新興住宅地に国宝とはさすが奈良!富雄川沿いの古刹・長弓寺

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新興住宅地に国宝とはさすが奈良!富雄川沿いの古刹・長弓寺

新興住宅地に国宝とはさすが奈良!富雄川沿いの古刹・長弓寺

更新日:2014/08/20 17:42

乾口 達司のプロフィール写真 乾口 達司 著述業/日本近代文学会・昭和文学会・日本文学協会会員

奈良県の北西部を北から南に向って流れる富雄川沿いには、大阪のベッドタウンとも称される大規模な新興住宅地が広がっています。一見、そんな新しい住宅地のなかに古いものなど何もないかと思い込んでしまいがちですが、歴史の宝庫・奈良ではそれは偏見そのもの。住宅地の一角には国宝の本堂を擁する古刹・長弓寺が残されており、富雄川沿いの豊かな歴史をいまに伝えています。今回は長弓寺の歴史とその魅力をご紹介しましよう。

創建は奈良時代!鎌倉時代に再建された国宝の本堂

創建は奈良時代!鎌倉時代に再建された国宝の本堂

写真:乾口 達司

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寺伝によると、長弓寺の創建は奈良時代。当地をおさめていた小野真弓長弓(おののまゆみたけゆみ)とその子息・長麿(ながまろ)が聖武天皇の従者として当地で狩りをおこなっていました。その折、茂みから怪しげな鳥が飛び出します。長麿はそれをとらえようとして矢を放ちますが、あろうことか、矢は長弓に突き刺さり、長弓は亡くなってしまいます。それにちなみ、長弓の死をいたんだ聖武天皇が行基に命じて仏堂を建てさせたのが、長弓寺のはじまりであるといわれています。以後、次第に伽藍の整備が進められますが、平安時代末期、火災により堂宇が焼失。その後も復興と兵火により荒廃が繰り返され、最盛期には20院も存在した塔頭も現在では薬師院・法華院・円生院・宝光院の4院を残すばかりとなっています。

写真は境内の奥にたたずむ本堂。昭和27年、国宝に指定されました。現在の本堂は鎌倉時代中期の弘安2年(1279)に再建されたもの。正面に向拝のついた入母屋造・檜皮葺の大型仏堂で、堂内は外陣と内陣とが格子戸および菱欄間で区分された密教系の本堂の形態をとっています。内陣に安置された厨子には本尊の十一面観音菩薩立像(国の重要文化財)がおさめられていますが、正月三ケ日の修正会の期間中などをのぞけば、普段は堂内に立ち入ることは出来ません。ただし、塔頭に事前に連絡を入れておくと堂内まで案内していただけるので、拝観の際にはあらかじめ塔頭に連絡しておくことをお勧めします。

細部をじっくり観察しよう!「新和様」としての建築意匠の数々

細部をじっくり観察しよう!「新和様」としての建築意匠の数々

写真:乾口 達司

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本堂にお参りしたら、そのすぐれた建築意匠を堪能しましょう。古建築の世界では、長弓寺の本堂は「新和様」の代表的な建造物とされています。「新和様」とは、日本古来の建築様式である「和様」に、鎌倉時代、中国から伝来して来た「大仏様」(天竺様)の意匠を取り連れた折衷式の建築様式のこと。

写真は正面に向って右側の軒下を撮影した一枚ですが、写真の中央部、木材が交錯する木組みの部分に見られる頭貫の木鼻などには「大仏様」の意匠が見られ、長弓寺の本堂が、当時、最先端の建築様式を積極的に取り込んでいたことがうかがえます。どのあたりにどのような「新和様」が見られるのか、古建築関係の図書などを手引きにして、ご自身の目でお確かめください。

こちらにも注目!蟇股の繊細で優美な意匠

こちらにも注目!蟇股の繊細で優美な意匠

写真:乾口 達司

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蟇股(かえるまた)は建築部材の一つ。カエルが股を広げているように見えることから、その名がつけられました。建築技法の発展にともない、後世、蟇股にはさまざまな装飾がほどこされるようになります。左甚五郎の作と伝わる日光東照宮の「眠り猫」の意匠は、その代表格といえるでしょう。長弓寺の本堂にもたんさんの蟇股が取りつけられていますが、その内側に花などが彫り込まれていることに注目してください。その意匠は精巧であり、当時、建築にたずさわった技術者たちの芸術性の高さがうかがえます。

塔頭にもお参りしよう!薬師院前の仏堂に安置された毘沙門天立像

塔頭にもお参りしよう!薬師院前の仏堂に安置された毘沙門天立像

写真:乾口 達司

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周囲に点在する塔頭にもお参りしましょう。写真は塔頭の一つ・薬師院前の仏堂に安置されている毘沙門天立像。それぞれの塔頭ではご朱印もいただけますので、ご朱印を集めている方は、ぜひ、お寺の方に声をかけてみましょう。ちなみに、薬師院では予約をすれば、精進料理(お斎)もいただけます。

境内に神社!?長弓寺の鎮守・伊弉諾神社

境内に神社!?長弓寺の鎮守・伊弉諾神社

写真:乾口 達司

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境内でもう一ヶ所注目したいのは、写真の神社。長弓寺の鎮守社として境内に鎮座している伊弉諾神社(いざなぎじんじゃ)です。富雄川沿いから境内に入ると、参道に大きな石の鳥居が立っているのが見えるでしょう。これは伊弉諾神社の鳥居。長弓寺に参詣の折には、神仏習合の名残りを残す伊弉諾神社にもあわせてお参りしてください。

おわりに

いかがでしたか?ほかにも、境内には数々の石仏や東京の高輪プリンスホテルに移築された三重塔の跡地など、見所が満載。新興住宅地というイメージの強い当地が実はいかに古い歴史を有していたか、長弓寺に参詣することによって、ぜひ、認識を新たにしていただきたいものです。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2014/06/28 訪問

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