フィレンツェ「サン・マルコ美術館」に溢れるアンジェリコ作品

フィレンツェ「サン・マルコ美術館」に溢れるアンジェリコ作品

更新日:2025/11/10 15:02

Hiroko Ojiのプロフィール写真 Hiroko Oji ヨーロッパ一人旅愛好家
かつてドメニコ会修道院であり、その一部を美術館として公開し、修道院に所縁の深い美術品を展示しているのが「サン・マルコ美術館」。

アカデミア美術館から北へ数分のロケーション。サン・マルコ広場に面した建物はミケロッツォの傑作であり、フィレンツェの最も重要な建築物の一つです。館内には、修道士として当修道院居住の画家フラ・アンジェリコが残した板絵やフレスコ画が保管されており、僧房や瞑想室も見られます。

サン・マルコ修道院とスカルツォの回廊

サン・マルコ修道院とスカルツォの回廊

写真:Hiroko Oji

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アカデミア美術館から北へ歩くこと数分でサン・マルコ広場に出ます。その正面にあるのがサン・マルコ教会とサン・マルコ美術館。双方合わせてサン・マルコ修道院を構成しています。

修道院はもともとベネディクト派シルヴェストリーノだったのですが、15世紀前半にドメニコ会の手に渡り、建築家ミケロッツォの設計で建て直されたのが現在の建物。この時に、内部に装飾画を施したのが、ベアート・アンジェリコ(※)と、その弟子ベノッツォ・ゴッツォリです。

※日本ではフラ・アンジェリコとしても知られています。1982年に列福されたので修行僧を意味する「フラ」から、正式に福者(模範的信仰生活を送った故人。聖人の前段階)の「ベアート」と呼ばれるようになりました。

サン・マルコ修道院とスカルツォの回廊

写真:Hiroko Oji

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サン・マルコ教会は14世紀創建、15世紀初頭にはドメニコ派のフィレンツェにおける拠点となり、コジモ・デ・メディチの依頼でミケロッツォが聖堂と付属修道院の工事に着手。16世紀〜17世紀にかけてさらに改修され、バロック色の濃い建物となりました。

コリント式柱頭装飾が施され、壁面のリボンやガーランド(花綱)の飾りが愛らしい正面ファサードは、1777年〜1778年にかけて整えられました。扉上には、天使やガーランドとともに、サン・マルコの象徴ともいえる翼の生えたライオン像が飾られています。

サン・マルコ修道院とスカルツォの回廊

写真:Hiroko Oji

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また、カミッロ・カヴール通りを挟んだ斜め向かいのスカルツォの回廊も見逃せないスポットです。

サン・サルヴィの『最後の晩餐』と並び、アンドレア・デル・サルトの代表作で、8枚のパネルから構成されている『洗礼者ヨハネの生涯』が、このスカルツォの回廊にあるのです。モノクロで描かれており、一番古く1509年〜1510年に描かれた「キリストの洗礼」をはじめ、「洗礼者の説教」や「人々への洗礼」などともに帯状装飾や入り口の脇とその向かいの装飾、コリント式の柱などが素晴らしい空間になっています。

聖アントニーノの回廊

聖アントニーノの回廊

写真:Hiroko Oji

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サン・マルコ教会中央にある大きな扉の右にある扉が美術館への入り口となっており、中に入ると、最初に見られるのが修道院の施設の一つとなる聖アントニーノの回廊。ほぼ正方形の緑の中庭をイオニア式の列柱と連続アーチが取り囲んでいます。

ミケロッツォが1440年以前に建設した回廊には、レリーフや墓標とともに、アンジェリコにより制作されたルネッタにある5枚の最古のフレスコ装飾があります。

聖アントニーノの回廊

写真:Hiroko Oji

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その5枚が『沈黙を命ずるヴェローナの聖ペテロ』 『ドメニコ会の規則を示す聖ドメニコ』 『神学大全をもつ聖トマス・アクィナス』 『二人のドメニコ会修道士により迎えられる巡礼者姿のキリスト』 『慈悲のキリスト』です。

この回廊を飾るルネッタ装飾の大部分は、16世紀末〜17世紀初頭にかけてベルナルディーノ・ポッチェッティをはじめとする画家たちによって完成されました。

聖アントニーノの回廊

写真:Hiroko Oji

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また北西の角に位置するのは、アンジェリコによる特に重要な作品『十字架磔刑と聖ドメニコ』を表す大フレスコ画。

そばにあるのは「ラ・ピアニョーラ」として知られる鐘。コジモ1世の依頼で購入され、サン・マルコ教会の鐘楼につるされてサヴォナローラ(※)の信奉者たちを呼び寄せるのに用いられました。

