この薄暗い空間は何!?滋賀県守山市の「伊勢遺跡史跡公園」

この薄暗い空間は何!?滋賀県守山市の「伊勢遺跡史跡公園」

更新日:2025/05/09 14:22

乾口 達司のプロフィール写真 乾口 達司 著述業/日本近代文学会・昭和文学会・日本文学協会会員
2023年、滋賀県守山市に、楕円形の形をしたユニークな展示施設をふくむ史跡公園がオープンしました。その名も「伊勢遺跡史跡公園(いせいせきしせきこうえん)」。その名のとおり、公園の地下に広がる「伊勢遺跡」の遺構を保存整備・展示した公園ですが、この伊勢遺跡、実は邪馬台国の成り立ちとも大きくかかわっている重要な遺跡なのです。今回はユニークな形の遺構展示施設を有する伊勢遺跡史跡公園をご紹介しましょう。

滋賀県守山市の「伊勢遺跡史跡公園」

滋賀県守山市の「伊勢遺跡史跡公園」

写真:乾口 達司

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「伊勢遺跡史跡公園」は滋賀県守山市にある史跡公園。守山市の伊勢町・阿村町および栗東市野尻に広がる「伊勢遺跡」の遺構の一部を保存整備・展示した公園です。

伊勢遺跡は東西約700メートル、南北約450メートルの規模を誇り、弥生時代後期の集落遺跡としては国内最大級。その規模から『魏志倭人伝』に見える「クニ」の一つではないかと考えられており、現在、国の史跡に指定されています。

2023年には「伊勢遺跡史跡公園」がオープン。伊勢遺跡について学ぶための格好の公園となっています。

滋賀県守山市の「伊勢遺跡史跡公園」

写真:乾口 達司

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園内は大きく分けて遺構展示施設と屋外の芝生広場とから成り、園内はご覧のように自由に散策することができます。

斬新なデザインの遺構展示施設

斬新なデザインの遺構展示施設

写真:乾口 達司

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公園の一角にあるのが、こちらの遺構展示施設。遺跡の一部を保存・展示した施設であり、船を逆さにしたような楕円形の形をしています。平田晃久建築設計事務所によるデザインです。

斬新なデザインの遺構展示施設

写真:乾口 達司

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施設内はご覧のとおり。これ、本当に遺跡の保存展示施設なの?そう思わせるような幻想的な光景が広がっています。

斬新なデザインの遺構展示施設

写真:乾口 達司

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特に注目していただきたいのは、天井部分。おびただしい数のスギ材が主構造の鉄骨を補強するものとして使われており、その数、何と1180本以上!それが巨大な船の底をイメージさせる独特の光景を形作っています。

遺構展示施設の様子

遺構展示施設の様子

写真:乾口 達司

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遺構展示施設に立ち入ったら、まずは壁面に大画面で映し出される映像をご覧ください。映像は伊勢遺跡の概要を解説したものであり、伊勢遺跡がいかに重要な遺跡であるかを学ぶことができます。

遺構展示施設の様子

写真:乾口 達司

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館内には、発掘調査の結果、判明した伊勢遺跡の当時の様子を復元したジオラマが展示されており、伊勢遺跡の様子を視覚的にも理解することができます。

遺構展示施設の様子

写真:乾口 達司

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ジオラマで注目したいのは、中心となる方形区画をとりかこむように、円周状に建物が計画的に配置されていること。直径220メートルの円周上に等間隔に配列されたこれらの棟持柱付建物群は、祭殿として使われたと考えられており、その配置は伊勢遺跡ならではのものです。

方形区画とそれを円周状にとりかこむ建物群にはどのような役割があったのか、ご自身でもお考えください。

遺構のレプリカや出土物

遺構のレプリカや出土物

写真:乾口 達司

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施設内でもう一点注目していただきたいのが、足元に見られる遺構。遺構展示施設は「SB-1」と呼ばれる大型建物の遺構上に設けられており、ガラス床を通して、復元された遺構のレプリカを見学することができます。

遺構のレプリカや出土物

写真:乾口 達司

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ほかにも、伊勢遺跡やその周辺の遺跡から出土した土器なども多数展示されています。伊勢遺跡から出土した土器で興味深いのは、当時のひとびとが日常生活で使っていたものがほとんど出土していないこと。円周状に配置された大型建物などの独特の配置なども踏まえると、その出土状況は、伊勢遺跡が当時のひとびとの生活空間ではなく、祭祀をとりおこなう神聖な空間であったことを示しています。

園内の遺構

園内の遺構

写真:乾口 達司

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施設の外にも遺構を示した個所が見られます。

たとえば、写真は遺構展示施設の東側に見られる区画。「SB-10」と呼ばれる建物の遺構を示した個所です。SB-10は一辺約9メートルの正方形の建物で、佐賀県の吉野ケ里遺跡で発見されているような「楼観」に類するものであると考えられています。

現在はその柱の位置がわかるように立柱が復元され、配置されています。

園内の遺構

写真:乾口 達司

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遺構展示施設の南側には「SB-3」呼ばれる建物の場所を示したペイントも見られます。案内板も設置されているため、そちらを読みながら、大型建物の規模を実感してみてください。

伊勢遺跡史跡公園がいかに重要な史跡公園であるか、おわかりいただけたでしょうか。伊勢遺跡が、突如、出現するのは1世紀中頃のこと。そして、その衰退は『魏志倭人伝』に「倭国大乱」と記された戦乱が終息した時期と考えられています。それは女王・卑弥呼が共立され、邪馬台国を盟主とするクニの連合体が成立した時期でもあり、伊勢遺跡の衰退を邪馬台国の成立とセットで考える研究者もいます。そのようなことにも思いをめぐらせながら、伊勢遺跡史跡公園をめぐり、古代のロマンにひたってください。

伊勢遺跡史跡公園の基本情報

住所:滋賀県守山市伊勢町80番地
電話番号:077-599-3223
開館時間:午前9時〜午後5時
休館日:火曜日・祝日の翌日・年末年始
入園料:無料
アクセス:JR栗東駅より徒歩約10分

2025年5月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2025/04/06 訪問

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