生きものを「主役」とする公園。埼玉県・北本自然観察公園へ

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生きものを「主役」とする公園。埼玉県・北本自然観察公園へ

生きものを「主役」とする公園。埼玉県・北本自然観察公園へ

更新日:2014/08/31 13:54

鷹野 圭のプロフィール写真 鷹野 圭 首都圏自然ライター

自然に憧れる都会人の気持ちを反映してか、名前に「自然」と入る公園は首都圏でも多く見かけます。近年では生物多様性の重要性を踏まえ、生きものの棲み家になる草むらや池などを保全した公園も増えました。そうした中で自然への配慮……あるいは敬意という点において関東でも特に優秀なのが、埼玉県北本市の北本自然観察公園。丁寧に保全された自然環境には数え切れないほど多彩な生きものが暮らし、豊かな生態系を築いています。

豊かな武蔵野の森林に囲まれた、水と緑の自然公園です

豊かな武蔵野の森林に囲まれた、水と緑の自然公園です

写真:鷹野 圭

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北本自然観察公園は深い森をベースとして、その中に池や湿地帯などの水場や広大なヨシ原が広がる造りとなっています。園路は極力舗装を控えめにしており、それこそかつての里山の小道を髣髴とさせるナチュラルな雰囲気。道端の草むらに目を向ければ、様々なバッタやチョウ、それらを狙うカナヘビなどが姿を見せてくれることでしょう。

一方で徒歩では歩けない湿地帯にはしっかり木道が通っており、安定した足場からじっくり観察を楽しむことができます。水辺ではトンボが飛び交い、ニホンアカガエルなどの両生類や、近年では数の少なくなったメダカも暮らしています。自然豊かゆえに時折ヘビなども姿を見せますが、手を出さなければ自分から襲ってくることはありませんのでそっとしておきましょう。

写真は、自然学習センターに隣接する観察池。年間を通じてアオサギやカイツブリなどの鳥が観察できます。ここの一角はとりわけ視界が開けており、バードウォッチングには格好のスポット。上空には稀にオオタカなどの猛禽類が姿を現すこともあります。

食物連鎖の最下層から最上位まで、多種多様な生きものに遭遇できる、自然観察には最適の公園です。

自然学習センターには、生きもの観察に役立つ情報がいっぱい

自然学習センターには、生きもの観察に役立つ情報がいっぱい

写真:鷹野 圭

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北本自然観察公園は指定管理者制度をとっており、現在は(財)埼玉県生態系保護協会が管理を請け負っています。同協会は埼玉の生態系保全に関する調査やシンクタンクとしての役割を担っている、言うなれば生物多様性の専門機関。それだけに、職員さんが常駐している自然学習センターには有益な情報が満載です。特に、県内の生態系の現状や今後の対策の在り方など、専門的な内容の展示が多く、なかなか良い勉強になることでしょう。

バードウォッチングをされたい方のために、管内では双眼鏡の貸し出しを行っています。他には映像による公園の紹介や、園内ひいては埼玉県全体の生物多様性に関するポスターや標本展示などがあり、公園を巡る前にまずここで情報収集しておくと便利です。また、園内で発見されたピンク色のシマヘビ(アルビノ個体)が飼育展示されており、人気者となっています。かなり珍しい種ですので是非一度ご覧ください。

園路の目の前に、ハチのホテル?

園路の目の前に、ハチのホテル?