※修道院がメディチ家の大きな援助を受けていたにもかかわらず、修道院長となってから政治的独裁の同家やフィレンツェの享楽的な文化を鋭く批判し、1498年にはシニョリーア広場にて火刑に処された人物。

アンジェリコの代表作が多数のサン・マルコ美術館内

アンジェリコの代表作が多数のサン・マルコ美術館内

写真:Hiroko Oji

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美術館の地上階には来客用の接待部屋や、かつての厨房や食堂があり、フィレンツェの他の教会にあったベアート・アンジェリコの板絵コレクション等も合わせて展示されています。

アンジェリコの代表作が多数のサン・マルコ美術館内

写真:Hiroko Oji

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『十字架降下』『アンナレーナの祭壇画』『サン・マルコの祭壇画』『リナイオーリのタベルナーコロ』など多数のアンジェリコ作品に加えて、バルトロメオ、ドメニコ・ギルランダイオ、ヤコポ・ヴィニャーリ、ベルナルディーノ・ポッチェッティ、アレッソ・バルドヴィネッティ、ジョヴァンニ・アントニオ・ソリアーニ等といったそうそうたる画家達の作品をも見ることができます。

アンジェリコの代表作が多数のサン・マルコ美術館内

写真:Hiroko Oji

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こちらはアンジェリコ作品のうちの美しい色彩が目を惹く一枚、『最後の審判』(写真)。他にも素晴らしい作品がずらりと並びますので、心ゆくまでじっくり鑑賞なさってくださいね

展示室外にも見逃せない作品が!

展示室外にも見逃せない作品が!

写真:Hiroko Oji

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展示室だけでなく、暗い階段を上る途中、ふと上にある突き当たりの壁を見上げるとそこにも見慣れた絵が!これこそ教科書にも載っていたアンジェリコの『受胎告知』。1440年〜1450年頃にかけて制作された傑作で、はっと息を飲むような美しさが伝わってきます。

きっと展示室の中に大切に飾られているだろうと思っていた人には、まさかこんな階段を上った所で出会えるなんて!と、意外な場所での出会いとなるところです。

展示室外にも見逃せない作品が!

写真:Hiroko Oji

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他にもフラ・バルトロメーオ、アルベルティネッリ、フラ・パオリーノなど、サン・マルコ派と呼ばれた人たちの作品もある中、回廊にある小部屋の一つ、客人の間の食堂には、ギルランダイオの『最後の晩餐』(写真)も壁面を飾ります。ギルランダイオはボッティチェリやペルジーニと同じ世代で、三人でシスティーナ礼拝堂の壁画を請け負ったことでも知られています。

このような名だたる作品ばかりでなく、フレスコ画や写本制作時に使用する筆や羽ペン、ヘラやすり鉢などの各種道具に顔料なども展示されていて、絵を描く方たちには魅力ある展示となります。

チェッラや図書館も見逃せない!

チェッラや図書館も見逃せない!

写真:Hiroko Oji

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フレスコ画が飾られた階段を上って2階(イタリア式では1階)に向かうと、修行僧が眠り祈りを捧げたチェッラと呼ばれる小さな部屋が並びます。

廊下の両側に並ぶ質素なひんやりとしたチェッラの壁には、祈りの為のフレスコ画が描かれています。チェッラの一つ一つには違う絵が描かれていて、アンジェリコは実際に祈りを捧げながらこれらの絵を描いたといいます。

チェッラや図書館も見逃せない!

写真:Hiroko Oji

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こちらは、教会の三廊式の身廊を模したルネサンス様式の空間でミケロッツォ設計の図書館です。初めて読書をする為の場所が設けられたもので、この部屋のオリジナルの壁の色は緑色、床もセルペンティーノと呼ばれる緑色の蛇紋岩で造られていた部屋です。

壁際のガラスケースには、独特の字体と彩色された絵図が盛り込まれた古書の数々が展示されており、一つひとつ見ていくのも面白いですよ。

チェッラや図書館も見逃せない!

写真:Hiroko Oji

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出口直前の廊下と素晴らしい天井装飾のある部屋では、19世紀終わりの都市再開発時に撤去された古いフィレンツェの町を造っていた柱や石碑、壁面装飾などの断片を見る事ができます。

フィレンツェといえばドゥオーモ広場やウフィツィ美術館など観光客が押し寄せる観光スポットに足が向きがちですが、アカデミア美術館のすぐ近くにあるこのサン・マルコ美術館もとても見応えのあるスポットです。すぐ向かいにあるスカルツォの回廊とも併せてご覧になることをおすすめします。フィレンツェカード利用で無料入館できます。

サン・マルコ美術館の基本情報

住所:Piazza San Marco,3,50121 Firenze FI
電話番号:+39-055-088-2000
開館時間:8:30〜13:50
休館日:月曜日

2025年11月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2024/12/11 訪問

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