山門をくぐって宸殿(しんでん)を上がると、宸殿南側に庭園が広がります。ここで、ぼんやりと灯されるのがブルーの光。しかもゆっくりと点滅を繰り返すため、まるでホタルの光のよう。これは天空から宇宙へと広がっていく、本尊を守護する青不動をイメージしたもの。この庭を目の前にたたずむと、まるで催眠にでもかかったかのように、無心で見つめているあなたがいるはずです。
この青い光は毎年配置を変えているそう。そのため訪れては、昨年とまた違った庭園の表情を楽しむ人もいるのだとか。そんな楽しみかたもまた一興かもしれません。
ここまでずっと紅葉三昧だったなら、スッと気持ちが切り替わるような、幻想的な青。しばし時を忘れて、この小宇宙に包まれてみてください。
小宇宙で無心になった後は回廊を巡りましょう。秀吉寄進という「一文字手水鉢」を目にしながら、ライトアップされた狩野派の障壁画。やや霞んだ絵具がまた、光によって味わい深く感じます。さらに進んでいくと小御所へ。小御所からは相阿弥作「泉水庭」が眺められ、龍心池を中心とした池泉回遊式庭園が目の前に広がります。
この池を挟んだ向こう側に、30本の楓。その向こうに真っ白なライトに照らしだされた竹林が。柔らかな照明で浮かび上がる目の前の紅葉と、遠くから発せられるシャープな白い光との対比が見どころです。薄暗がりの中で、ハッとするような白さが目に飛び込み、未知との遭遇をほうふつとさせるのは、私だけでしょうか?過去と近未来が混とんしているような風景です。
小御所を後にしてまた回廊を歩き、しばらくすると小御所縁側から見た泉水庭へと下り立ちます。ここへ来ると先ほどの遠くから発せられていた、白い光は影をひそめ、紅葉と庭園、池を集中的に照らし出すライトアップに。本来ならもっともよく見る風景が、これまでの様々な色彩と照明のおかげで新鮮に感じられるはず。そうだ、紅葉を楽しみにきたんだった!
庭側から眺める小御所のたたずまいと、半円に反り返った石橋、池の水面に映る紅葉に、改めて紅葉の美しさを堪能します。さらに進んでいくと小堀遠州作「霧島の庭」が登場。それぞれの庭木や石材の配置、空気感や色彩バランスなどを、紅葉を通して見比べてみるのも面白そうですね。
庭園から石段を上る形で進むと、あっという間に竹林に包まれます。先ほどの小御所から見た白い光が、ここでは繊細な陰影を作り出しているのがわかるでしょう。青白く光る竹ですが、最初に見たホタルのようなブルーとはまた全然違ったもの。整然とした冷たさを感じさせたり、天高くそびえるその姿に、まるで守られているかのような安心感を覚えたり。
ここまで来るとまた急に紅葉の赤色が頭から掻き消え、ずっと前からこの竹林を見ていたような錯覚に陥るのです。石段を上がりきると日吉の社が、大きな鳥居であなたをお待ちかね。ここでようやく、フワフワしていた感覚が落ち着き、地に足をつけた気分。禊が行われたような、リフレッシュしたような、こんな紅葉鑑賞はふたつとありません。
青蓮院門跡と言えば、青い不動明王。そして炎を背負った「国宝・青不動明王」は熾盛光如来の化身。熾盛光如来とはその仏身の毛穴から熾盛の光明を発し、あらゆる災難をも退けるという如来様です。炎、そして熾盛の光明。青蓮院門跡はもともとこうして、まばゆいばかりの光と、深いご縁があるのです。それらを全身で体感できるのが、紅葉の時期のライトアップ。訪れてみると、きっと熾盛光如来の厳かな光明を感じるはずです。せっかく京都へ来たのですから、美しい紅葉を鑑賞するだけでなく、青蓮院門跡で神秘的な光と触れ合う体験はいかがでしょうか?
<夜の特別拝観>
2014年10月24日(金)〜12月23日(火)
時間 18:00〜22:00(21:30受付終了)
料金 個人:大人 800円・小中高生 400円
団体(30名以上):大人 700円・小中高生 300円
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