写真:乾口 達司
地図を見る瀬戸内海は日本におけるカブトガニ有数の生息地。なかでも、カブトガニ博物館の立地する笠岡市はカブトガニが生息しやすい内湾の干潟があったこともあり、古くよりその生息地として知られていました。ところが、昭和40年代にはじまった干拓事業により、固体数が激減。その事態を受けて、平成2年、カブトガニの保護と研究を目的とした当館が設置されました。
館内に一歩足を踏み入れると、水槽のなかで泳ぐカブトガニの姿を目にすることができます。ご覧のように、2匹のカブトガニがつがいになって泳いでいますよね。実は、カブトガニにはオスとメスとがつがいで行動するという習性があるのです。これを「抱合」と呼びますが、みなさんは、いったいどちらがオスでどちらがメスだと思いますか?正解は前方がメス、後方がオス。しかも、メスの行動はすべてオスからの指示によっておこなわれているのです。オスを背負ってさらに行動の指示まで与えられているなんて、メスが何だか可哀想!そう思われる方も多いでしょうが、心配はご無用。エサを食べるのはメスの方が先で、オスはメスがお腹いっぱいになってから残りをいただきます。見事な連携プレーですね。
写真:乾口 達司
地図を見るカブトガニといえば、硬い殻とその後方に伸びる剣のような長い尻尾(尾剣)を誰もが思い浮かべるでしょう。では、反対に殻の内側、すなわち、腹面の方はどうなっているのか、ご存知ですか?カブトガニの泳ぐ姿を観察できる当館では、ご覧のように、普段、なかなかお目にかかれない腹面の様子も観察することができるのです!腹面には6対の付属肢とそれにかこまれた口がありますが、付属肢を動かす様子を観察すると、「カブトガニ」という名称からカニの仲間(甲殻類)であると誤解されがちなカブトガニが、生物学上はクモやサソリの仲間であることがわかりますね。もちろん、館内には体の仕組みについて解説した展示コーナーも設置されているので、そちらで解説部分に目を通してからあらためて実物を目にすると、その学習効果はよりいっそう高いことでしょう。
写真:乾口 達司
地図を見るカブトガニは脱皮をして成長する生きもの。脱皮のペースはほぼ1年に1回ずつで、15年ほどで成体になります。当館では幼生から成体になるまでの経緯が標本つきで紹介されており、カブトガニが意外に長い寿命の持ち主であることを教えられます。
写真:乾口 達司
地図を見る食用となる部分がきわめて少ない上、漁の最中に網に引っかかると網を破ってしまうことがあり、かつては漁師たちから嫌われていたカブトガニ。しかし、そんなカブトガニも現在では意外な分野で重宝がられているのです。それは何と医学の分野!カブトガニの血液は体外に流れ出すと寒天のようにかたまってしまうという性質があります。これは海水中にある細菌の毒素(内毒素)から身を守るための作用と考えられており、現在、医学の分野では、カブトガニの血液を利用して私たちにとっても有害な内毒素を抑える研究が進められているのです。たとえば、カブトガニの血液にはエイズウィルスから免疫細胞を守る成分も発見されているとのこと!「生きた化石」といわれるカブトガニが現代医学の発展に貢献しているという事実、感動しませんか?
写真:乾口 達司
地図を見る展望デッキからはカブトガニの生息する笠岡の海を眺めることができます。現在、カブトガニは写真の内湾付近に生息していますが、いまから数十年前までは瀬戸内海のどこででも普通にカブトガニの姿が見られたといいます。そんなカブトガニの生息地がきわめて限定的なものになってきているという事実を知ることは、環境保護の重要性を再認識するためのきっかけにもなるはず。ぜひ、展望デッキからカブトガニの暮らす海を眺めてみてください。
カブトガニがいかに貴重な生き物であるか、おわかりになったのではないでしょうか。ほかにも、当館ではカブトガニに関するさまざまな生態が紹介されており、カブトガニについて学ぶのに格好の施設であるといえます。お子さんの自由研究に限らず、私たち自身がカブトガニについて学び、自然環境の大切さを再認識するためにも当館を訪れ、その驚くべき生態に触れてみてください。
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(2024/9/18更新)
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