写真:吉川 なお
地図を見る故宮博物院は清朝最後の皇帝、溥儀が北京の紫禁城(故宮)から退去した後の1925年に、歴代皇帝が所有していた美術品を一般公開したのが始まりです。1931年に満州事変による戦火を避けるために南京に移され、1937年に日中戦争が勃発すると3つのルートに分けられて四川省に疎開し、戦争終結後に再び南京に戻されました。
その後、毛沢東率いる共産党と蒋介石率いる国民党の間で内戦が起こり、形勢が不利になった国民党は台湾移転を決定。同時に故宮から精選した第一級の文物も1948年から3回にわたって台北に運ばれました。
1965年、それらを収蔵する故宮博物院が台北近郊の外双渓に完成し、皇帝私有の宝は晴れて世界中が衆目する公の宝となりました。
写真:吉川 なお
地図を見る展示物は器物、書画、図書文献に大別され、1〜3階に時代順にカテゴリーに分けられて配置されています。まず1階102室のオリエンテーションギャラリーで、中国の歴史にざっと目を通した後、3階→2階→1階と下りていくのがお勧めです。日本語の音声ガイド(150元・パスポートを預ける必要あり)を借りると、文物の情報と背景をより深く知ることができます。
館内の展示品は3〜6カ月ごとに入れ替えられますが、人気の宝物は常設で展示されています。時間があまりない方は3階に集まる必見秘宝をご覧になるといいでしょう。
なお館内は写真や動画の撮影は可能ですが、フラッシュや三脚、自撮りは禁止となっています。
数多い収蔵品の中から、見逃したくない必見の5つの宝物をご紹介しましょう。
まずは故宮博物院の2大シンボル「翠玉白菜」と「肉形石」。「翠玉白菜」は清の第11代皇帝光緒帝の后、瑾妃の嫁入道具として紫禁城の永和宮に飾られていたもので、清廉潔白を意味する白菜の上に子孫繁栄と多産を意味するキリギリスとイナゴが配されています。色が分離したヒスイ輝石の形と天然の色合いを活かし、白い部分を茎、エメラルド色の部分を葉に見立て、みずみずしい質感までも見事に表現しています。
「肉形石」は清の第5代皇帝雍正帝の寝宮であった養心殿に置かれていたもので、3層に分かれた天然石に彩色と加工を施し、豚の角煮そっくりに仕上げた傑作です。自然の筋目と色の変化を利用して皮、脂身、赤身肉に似せ、皮の表面には細かな毛穴を設けるなど卓越した技巧が見られます。
写真:吉川 なお
地図を見る同じく清代の「象牙透彫雲龍文套球」は職人親子3代が100年にわたって彫り上げた多層球です。わずか直径12センチほどの球の表層には精巧な9匹の龍の彫刻が彫られ、その中には透かし彫りの幾何学文様が施された24層の球体があり、各層自由に回転させることができます。現在では制作不可能、もはや神業としかいえない超絶技巧の象牙細工です。
清代1737年に作られた「雕橄欖核舟」も驚きの極小彫刻です。高さ1.6センチ、縦1.4センチ、横3.4センチ足らずの小さなオリーブの種を小舟に仕立て、中には表情や動きの異なる8人が乗船しており、扉が開閉する小舟の船底には300字もの文字が刻まれています。
301室の「毛公鼎」は獣を模した3本足を持つ青銅の祭礼器具で、器の内側に500文字の銘文が刻まれています。政情不安な西周晩期、宣王が功労のあった叔父の毛公を称えた内容で、褒美として多くの品を下賜したことなどが綴られています。32行にも及ぶこの銘文は現存する青銅器に記されたものの中で最も長く、史実を伝える歴史的資料として高い価値を持っています。
写真:吉川 なお
地図を見る至宝をじっくり鑑賞した後は、ミュージアムショップをのぞいてみましょう。本館2階には書店「停雲」とレプリカが充実している「玲瓏館」「宝絵廊」、地下1階には広くて開放的な「多宝格」があります。
