おわら風の盆 一度は行きたい!富山を代表する越中八尾の民謡行事

おわら風の盆 一度は行きたい!富山を代表する越中八尾の民謡行事

更新日:2019/07/16 16:12

塚本 隆司のプロフィール写真 塚本 隆司 ぼっち旅ライター
「おわら風の盆」ほど心に響く行事はない。富山県富山市八尾町(やつおまち)で9月1日から3日3晩繰り広げられる民謡行事だ。
静寂の中に哀愁漂う胡弓の音色と唄の「おわら節」、気品あふれる優美な「おわら踊り」。心に響く幻想的な時間は、他では体験できない。8月20日からの前夜祭もいいが、おわら風の盆の3日間は格別だ。
一度は行きたい富山の民謡行事「越中八尾 おわら風の盆」を紹介したい。

「おわら風の盆」大切にしたい日本の祭り

「おわら風の盆」大切にしたい日本の祭り

写真:塚本 隆司

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八つの山の尾根に開かれた町という由来を持つ「富山市八尾町(やつおまち)」。
坂の町とも呼ばれ、飛騨の山々へと通じる街道沿いの閑かな町だ。ここで9月1日から3日3晩、唄と踊りに酔いしれる民謡行事「おわら風の盆」がある。

この行事は町の全てが会場だ。一部の施設や演舞会場を利用しない限り入場料や観覧料などは無料。開催期間中は、町の人の約1/3が囃子や踊りに、あと1/3が運営や警備の仕事に、残りの1/3が家を守るといった具合に、住民全員が行事に携わっていると聞く。観光客は町の行事を「勝手に見させてもらっている」ことに感謝したい。

この行事の醍醐味は、静寂の中で「静かに見て、静かに聴くこと」。カメラのフラッシュやAF補助光(暗いところでオートフォーカスを使うと照射される赤や緑の光)は行事の風情を台無しにしてしまうので使わないように。設定方法が分からないなら、現地にボランティアで設定を変更してくれる人がいるので頼るとよい。踊りの妨げになる強引な撮影も謹しんで欲しい。

起源は元禄時代「おわら風の盆」の魅力

起源は元禄時代「おわら風の盆」の魅力

写真:塚本 隆司

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「おわら風の盆」が開催される9月1日から3日は、二百十日といわれる風の厄日で雨が降りやすい。台風も多い時期であり、行事そのものに風神鎮魂の意が込められている。
起源は元禄15(1702)年にさかのぼるが、300年以上も前の踊りや唄がそのまま今に引き継がれているわけではない。八尾の人々の思いが、親から子へと延々と受け継がれ形を変えてきた。気品にあふれた優美な「おわら踊り」と、情緒的で哀愁漂う唄と音色の「おわら節」として、洗練されながら現在に至っている。

魅力は、地方(じかた)と呼ばれる囃子方と踊り手が作り出す世界観。11の支部にそれぞれ特徴があり、衣装や踊りを極めている。地方の扱う楽器も衣装も大切に扱われ継承されてきた高価な物。そのため、少しの雨でも行事は中断される。

起源は元禄時代「おわら風の盆」の魅力

写真:塚本 隆司

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写真にある編笠を深く被るスタイルは、照れ隠しが目的の手ぬぐいから始まった。狭い視界から僅かに見える手先に意識を集中することとなり、腰で踊るという艶かしさに自然でしなやかな美しい身振りが加わり、幻想的な舞姿が出来上がった。

見どころは「町流し」、クライマックスは「総踊り」

見どころは「町流し」、クライマックスは「総踊り」

写真:塚本 隆司

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JR越中八尾駅や会場各地で配られる公式ガイドブックに、各支部のスケジュールが書かれている。坂の町なのと大勢の観光客がいるので移動はしづらい。いくつかの支部に絞って「町流し」を待ち受けるように観覧するのがおすすめだ。

見どころは「町流し」、クライマックスは「総踊り」

写真:塚本 隆司

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「町流し」とは、地方の演奏にあわせて踊り手が町内を練り歩く姿。地方を中心に踊り手が周囲を踊る姿を「輪踊り」、聞名寺の境内や特設ステージの踊りを「舞台踊り」という。名所「おたや階段」をひな壇式の観客席にみたてた輪踊りや舞台踊りも見応えがある。

見どころは「町流し」、クライマックスは「総踊り」

写真:塚本 隆司

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全ての行事の締めくくりは「総踊り」。大提灯を囲み観客も一緒になって踊る。踊りに自信のない人も輪に加われば、一体感に包まれなんとかなるものだ。

「おわら風の盆」の余韻を楽しむ「夜流し」

総踊りをもって行事としての「おわら風の盆」は終わる。しかし、これで終わりではない。
深夜に行われる「夜流し」が最も情緒的で美しい。幻想的で「静かに見て、静かに聴く」この幽玄の世界に魅せられると虜になってしまう。

「おわら風の盆」の余韻を楽しむ「夜流し」

写真:塚本 隆司

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深夜の静かな八尾の町の通りで待っていると、遠くから三味線と胡弓の哀愁漂う音色とおわら節の唄声が徐々に近づいてくる。踊る人影が見えてくる頃の叙情的で幻想的な世界は、たまらなく美しい。通り過ぎゆく踊りの列に、誰とはなく静かに足音さえも立てないようについていく。

9月4日、「おわら風の盆」が終わりを迎える朝、空が徐々に白んでくると最後の輪踊りが始まる。この時の踊り手は編笠を外し、地方も笑顔で奏でている。衣装を着ていない町の人も輪に加わり、最後の踊りを心から愉しみ、名残惜しんでいるのがよくわかる。その姿は感動的で、最も心に染みる時間かも知れない。

「おわら風の盆」の余韻を楽しむ「夜流し」

写真:塚本 隆司

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日本の風情が残る越中八尾の町並み

日本の風情が残る越中八尾の町並み

写真:塚本 隆司

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「おわら風の盆」が開かれるこの三日間の盛り上がりは大変なものだ。だが、八尾の町はそれだけではない。

日本の道百選に選ばれた「諏訪本町通り」、日本の音風景百選に選ばれた「エンナカの水音(主に冬の雪流しに使われる水路)」、千本格子の古い町並み、八尾おわら資料館など観光地としても見所満載の町である。

日本の風情が残る越中八尾の町並み

写真:塚本 隆司

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「おわら風の盆」の前夜祭は8月20日から始まる。旅行会社が企画する「月見のおわら」、5月3日に行われる「越中八尾曳山祭」など「おわら風の盆」以外にも楽しめる行事がある。町並みを見て歩くだけでも価値がある場所なのだ。

深夜まで行事を楽しむ「越中八尾 おわら風の盆」。雨で何も見られない中、宿もなく過ごすことになるかもしれない。それでも夜通し楽しむ価値のある行事だ。マナーを守って是非楽しんで欲しい。

越中八尾 おわら風の盆の基本情報

住所:富山県富山市八尾町
アクセス:公共交通機関の利用を推奨、電車 JR富山駅からJR八尾駅まで約25分

おわら風の盆前夜祭
開催期間:8月20日〜8月30日

おわら風の盆
開催期間:9月1日〜9月3日
輪踊り・町流し時間:
9月1日/2日 15時〜23時(但し、17時〜19時は夕食・休憩のため踊りはありません)
9月3日 19時〜23時(19時以前は、一切踊りはありません)

2019年7月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/09/01−2013/09/04 訪問

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