写真:Hiroko Oji
地図を見るイタリア・トスカーナ州の州都フィレンツェは、メディチ家による統治下で、15世紀にはルネッサンス文化の中心地となりました。
フィレンツェ最古の教会の一つ「サン・ロレンツォ教会」は、メディチ家代々から続く菩提寺。時代や様式の異なる3つの墓地空間(旧聖具室、新聖具室、君主の礼拝堂)のうちサン・ロレンツォ教会内にあるのは「旧聖具室」です。(「新聖具室」と「君主の礼拝堂」はメディチ家礼拝堂内にあります)。外観はレンガを積んだだけの簡素なファサードの教会です。
教会前の広場にあるのは、指導者ジョバンニ・デッレ・バンデ・ネーレ像。1540年、バッチョ・バンディネッリ作の彫刻で、長い間未完成のままでしたが、1850年にようやく完成し、ここに設置されました。
写真:Hiroko Oji
地図を見る教会内部は3廊式。3つの身廊を円柱で区切った構造で、身廊に沿ってブルネッレスキが手がけたコリント式円柱が2列並びます。円柱の間を結ぶ半円状のアーチが連続するのも美しく、イタリア産砂岩の一種「ピエトラセレーナ」という白い石材と白い漆喰壁が使われており、全体的に白みを帯びているのが特徴です。
床と平行になっている格天井はルネサンス様式特有のもので、入口から主祭壇に向かって一直線に伸び、ロマネスク教会のフレスコ壁画やゴシック教会のステンドグラスなどの装飾はありません。
写真:Hiroko Oji
地図を見る主祭壇手前の両側廊には、一対の箱型をしたブロンズ製の説教壇(復活の説教壇と受難の説教壇)があります。これはドナテッロの最晩年の作品(1460年以降)で、ギリシャの建築様式である「イオニア式」の円柱の上に飾られています。
写真:Hiroko Oji
地図を見る左右の側廊の壁側には、素晴らしい絵画の飾られた礼拝堂が並びます。
特に目を惹く、左身廊の主祭壇近くにある大きな壁面のフレスコ画は、アーニョロ・ブロンズィーノの作品『聖ロレンツォの殉教』。この教会の名前でもある聖ロレンツォの鉄格子で焼かれるという殉教シーンです。左奥にはブロンズィーノの自画像、師匠のポントルモ、弟子のアッローリの姿も描かれています。
写真:Hiroko Oji
地図を見る左翼廊にあるマルテッリ礼拝堂のフィリッポ・リッピによる名画は『受胎告知』。フランドル絵画の影響を受けた細部の表現で、マリア足元のガラスは美しく透き通り、彼女の純粋さを表しているといわれます。
また、右側側廊の2つめの礼拝堂に飾られているロッソ・フィオレンティーノ作『マリアの結婚』も必見です。
写真:Hiroko Oji
地図を見る主祭壇に向かって左翼廊の突き当たりから旧聖具室に入ることができます。この聖具室は、ブルネッレスキが15世紀に手掛けたもので、正方形の形をしているのが特徴です。
旧聖具室への入り口となるブロンズの扉もドナテッロのレリーフで、使徒や聖人たちが2人ずつペアになって神学論争をしている場面が描き出されています。また、キリストの磔刑像を挟んで左右に見える漆喰のレリーフのうち、左手側に描かれているのは『聖コスマスと聖ダミヌス』、右手側は『聖ラウレンティウスと聖ステパノ』です。
写真:Hiroko Oji
地図を見る回廊に囲まれた教会の中庭に出ると、ラウレンツィアーナ図書館外観に出会えます。
ミケランジェロの設計したラウレンツィアーナ図書館には、メディチ家代々が収集した古文書1万冊が収められており、ゆるやかに流れ落ちる滝の水を表現する玄関の階段と、閲覧室の書見机や木製天井&モザイク床の装飾は見応えがあります。
写真:Hiroko Oji
地図を見る回廊から地下に下りればクリプタにつながります。地下に下りてすぐのスペースは宝物館になっており、膨大な教会の宝物である聖遺物を収めた箱や壺が展示されています。
数々の聖遺物箱や法衣、クリスタル器や銀器、金メッキのブロンズ製の器などが並び、コジモ1世の区画にはピウス5世による大公の戴冠式を描いた絵画が掲げられています。
写真:Hiroko Oji
地図を見るその奥にある地下クリプタは、メディチ家のコジモ1世をはじめとするほぼ全てのメディチ家のメンバーが眠るメディチ家の墓となっています。床に嵌められた四角いプレートにそれぞれの名前が書かれています。
