「おわら風の盆」越中八尾に伝わる民謡行事 一度見て聴けば虜になる日本の祭り

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「おわら風の盆」越中八尾に伝わる民謡行事 一度見て聴けば虜になる日本の祭り

「おわら風の盆」越中八尾に伝わる民謡行事 一度見て聴けば虜になる日本の祭り

更新日:2017/08/09 11:58

塚本 隆司のプロフィール写真 塚本 隆司 ぼっち旅ライター

これほど心に響く行事はない。富山県富山市八尾町(やつおまち)で開かれる「おわら風の盆」。山里の閑かな町で3日3晩繰り広げられる民謡行事だ。静寂の中に哀愁漂う胡弓の音色が心に響く。一度経験すると虜になってしまう行事をご紹介したい。

少々難易度が高い旅かも知れない。風情を壊さぬよう心がけてくださる人だけに行ってもらいたい。

大切にしたい日本の祭り、越中八尾「おわら風の盆」

大切にしたい日本の祭り、越中八尾「おわら風の盆」

写真:塚本 隆司

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八つの山の尾根に開かれた町という由来を持つ「富山市八尾町(やつおまち)」。
坂の町とも呼ばれ、飛騨の山々へと通じる街道沿いの閑かな町だ。ここで9月1日から3日3晩、唄と踊りに酔いしれる民謡行事「おわら風の盆」がある。

この行事は町の全てが会場だ。一部の施設や演舞会場を利用しない限り入場料や観覧料などは無料。開催期間中は、町の人の約1/3が囃子や踊りに、あと1/3が運営や警備の仕事に、残りの1/3が家を守るといった具合に、住民全員が行事に携わっていると聞く。観光客は町の行事を“勝手に見させてもらっている”ということを忘れないで欲しい。

この行事の醍醐味は、静寂の中で「静かに見て、静かに聴くこと」。カメラのフラッシュやAF補助光(暗いところでオートフォーカスを使うと照射される赤や緑の光)は行事の風情を台無しにしてしまうので使わないように。設定方法が分からないなら、現地にボランティアで設定を変更してくれる人がいるので頼るとよい。踊りの妨げになる強引な撮影も謹しんで欲しい。

「おわら風の盆」の魅力

「おわら風の盆」の魅力

写真:塚本 隆司

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起源は元禄15(1702)年にさかのぼるが、300年以上も前の踊りや唄がそのまま今に引き継がれているわけではない。八尾の人々の思いが、親から子へと延々と受け継がれながら形を変えてきた。気品に溢れる優美な「おわら踊り」と、情緒的で哀愁漂う唄と音色の「おわら節」として、洗練されながら現在に至っている。

魅力は、地方(じかた)と呼ばれる囃子方と踊り手が作り出す世界観。11の支部がそれぞれ競い合うかのように、特徴をだしながら衣装や踊りを極めている。地方の扱う楽器も衣装も大切に扱われ継承されてきた高価な物。そのため、少しの雨でも行事は中断される。

「おわら風の盆」が開催される9月1日から3日は、二百十日といわれる風の厄日で雨が降りやすい。台風も多い時期であり、行事そのものに風神鎮魂の意も込められている。せっかく行ったのに踊りが見られないなんてこともあるのが「おわら風の盆」なのだ。雨に降られたなら、曳山展示館などのステージで開かれるおわら踊りを楽しもう。

「おわら風の盆」の魅力

写真:塚本 隆司

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写真にある編笠を深く被るスタイルは、照れ隠しが目的の手ぬぐいから始まったそうだ。結果狭い視界から僅かに見える手先に意識を集中することとなり、腰で踊るという艶かしさに自然でしなやかな美しい身振りが加わり、幻想的な舞姿が出来上がったそうだ。