おみやげや記念品を買うなら、エスカレーターを下りて一番大きい「多宝格」へ。収蔵品をモチーフにしたグッズがたくさん並んでいて、実用的なものから鑑賞用、デザインに長けたものからちょっと笑ってしまうものまで実に豊富なラインアップです。
人気はやはり「翠玉白菜」と「肉型石」グッズ。お手軽なストラップやマグネット、文房具、お菓子から高価な置物やアクセサリーまで選り取りみどりです。日本語の図録は中央の日本人お勧めコーナーに置いてあります。
写真:吉川 なお
地図を見る観覧、ショッピングと館内を歩き回ったら足は棒のよう。そこで余韻に浸りながら一服タイムはいかがでしょうか。本館1階にカフェ「閑居賦」、西側の別館にレストラン「故宮晶華」、その奥の第二展覧エリア1階にカフェ「富春居」があります。
本館唯一の休憩処である「閑居賦」はいつも混んでいるので、ゆっくりするなら「富春居」がお薦め。いったん館外に出ることになりますが、入場券の半券にスタンプを押してもらうと再入場できます。
「富春居」は元朝末期に描かれた「富春山居図」という水墨画が名前の由来で、店内の壁一面を飾っています。茶芸館のような落ち着いた雰囲気で居心地が良く、本館と離れているためとても静かです。中国茶やコーヒー、ケーキなどの喫茶以外に牛肉麺などの食事メニューもあります。
写真:吉川 なお
地図を見る全面ガラス張りの「故宮晶華」の1〜3階は日本人デザイナーが内装を手掛けた高級レストラン。名宝のレプリカが置かれた店内では、故宮の文物をモチーフにした「故宮晶華国宝宴(1人3,800元+サービス料10%)」というコース料理が事前予約で味わえます。収蔵する名品の数々を台湾産の新鮮な食材で再現したスペシャルメニューで、国宝に似せた料理を目と舌で楽しむことができます。他に麺類や点心などのアラカルトもあります。
写真:吉川 なお
地図を見るもっとリーズナブルにという方には地下2階の「府城晶華」がお薦め。手前はフードコート風、奥は円形テーブルが並ぶ台南料理レストランで、看板メニューの但仔麺は75元と財布に優しい金額。棺材板(シーフードシチュー入り揚げパン)や碗稞(卵黄や豚肉、エビ入り米の蒸し餅)など台南の郷土料理の他にお得なセットメニュー(380、400元)もあります。
写真:吉川 なお
地図を見る至善園は故宮博物院の敷地内、天下為公牌坊の門がある大門広場の東側に広がる中国式庭園です。入口は展示エリア1階に続く外階段の横と大門広場近くの正門の2カ所で、正門から入場すると博物院の半券提示で無料で入園できます。(月曜日は休園)
中国宋代の庭園の景観を再現した園内には、洗筆池と龍池を中心に小川や散策路が設けられ、景色を愛でながら一周することができます。松凰閣や蘭亭などの中国風の建築物も彩りを添え、四季折々の花々が咲く緑豊かなオアシスを散策すると、心身ともにリフレッシュできます。
故宮博物院の膨大な数の至宝は、石器時代から清朝までの中国の歴史の変遷を今に伝える貴重な文化遺産です。年中無休というのも旅行者にはありがたいことで、日〜木曜は8時半から午後6時半まで、金曜日と土曜日は午後9時まで開館しており、海外の芸術も特別展を催して広く紹介しています。
2015年12月に嘉義県太保市に分院の南部院区がオープンし、そちらに移動したり交互に展示される品々もあります。人気の「翠玉白菜」と「肉形石」の展示情報は、中国語ホームページの『展覧』→『展覧移動』のページに随時発表されるので、事前にチェックされることをお薦めします。
何度訪れても新しい発見と感動がある故宮博物院。世界一を誇る中国美術工芸コレクション、必見です!
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