教会主祭壇前の床下辺り、ドナテッロの墓の奥にあるのが老コジモの墓(写真)です。教会のクーポラの下、主祭壇手前の床面には、四隅にメディチ家の紋章を配した色大理石による幾何学装飾があり、「祖国の父コジモ・メディチここに眠る」と記した銘板が嵌め込まれています。「祖国の父」と呼ばれたコジモ・メディチの墓誌銘であり、この下で彼は永遠の眠りについているのです。
<サン・ロレンツォ教会の基本情報>
住所:Piazza di San Lorenzo 9,50123 Firenze FI
電話番号:+39-055-214042
開館時間:10:00〜17:30
休館日:日曜日
写真:Hiroko Oji
地図を見るサン・ロレンツォ教会西側に隣接して建つ八角形の建物が「メディチ家礼拝堂」。初代トスカーナ大公「コジモ1世」、2代目「フランチェスコ1世」、3代目「フェルディナンド1世」といった、初代から6代目までのトスカーナ大公が祀られている霊廟です。
建設が着工されたのは1602年、最終的に完成したのは1962年のこと。主にバロック様式の「君主の礼拝堂」と「新聖具室」の2つの建物で成り立ち、これらを総称して「メディチ家礼拝堂」と呼んでいます。
写真:Hiroko Oji
地図を見る新聖具室では、まずは絵画や聖遺物が展示されているエリアから見学開始です。
聖遺物を収めた箱や壺がずらりと並ぶ中、貴石と象牙を使った彫刻のピエタの周りに天使達がキリストの受難のシンボルを示しているのを見る聖エメリコ(写真中央)は、1700年ごろの作品で、目を惹く作品のひとつです。
写真:Hiroko Oji
地図を見る新聖具室入り口にはミケランジェロの4つの彫刻があり必見です。
入り口右側、ロレンツォ2世の墓とそれに向き合うジュリアーノの墓が、ミケランジェロの彫刻で飾られています。ロレンツォ像の下には『曙』『黄昏』、ジュリアーノ像の下には『昼』『夜』が配されています。
写真:Hiroko Oji
地図を見る奥の階段を上ると、そこは天井の高い「君主の礼拝堂」。1644年に建設され、壁一面が華やかで豪華な装飾は、外観のシンプルさからは想像が付かないほどです。
堂内の床や壁面には、数百種類の色大理石がふんだんに使用されています。世界中から集められた色とりどりの美しい大理石や貴石モザイクによるもので、重厚かつ華麗。トスカーナ地方の16都市の紋章も象嵌細工で飾られ、周囲にはコジモ1世以後のメディチ家出身のトスカーナ大公たちの墓が設置されています。
写真:Hiroko Oji
地図を見るキリスト像のある祭壇の装飾はエマウスの晩餐が中心で、19世紀後半に製作された貴石細工!着衣やテーブルクロスの折り目などの微細な陰影、人物の顔の表情などを見ていると、石とは思えないほどの滑らかな仕上がりに驚くばかりです。
写真:Hiroko Oji
地図を見るまた、天井にあるのは8角形の天井画。1828年にピエトロ・ベンベヌーティによって描かれました。
この磔刑のキリストが主祭壇上部に描かれる天井画は、新約聖書と旧約聖書のエピソードからの8場面。中心部に描かれているのは預言者と聖書の編者達。あまりにも見事で美しく、時を忘れて見惚れてしまいます。
<メディチ家礼拝堂の基本情報>
住所:Piazza di Madonna degli Aldobrandini 6,50123 Firenze FI
電話番号:+39-055-064-9430
開館時間:8:15〜18:50
休館日:火曜日
ここでご紹介した「サン・ロレンツォ教会」と「メディチ家礼拝堂」は、鉄道駅から徒歩10分もかかりません。ドゥオーモ広場へ行く途中に立ち寄り、2施設が隣接しているため併せて見学されると時間の節約にもなります。「メディチ家礼拝堂」は8:15から入館できますので、こちらを先に訪問して、そのあと「サン・ロレンツォ教会」へいらしてくださいね。どちらも名だたる芸術家たちの作品で満たされていますので、ぜひ時間をたっぷりとって鑑賞なさいますように。
これらの見学にはフィレンツェカード利用がお得で便利になります。美術館、博物館、教会の入場がフリーパスになるカードで、85ユーロと少し高く感じるかもしれませんが72時間有効です。鉄道駅前観光案内所、フィレンツェ空港観光案内所、カヴール通り観光案内所、 ヴェッキオ宮殿インフォメーションなどで購入できます。
2025年10月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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