写真：乾口 達司
地図を見る「門田貝塚」は、岡山県瀬戸内市にある古代遺跡。1933年（昭和8）、地元の研究者・長瀬薫によって発見されました。その後の段階的な発掘調査により、貝殻などの生活廃棄物にまじって先史時代の土器や石器、獣骨などのほか、古墳時代以降に作られた須恵器や土師器、陶器なども発見され、門田貝塚が弥生時代前期から鎌倉時代まで続いた複合集落の跡地であることが判明しています。
とりわけ、注目したいのは、弥生時代前期の土器。門田貝塚から出土した弥生土器は、瀬戸内海沿岸地方の指標となる貴重なもので、現在、それは「門田貝塚」の名をとって「門田式」「門田下層式」と呼ばれています。
1985年（昭和60）、貝塚としては岡山県内で2番目となる国の史跡に指定されたことを受けて、史跡公園としての整備がなされました。現在は「門田貝塚史跡公園」の名称で郷土の歴史学習の場・憩いの場として活用されています。
写真：乾口 達司
地図を見る門田貝塚の付近にあった当時の集落の様子をイメージしやすいように、敷地内には、竪穴住居も復元されています。史跡公園として整備された当初は2棟ありましたが、現在は1棟だけが残されています。
背後には一般的な民家も見られますが、古代の住居と現代の住居とが共存する光景、シュールな印象を受けませんか？
写真：乾口 達司
地図を見る門田貝塚で復元されている竪穴住居は、弥生時代後期に見られる形式のもの。屋根の妻の部分に目をやると、内部に光をとり入れるため、また、内部中央の床面にしつらえられている炉からの煙を排出するための意匠も見られます。
竪穴住居の構造を間近で見る機会など、なかなかありません。この機会にじっくりご覧ください。
写真：乾口 達司
地図を見る竪穴住居の前面には、当時、集落の近くにあった溝の遺構も復元されています。溝の幅は4〜5メートル。ゆるやかにカーブするU字形となっています。
発掘調査の範囲を超えていることもあって、溝の始点・末点はともに不明。したがって、人為的に開削されたものであるか、自然のものであるかは不明ですが、集落からすれば、外敵から集落を守る意味でも、生活用水を確保するという意味でも、溝は必要不可欠なものであったことがわかります。
写真：乾口 達司
地図を見る写真は竪穴住居に近い側の溝を撮影したものですが、溝のなかに何やら白いものがたくさん見られること、おわかりになりますか？
近くに寄って溝をのぞき込むと、白い物体はたくさんの貝殻であることがわかります。門田貝塚から発見された貝塚はハイガイやシジミを主としており、溝を埋めるようにして堆積・形成されていました。堆積の厚さは中心部で1メートル強を測っています。
写真：乾口 達司
地図を見る「史跡門田貝塚環境整備事業報告書」（岡山県邑久町教育委員会刊／一九九八年） によると、門田貝塚史跡公園では、溝の内部から発掘されたおびただしい数の貝殻の様子を視覚的に認識できるようにするため、採集された貝殻の実物を海砂やセメント、膨張性減水剤、セメント防凍急結硬剤などと混ぜ合わせ、復元された溝の表面に散布しているのです。
このリアルな再現性にこそ、門田貝塚史跡公園ならではの特色があるといえます。
写真：乾口 達司
地図を見るほかにも、園内には多くの樹木が植えられています。これらの樹木は、当時、門田貝塚の付近に生えていた樹木を系統的に植栽したもの。大別すると、ドングリ類を中心とした 食用樹種植栽ゾーン、農耕具や生活用具の有用材料として利用された農耕具用樹種植栽ゾーン、そして、住居の建築用材として利用された建築用樹種植裁ゾーンの3つから成り立っています。
古代人がいかに身のまわりの樹木を効率よく使い、自分たちの生活にいかしていたかがわかりますね。
写真：乾口 達司
地図を見るもちろん、公園である以上、ベンチも設けられています。見学に疲れたらベンチに腰をおろして休憩しましょう。
門田貝塚史跡公園がいかに特色のある公園であるか、おわかりいただけでしょうか。この地にかつて古代人が暮らしていたかと思うと、歴史のロマンを感じるのではないでしょうか。門田貝塚史跡公園を訪れ、当地の古代に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
住所：岡山県瀬戸内市邑久町尾張232
アクセス：JR赤穂線「邑久駅」より徒歩約3分
2025年9月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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