北陸新幹線開業で便利に!北信濃の「小京都」飯山の町めぐり

北陸新幹線開業で便利に!北信濃の「小京都」飯山の町めぐり

更新日:2014/08/01 19:44

島崎藤村が「雪国の小京都」と名付けた北信濃の飯山。映画「釈迦堂だより」の舞台ともなり、都会に疲れた人たちを癒す自然と「ひと」がある。2015年3月には、「長野新幹線」が、「北陸新幹線」と名を変え、新幹線は北陸・金沢まで伸びる。その長野からワンステップ、次に停車するのが飯山だ。首都圏からの距離も格段にせばまる。そんな町を、歩いてみよう。

飾り気ない正受庵 釈迦堂だよりロケも

飾り気ない正受庵 釈迦堂だよりロケも
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飯山は、飯山城址を中心とした城下町だが、お寺が20余あることから「寺の町」としても知られ、「雪国の小京都」とも呼ばれる。軒を連ねるように西の山沿いに立ち並ぶ寺を、歩いて巡るのに便利な「寺めぐり遊歩道」が整備されている。

その西端、やや離れた所にあるのが正受庵だ。「釈迦堂だより」のロケも行われ、最も人気がある。禅宗の一つ、臨済宗の中興の祖と言われる白隠和尚が修行時代、ここを訪れた。寺の住職で「正受老人」と呼ばれた道鏡恵瑞禅師は白隠の「慢心」を見抜き、坂で白隠を蹴落した。そんなエピソードが残る「白隠落としの坂」が入口にある。

坂を登ると、飾り気のない単層、寄棟作りの茅葺きの庵が現れる。間口が6間、奥行きは4間半という飾り気のない小さな庵。東から南の面にかけて濡れ縁がめぐらされ、仏間に収められた仏壇が拝見できる。春はヤマブキの黄色が掃き清められた庭を明るく染め、秋には紅葉が映える。

「寺めぐり歩道」へ戻ろう。遊歩道沿いには9つの寺が並ぶ。観光協会が用意している寺めぐりの「スタンプオリエンテーリング」は、このほかの20余りの寺社も含め、用意されたスタンプを10以上集めると、その名も「極楽浄土ハッピーパスポート」が駅の観光案内所か伝統産業会館でもらえる(スタンプの台紙は1冊200円)。寺を巡ると、それぞれの寺社の歴史や訪れた文人・墨客の足跡も知れる。

一本スキーの像が立つ明専寺 レルヒ直伝を伝えた住職

一本スキーの像が立つ明専寺 レルヒ直伝を伝えた住職
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その中の一つ妙専寺の境内には、一本スキーを片手に立つ軍服姿の像が目をひく。

像は、寺の第17代の住職で、市川達譲師。明治の末、上越高田第13連隊で行われたスキー訓練に参加した。旧制の長野県立長野中学飯山分校(後に飯山中学校、現飯山北高校)の嘱託教授兼舎監取扱いも務めていたところから、スキー術を持ち帰って生徒たちを通じて、「長野にスキー術を普及させた」と顕彰している。日本にスキーをもたらしたレルヒ少佐から直に薫陶を受けた住職、36歳の時だったという。

豪雪地帯の飯山、実用にも、さらにスキーの五輪選手も輩出している。

なんと金ピカのトイレ 仏壇金箔張りの伝統技術

なんと金ピカのトイレ 仏壇金箔張りの伝統技術
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遊歩道の中ほどで、もう一つびっくり。
お寺の間にある「お休み処 奥信濃」ともある「展示試作館」のトイレのこと。トイレの内部が金箔張りになっている。

「試作館」は、地元の伝統産業の仏壇や福山和紙などを展示、無料休憩所となっているのだが、この金箔張り、仏壇の宮殿部分に貼っていく技法のひとつなのだとか。

それにしても便器の周りも黄金色なのである。黄金の茶室に入った秀吉の気分だ。入口に注意書きがある。「金箔は大変やわらかい物です。ツメなどをたてません様に」。

雁木のある町並み 1ブロックすべてが仏壇屋さん

雁木のある町並み 1ブロックすべてが仏壇屋さん
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お寺の並ぶ遊歩道から一筋、飯山街道へ出る。
「雁木のある仏壇具街」の街並みだ。

雁木は、冬季に雪積が身の丈を超す雪国の象徴。「雪よけの屋根」で、日本のアーケード。肝を抜かれるのは、1ブロック約300mに立ち並ぶ11店のいずれもが仏具屋さんであることだ。

よく共存して永らえていることも驚きだ。聞けば、それぞれの仏壇屋さん、仏壇を売るだけではない、みな店の裏で仏壇を作っている。年間に1000本の仏壇が生産され、関係者は150人に及ぶというから、人口2万5000人の飯山市のなかでは重要な伝統産業ということになる。

飯山仏壇の特徴は、良質な木材を惜しみなく使っていることから重いが、独特の技法がふんだんに盛り込まれ、木組みを全部ばらすことができる。だから拭き掃除ができ、美しく保てると同時に、持ち運びもできるのだという。

とはいっても、昔は大型仏壇の時代だったが、いまや散骨が話題になる時代、売れ筋も小型化しているという。住宅事情を考えれば時代の流れということだろう。

飯山城址からは千曲川から志賀高原が一望

飯山城址からは千曲川から志賀高原が一望
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雁木の街並みの入口、修景された町屋の一角には「高橋まゆみ人形館」がある。 

高橋まゆみの創作人形は、全国に展覧会を巡回し、里帰りして2010年に展示館がここに開かれた。菜の花畑を背景に野良で一休みするお百姓さん夫婦の姿など、その背景のなかに置かれた人形たちが、どこか懐かしい風景を思い出させる作風で、常時100体ほどの人形を、間近で見ることができ、リピーターも多い。

「高橋まゆみ人形館」
飯山市飯山2941-1
0269-67-0139
開館時間:午前9時─午後5時(12月から3月は10時─4時)
休館日:水曜と年末年始。
入館料:大人600円、小中学生400円


飯山線の踏切を越えて、少し歩けば飯山城跡。城は信玄・謙信の戦国時代、上杉謙信の信濃進攻の戦略拠点として、謙信・景勝の2代で山を削り築かれた平山城。市街は、その城下町だった。

城跡は現在、復元された門や土塁、石垣などに往時をしのぶことができるだけだ。天守跡に立つと、目の下に悠々と流れる千曲川、対岸の志賀高原へと連なる山々が一望でき、広々とした眺望が気持ちを寛げてくれる。

お腹がすいたら、鄙にも稀な鰻も。市役所横にある「うなぎの専門店 本多」。創業は明治37年、現在5代目の兄弟二人が中心に焼いている。うなぎ以外にメニューはない。ちょっとお高いが味も上々。地元だけでなく、遠方からの贔屓客も少なくない。

「うなぎの専門店 本多」
飯山市飯山1117
0269-62-2213
基本メニューは、うな重 (3,700円)、うな丼 (3,000円) の二種類
囲炉裏席など35席
定休日:木曜日
営業時間:午前11時から(ラスト・オーダー午後6時半)

終わりに

町歩きには2−3時間あれば良さそう。
「北陸新幹線の停車駅」として、足を少し伸ばせば、標高1382mの斑尾山周辺でトレッキングトレイルもある斑尾高原、スキーも楽しめる戸狩温泉やなべくら高原、さらに野沢温泉村など、自然が楽しめる「日本の原風景」も広がっている。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/06/17−2014/06/18 訪問

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