金沢市の鈴木大拙館で建築を楽しみ思索を深める!

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金沢市の鈴木大拙館で建築を楽しみ思索を深める!

金沢市の鈴木大拙館で建築を楽しみ思索を深める!

更新日:2014/07/18 12:12

松田 橙子のプロフィール写真 松田 橙子 フリーライター

金沢市出身の仏教学者・鈴木大拙にちなんだまったく新しいタイプの施設が、2011年、金沢市の中心街に近い鈴木大拙の生家のそばにオープンしました。
美術館なの?それとも博物館?記念館? 
斬新な建築物が目を引くけど、いったい「なんのための」場所なの?と不思議に感じている方も多いはず。
今回は、金沢の新しい名所「鈴木大拙館」をご紹介したいと思います。

建築ファンの間でも話題に

建築ファンの間でも話題に

写真:松田 橙子

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この「鈴木大拙館」は、建築家の谷口吉生氏によるものです。
谷口氏の父親、やはり建築家の谷口吉郎氏が金沢市出身ということで、もちろん谷口氏本人も金沢にはゆかりのある人です。

しかし、それだけでなく、谷口吉生はニューヨーク近代美術館MoMAの2004年の増築・改築において、並居る世界のライバルの中から見事コンペで採用された、世界的な建築家。

谷口氏はあくまで作品が第一という主義でメディアにはあまり登場しませんが、日本で最も評価されている建築家の一人です。

ということで、もちろん建築関係の雑誌などがこぞってこの鈴木大拙館を取材して華々しく掲載しているので、建築ファンも多く足を運ぶスポットとなっています。

それにしても、この浅い水盤に面した、真っ白な箱のような建築物は、いったい、なんなのでしょうか…。

仏教学者鈴木大拙とは?

仏教学者鈴木大拙とは?

写真:松田 橙子

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鈴木大拙は、東洋の思想を、西洋に広く知らしめた学者として知られています。

第二次世界大戦後、80歳を超えてからNYに居住して、そこを拠点にプリンストン大学やニューヨーク大学で講演を行っていきます。1952年、82歳のときにコロンビア大学の客員教授に。

海外の一流大学で教えるには、語学に長けていることが不可欠ですが、それだけで可能なわけではありません。

禅をはじめとする仏教の思想について長年の研究で裏打ちされた確かな知識、さらに「西洋の」大学で教えるのですから、西洋の思想の基盤についても卓越したものがあり、さらに両者を比較しつつ論じる。

こんな離れ業をやってのけた大拙は、ユングやハイデッガーとも個人的に交流があったと言われています。

英語での著作も多く、「近代日本最大の仏教者」と評価されています。

3つの棟と、水盤の庭の織り成す静謐な空間

3つの棟と、水盤の庭の織り成す静謐な空間

写真:松田 橙子

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さて、この鈴木大拙館には、「玄関棟」、「展示棟」、「思索空間棟」という3つの建物があります。

玄関棟で入場券(300円)を購入したら、まずは展示棟へ向かう順序が標されています。

異空間へ繋がるような細長い回廊を抜けていくと現れる展示等では、その都度企画展示が催されている他、大拙の書や写真などが展示されています。

展示には説明やタイトルを書いたプレートがついておらず、これは大拙の思想に従い、先入観なく、触れて・見て・あるがままを感じてもらうための趣向なのだそう。

またこの棟に隣り合って、大拙の著書や、鈴木大拙館を掲載した雑誌などが並ぶ学習空間があります。美しい庭を眺められる静かな空間で、机に座って書籍をじっくり読むことができます。

水盤の庭で感じてみる

水盤の庭で感じてみる

写真:松田 橙子

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さて、展示棟を出ると、そこには水の浅く張ってある水盤が広がっており、その向こうに四角い白い建造物が。

この鈴木大拙館は、金沢21世紀美術館から歩いてほんの10分ほどの街中に位置しますが、これほどの自然が残っているのかと驚くほどの緑豊かな環境の中にあります。

かつては加賀藩の家老だった本多家の武家屋敷が居並んでいた本多の森公園の樹林が借景となって、鈴木大拙館をひときわ素晴らしい眺めにしています。

この水鏡の庭の面積はすべての建物の面積よりも広く作られており、圧巻です。

水盤は鏡のように空や樹木、建物を写します。また風によってさざ波をたて、水音がします。ほとんど静止しているような風景なのに、実は一つとして留まるものがない。

鈴木大拙の弟子、岡村美穂子氏が、生前の大拙とのエピソードにこのようなことがあったと語っています。あるとき、大拙が机を叩いて、岡村氏に「どこで聞いた?」と問います。

ありきたりに「耳で聞いた」と答えないで「全身で聞いた」と岡村氏は答えます。しかし大拙は「そんなけちくさいこというんじゃないぞ。全宇宙が聞いたから、あなたも聞いたんじゃないかね?」と言ったそうです。
 
その水でできた庭園を眺めていると、眺めるだけでなく、耳をそばだてて、すべての感覚、あたかも自分の存在全てで「感じている」感覚になり、やがては大拙が岡本氏にいった「全宇宙が感じた」から、自分も感じるという感覚がわかるような気がしてくるかもしれませんね。

最後は思索空間で…

最後は思索空間で…

写真:松田 橙子

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さて、水盤の庭を満喫したら、いよいよ、白い箱のような建物に足を踏み入れてみましょう。

ここは訪れた人が「思索」するために作られた空間なのです。畳でできた椅子がおいてあるだけの四角い空間がそこにあるだけです。

畳なのでそこで座禅を組むこともできますし、空いていれば靴を脱いで横になってもいいような雰囲気です。

ここでどう過ごすかは、まさに各人に委ねられていて、こう過ごしてくださいというヒントのようなものが示されているわけではありません。

開放された入口からは、季節によって風も入ってくるでしょうし、鳥やセミの鳴き声が聞こえることも。あるいは人間の話し声、靴音も…。もちろんそこからまた水盤の庭を眺めることもできます。

この鈴木大拙館を実際に訪れたことによって、鈴木大拙その人が言わんとしていたことに知らずに近づいていた…。最後に、そんな仕掛けが施されていたことに気がつきます。

※鈴木大拙館の詳しい情報はMEMOをご覧下さい。

最後に

いかがでしたか。
禅や哲学など難しい学問がわからないと尻込みすることはありません。
単に静かな空間でゆっくりしたい、建築を楽しみたい、写真が撮りたい…どんな目的で訪れても大丈夫だという懐の深さがこの施設には感じられます。
でもそれなのに、訪れた人皆、何か人生の深いテーマに触れてしまう神秘も隠されているようでもあります。
次の金沢旅行では、ぜひこの新しいスポットを訪ねてみてくださいね。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2014/07/16 訪問

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