は4〜5月)や、人気のチョウ・ミドリシジミの食草として知られるハンノキの林などが保全されています。在りし日の荒川の原風景を守り、また蘇らせるために、様々な取り組みがなされているのです。
公園の歴史や自然、その保全活動の内容などについて知りたい時には、自然学習センターを訪ねてみましょう。彩湖に暮らす生きものの水槽やパネル展示など、興味深いコンテンツがたくさんあります。望遠鏡もありますので、彩湖の大パノラマを楽しむことも可能です。
写真:鷹野 圭
地図を見る淡水の水辺といえばトンボがつきもの。実際、市街地の都市公園でも水場があればちらほらと姿を見かけますよね。しかし、自然度の高い彩湖・道満グリーンパークでは、トンボの数も種類もそれこそ桁外れ! 王道のアキアカネやナツアカネはもちろん、ほっそりとしたイトトンボや力強く飛び回るギンヤンマ、水面から突き出た木の枝の先にとまって縄張りを主張するウチワヤンマなど、多種多様なトンボが暮らしています。中でも一番目を惹くのは、ひらひらとまさしく蝶のように水辺を舞うチョウトンボ(写真参照)でしょう。今や東京都内ではほとんど見られなくなってしまいましたが、この公園では梅雨明けの時期から発生し、水生植物の繁茂する池の畔などでその美しい姿を見せてくれます。
トンボ以外では、国の準絶滅危惧種に指定されるギンイチモンジセセリや、かの有名なオオムラサキの近縁種で翅の表面が仄かに紫色に光るコムラサキなど、首都圏ではなかなか珍しい昆虫が見られます。コムラサキはよく炎天下の日中に樹液をなめていますので、樹液の出る木を見かけたらよ〜く全体をチェックしてみましょう。
写真:鷹野 圭
地図を見るゲッチョゲッチョゲッチョ……と、一度聞いたら忘れられない個性的な鳴き声。この公園でも園内のヨシ原からいくつも聞こえてくることでしょう。声の主はオオヨシキリ(写真)。日本には夏鳥として、繁殖のためにはるばる海外からやってきます。
オオヨシキリはスズメよりも身体の大きい鳥ですが、器用にヨシの先端に掴まるなど運動神経はバツグン。掴まりながら、口内の赤色がはっきりと見えるほど大きく口を開いて、よく響く声で鳴きます。きっとメスを呼んでいるのでしょう。その仕草は独特で可愛らしく、夏のヨシ原の風物詩です。
とは言え、繁殖のためには健全な環境の保たれた広いヨシ原が必要。近年はそうしたスポットも減少しつつあるようです。そうした中で、ここ彩湖・道満グリーンパークは随所に豊かなヨシ原を残す貴重な公園であり、毎年のようにオオヨシキリが繁殖に訪れます。鳴き声が聞こえたら足を止めて、ヨシのてっぺん付近を探してみましょう。ユニークな姿を楽しめるはずです。
写真:鷹野 圭
地図を見る彩湖の東側には広々とした芝生広場が広がっており、休日には家族連れや学生さんなどがバーベキューやピクニックを楽しんでいます。時には市のイベント会場としても利用されるほど。豊かな自然に囲まれた公園ですが、ちゃんと人が存分に遊べるように整備されているのも特徴です。緑に包まれながら、解放的な心地よい一時をお楽しみください。
遊びやスポーツの空間に、自然体験の空間……2つの魅力が広大な園内にぎゅっと詰まった彩湖・道満グリーンパーク。楽しみ方のバリエーションも多彩です。とりわけ自転車のある方にはおススメ。湖の一周すると大変気持ちいいですよ。もちろん徒歩で巡るのも乙な楽しみ方。道端に見える樹林や植込み、ヨシ原などに一つひとつ目を向けると、様々な生きものが姿を見せてくれるはずです。
荒川に隣接し、川を渡った先は東京都という都心にも近い立地ですが、それを忘れてしまうほどに気持ちの良い空間です。ぜひ、1日かけて存分にお楽しみいただければと思います。
この記事の関連MEMO
この記事を書いたナビゲーター
鷹野 圭
現在、出版社で編集・ライターの仕事をしています。休日の「自然散策」が何よりの楽しみ。首都圏各地の公園や緑地、自然スポットなどに足を運び(主に土日祝日)、景観美やそのスポットならではの見どころ、あるいは…
トラベルjpで250社の旅行をまとめて比較!
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索