写真:井伊 たびを
地図を見る来迎院(らいごういん)は、茨城県龍ケ崎市にある天台宗寺院である。山号は箱根山。箱根山宝塔寺来迎院と号する。創立は延長年間(923〜930)といわれている。
建物は三間多宝塔で、屋根はこけら葺。上・下層とも唐様の組物で下層は出組、上層は四手先である。下層は各面中央間に浅唐戸を配し、両脇間は欅材の1枚の板壁である。上層は各柱間に幣軸が立つが、下層中央間に位置する幣軸は一回り大きく、東西面は建具入りとなっている。
平成10〜12年度に実施した改修工事で、多宝塔の宝珠の銘文に「希代廟塔修繕之為檀越」とあることが確認され、1556(弘治2)年に土岐治英が祖先の霊を祭る希代の塔を修繕するために施主を務めていることがわかった。このことから、建立年代はさらにさかのぼるものと思われる。
この地方ではほとんど類を見ない多宝塔形式で、よく室町時代の特色を示してる。形式上から、また建立年代の古さからも、極めて貴重な文化財である。
写真:井伊 たびを
地図を見る塔の最上層の屋根にのせられた装飾物を相輪という。別名、九輪ともいう。相輪は上から順に、宝珠、八葉、竜車、六華、竜車、四葉、請花、伏鉢、露盤と呼ばれる。この相輪は鉄製で、表面には領主、大工、土豪、僧侶のほか、無数の民衆らしき名が刻まれている。建立当時、広い範囲の人々の崇敬を集めていたことが窺える。相輪は多宝塔の形式で四隅に宝鎖をおろす。
写真:井伊 たびを
地図を見る見事な四手先組物、軒は二軒・繁垂木。いにしえの匠の技が、悠久のときを越えて現代に受け継がれ、やがて遠い未来へと引き継がれてゆくのだろう。暫し、ときの流れを忘れて、組み付けた職人の働きぶりなど想像しながら、ゆったりと塔の周りを巡ってみたいものだ。耳をすませば、匠が奏でる鑿の音や、鉋の音が聞こえてきそうだ。
写真:井伊 たびを
地図を見る出組と二軒・繁垂木。軒反りがとても優美だ。匠の技がさえる出組にも、自然と目がとまり誰もがみとれる。そして四隅に金属性の風鐸(ふうたく)がぶら下がっているのに気づく。室町の時代の風をも受けて、たおやかな音色が軒下に反響していたのだろうか。500年の歴史の重みを、感じないわけにはいかない。
写真:井伊 たびを
地図を見る塔は高欄のない縁をめぐらし、中央間桟唐戸、脇間板張り、中備えは中央間のみ束のない間斗束。塔の内部は来迎柱・須弥壇があり多宝・釈迦の両如来を安置されているという。
四面ともに、中央の一間が開き戸、その左右の各一間は板張りで、中ほどに太い長押(なげし)を配置してある。柱の下面が直接礎石に乗る形で。礎石のサイズはかなり大きい。
JR常磐線・佐貫駅で、関東鉄道竜ヶ崎線に乗り換える。入地駅を過ぎたあたり、進行方向の左車窓に多宝塔が臨まれる。目的地・来迎院多宝塔は、終着駅・竜ヶ崎駅から徒歩30分、車で8分。
来迎院の近くには、龍ヶ崎市歴史民族資料館がある。そこには、多宝塔の宝珠(複製)が展示されている。竜ヶ崎市の昔を知る上で、併せて訪れてみたいところだ。
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(2023/12/1更新)
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