見どころは「町流し」、そしてクライマックス「総踊り」

見どころは「町流し」、そしてクライマックス「総踊り」

写真:塚本 隆司

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JR越中八尾駅や会場各地で配られる公式ガイドブックに、各支部のスケジュールが書かれている。坂の町なのと大勢の観光客がいるので移動はしづらい。いくつかの支部に絞って、町流しを待ち受けるように観覧するのがおすすめだ。

見どころは「町流し」、そしてクライマックス「総踊り」

写真:塚本 隆司

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「町流し」とは、地方の演奏にあわせて踊り手が町内を練り歩く姿をいう。地方を中心にして周りを踊り手が踊る姿を「輪踊り」、聞名寺の境内や特設ステージで行われる「舞台踊り」も見どころ。名所 “おたや階段”をひな壇式の観客席にみたてた輪踊りや舞台踊りも見応えがある。

見どころは「町流し」、そしてクライマックス「総踊り」

写真:塚本 隆司

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全ての行事を締めくくるのは「総踊り」。大提灯を囲み観客も一緒になって踊ることができる。見ているだけでは物足りない。一緒になって踊ってこそ一体感を感じることが出来るので、踊りに自信のない方でも輪に加わればなんとかなるものだ。

「おわら風の盆」の余韻を楽しむ「夜流し」

「おわら風の盆」の余韻を楽しむ「夜流し」

写真:塚本 隆司

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総踊りをもって行事としての「おわら風の盆」は終わる。しかし、これで終わりではない。
深夜に行われる「夜流し」が最も情緒的で美しい。幻想的で“静かに見て、静かに聞く”この幽玄の世界に魅せられると虜になってしまう。

深夜の静かな八尾の町なかに立っていると、遠くから三味線と胡弓の哀愁漂う音色が聞えてくる。おわら節の唄声が徐々に近づいてくる。目を閉じれば、何度も見て一緒に踊った風景が頭に浮かぶ。音色がさらに近づいてくると、通りの先に人影が見えてくる。叙情的で幻想的な世界に身をゆだねているこの時間が、たまらなく好きになる。通り過ぎてゆく踊りの列に誰とはなく従ってゆく。静かに足音さえも立てないようについていくのだ。

「おわら風の盆」の余韻を楽しむ「夜流し」

写真:塚本 隆司

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9月4日、「おわら風の盆」が終わりを迎える朝、空が徐々に白んでくると最後の輪踊りが始まる。この時の踊り手は編笠を外し、地方も笑顔で奏でている。衣装を着ていない町の人も輪に加わり、最後の踊りを心から愉しんでいるのがよくわかる。その姿は感動的で、最も心に染みる時間かも知れない。

越中八尾という町

越中八尾という町

写真:塚本 隆司

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「おわら風の盆」が開かれるこの三日間の盛り上がりは大変なものだ。だが、八尾の町はそれだけではない。

日本の道百選に選ばれた「諏訪本町通り」、日本の音風景百選に選ばれた「エンナカの水音(主に冬の雪流しに使われる水路)」、千本格子の古い町並み、八尾おわら資料館など観光地としても見所満載の町である。

越中八尾という町

写真:塚本 隆司

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「おわら風の盆」の前夜祭は8月20日から始まる。旅行会社が企画する「月見のおわら」、5月3日に行われる「越中八尾曳山祭」など「おわら風の盆」以外にも楽しめる行事がある。町並みを見て歩くだけでも価値がある場所なのだ。

「おわら風の盆」を楽しむために

冒頭に難易度の高い旅と明記した理由が、おわかりいただけただろうか?
深夜まで行事を楽しむ宿泊をしない旅なのだ。もしかすると雨で何も見られない中、宿もなく過ごすことになる。誰もが気軽には行ける旅ではない。町内で宿を確保できれば問題ないのだが、なかなか予約することすら難しいのが実情だ。
それでも訪れてみる価値のある「おわら風の盆」。マナーを守って是非楽しんで欲しい。

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/09/01−2013/09/04 訪問

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