写真:鷹野 圭

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公園入口から程近く、自然観察センターの目の前には三角屋根の小さな小屋のようなものがあります。中には竹筒がぎっしり敷き詰められていますが、よく見るといくつか土で栓がされていたり、藁が詰め込まれたものが確認できますね。実はこれらの筒はハチの巣として利用されているのです。藁の方はアナバチ、土の方はドロバチというハチの仲間がそれぞれ巣を作っており、幼虫はこの中で成長するのです。すなわち、ハチが繁殖するための場所を、人の手で作っているということ。ここはハチ専用の人工の宿屋なのです。

ハチというと危険なイメージが先行しがちですが、このハチ宿を利用するハチはいずれも大人しく、余程のことがない限り人を刺すことはありません。何より彼らもまた自然の一部。その暮らしぶりを間近で観察することができるこの場所は、ハチに対する認識を一変させる貴重なスポットといえるでしょう。

この他にも、落ち葉を集めたり木の枝を積み重ねたりして、センター前には昆虫や小動物の暮らす場所を積極的に創出しています。限られたスペースですが、じっくり調べてみると予想以上に多様な生きものに遭遇できるはずです。

スズメバチは駆除するのでなく「近付かない」のが公園の方針

スズメバチは駆除するのでなく「近付かない」のが公園の方針

写真:鷹野 圭

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大人しいドロバチなどとは違い、スズメバチはご存知の通り大変危険な昆虫。最近は温暖化の影響か数が増えているらしく、ニュースでも頻繁に報道されていますね。

多くの場合、一般来園者が使用するスペースに作られたハチの巣は、専門業者などに依頼して撤去してもらうものです。しかしここ北本自然観察公園では、危険なスズメバチであってもむやみやたらに害虫として駆除はせず、あくまで「生態系を担う一部」として共存する方法を考えるのが基本です。もし園内に巣が見つかった際には、写真のようにロープを張り、看板などを設置して注意を促します。時には園路を一部立入禁止にして迂回路を案内することも。

ハチに限ったことではないのですが、ここではあくまで公園内に暮らす動植物が主役であり、公園利用者は彼らの棲み家を「利用させてもらう」というのが基本方針です。利用者にとっては一部不便に感じることがあるかもしれませんが、こうした徹底的な生きもの中心の方針があるからこそ、健全で生物多様性に優れた環境が維持されているのもまた事実。これほど生きもの観察に適した環境もそうそうないものと思われます。純度の高い自然を、「住人」達に敬意を払いながら覗かせてもらいましょう。

童謡そのまま! 水色メガネのトンボ

童謡そのまま! 水色メガネのトンボ

写真:鷹野 圭

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有名な童謡の一説そのままに、まるで空を写したかのような鮮やかなブルーの目を持つトンボ……これはマルタンヤンマといい、首都圏ではかなり稀な昆虫の一種です。恵まれた環境を維持し続けている北本自然観察公園では、こうした珍しい生きものに出会えるチャンスも結構あります。特にヨシ原を中心として湿地帯が多いため、トンボやカエルにとってはまさに楽園といえるでしょう。

このほか、生態系の頂点に君臨するタカやキツネ、タヌキなどの観察記録も多くあります。園内をくまなくチェックしてみると、思いがけない出会いがあるかも……?

本物の自然を体感できる、稀有な公園です

里山景観や森林などを取り入れた公園は、近年の自然回帰を望む声の高まりからか確実に増えています。ではその次の段階、自然の純度という点ではどうでしょうか? 外来種の侵入をそのままにしてしまったり、園芸植物だけの花壇を「緑がいっぱい」と見做してしまったり……とりわけ首都圏においては自然公園のクオリティに全体的に難があるように思えてなりません。

そうした中でここ北本自然観察公園は、生態系のプロ集団が管理を担い、人の過度な干渉や立ち入りを防ぐことで、一際質の高い自然を守り続けている貴重な公園です。制限があることで不便さを感じることもあるかもしれませんが、そうした来園者の協力が純度の高い自然公園を支える重要なコンテンツになっているのです。

真の意味で自然豊かなスポットを体感したいなら、ぜひ一度足を運んでみてくださいね!


【アクセス】
住所/埼玉県北本市荒井5-200
JR高崎線「北本駅」西口よりバスで約15分(バス停の目の前が公園です)

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掲載内容は執筆時点のものです。 2013/08/31 訪問

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