柴又駅を出ると、あの四角張ったカバンを持った寅さんの像が出迎えてくれて、「寅さんの地元に来たんだなあ」と実感する。参道には土産物店や飲食店が立ち並び、夏の日盛りにも関わらず通りを行く人々に気軽に声を掛けてくれる。気さくな人情味あふれる映画の雰囲気を味わってみたい。
寅さんグッズもいたるところにあり、キーホルダー、団扇、ティーポット、腹巻がプリントされたTシャツなど、寅さんの愉快なキャラを楽しもう。
他にも、川魚を食べさせてくれる店やイモのお菓子を売る店など、「帰りにどの店に寄ろうか」と迷ってしまう。
草だんごで有名なとらやさん。撮影で使われた当時のままの階段や、懐かしいポスターやサイン色紙など、店内は寅さん一色。また、とらや創業時に他店から寄せられたお祝いの名札も飾られていて、その中には魚河岸の店名が多いことがお店の歴史を感じさせる。
店内は広く二階客席もあるので、並んでいても少し待てば入れる。
祀られている仏様が寺の通称になっているわけだが、それには面白い由来がある。正式名称は経栄山題経寺(きょうえいざん だいきょうじ)という日蓮宗の寺院。
「帝釈天」は仏教の守護神、天の一つで、寺院の名称ではない。それが帝釈天といえば柴又と言われるほど有名になったのは、映画の影響も大きいが、始まりは江戸時代だ。
9世住職日敬(にっきょう)が「帝釈天の板本尊」を背負って江戸の町を歩き天明の大飢饉に苦しむ人たちを救済してまわった。これが柴又帝釈天への信仰につながり、この頃から門前町が形成されたという。
板本尊というのは板に描いた帝釈天の像で、日蓮上人親刻との伝承がある。
しかし、実はこの板本尊は題経寺の本尊ではない。本尊は帝釈堂に向かって右側に建つ本堂にある大曼荼羅だ。さらに、この寺は柴又七福神の毘沙門天でもあるという。もちろん帝釈天と毘沙門天は別のもの。
庶民に親しまれるお寺ならではの「複雑さ」が面白い。
本堂と帝釈堂にお参りしたあとは、彫刻ギャラリーへ行ってみよう。
渡り廊下には、炎天下の東京でも涼しい風が吹き抜けて気持ち良い。
昔の日本家屋には必ずあった欄間彫刻がこの渡り廊下にも配されていて、一つ一つ作品タイトルと作者名が記されている。このように彫刻ギャラリー以外にも随所に木彫りが施されているので見逃さないように。また、上の写真をよく見ていただくとお分かりかと思うが、この渡り廊下の床は長い板がたったの6枚しかはられていない!素足で歩いて木の優しさと強さを感じてみよう。
帝釈堂内殿の外壁は法華経の説話などを顕す浮き彫りが施されていて、彫刻ギャラリーとなっている。外壁全体が浮き彫りなので、その大迫力には圧倒される。平面を彫っているにもかかわらず、この奥行き感は見事。
法華経絵巻の他に上層には干支・千羽鶴が、下層には花鳥・亀が彫られている。大正11年から昭和9年にかけて当時の名工たちにより制作された。
浮き彫りを保護するために内殿全体をガラスの壁で囲んでいて、ガラスの内側に設置された上下二層の回廊から閲覧する。手を伸ばせば触れるほど間近に鑑賞することができ、写真撮影も自由とのこと。
彫刻ギャラリーは有料なので見ずに帰ってしまう人も多く、もったいない。
彫刻ギャラリーの入場券で庭園も見学でき、庭園には無料のお茶サービスがあるので、休憩を兼ねてゆっくり鑑賞しよう。
名所の多い東京都内でも一際庶民的な帝釈天界隈。時間が許せば隣接の山本亭、寅さん記念館にも足を延ばしてみてはいかがだろう。
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(2024/11/4更新)
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