手作りせんべいのお店「象屋元蔵(きさやもとぞう)」は、JR高松駅より南に約2キロに位置、田町商店街南端スグにあります。お店の前には手書きの茶色い看板と立て看板があるのみで、車なら見過ごしてしまうほど、飾りっ気のない店頭です。
しかし店内に入るとその景色は一変。
昔なつかしい年季の入った調度品の茶色が目に飛び込んで来ます。調度品は大正時代以降、実際に使われていたもの。一瞬「何屋さん?」か分からないくらいの“おしゃれで粋な”演出ですが、実はこの風景こそ昔のせんべい屋さんそのままの姿を再現しているのです。
さて屋号である「象屋元蔵」の由来は、実在したご先祖様のお名前を拝借したのだとか。「ご先祖様に見守られてせんべい屋をやっています」と笑いながら話すご主人でした。
なお店頭の茶色の看板には、こうとだけ書いてあります。
讃岐・高松
おととせんべい
象屋元蔵(きさやもとぞう)
営業時間:十時三十分〜十七時三十分
定休日:毎週月曜
「おととせんべい」は、大正時代に高松の数軒のお店が瀬戸内海で獲れる小魚をそのまませんべいに焼きあげたのがその起源ですが、手作りのために手間の掛かる商品は、いつの間にか機械式の大量生産品に押される形で生産が途絶えてしまいます。
一旦途絶えていた「手作りのおととせんべい」に再び光が当たるのは、平成になってから。それまでパン職人だったご主人は、パン作りと共通する“魂を込めて作れる”地元の名産品に魅力を感じて一念発起。試行錯誤を重ねながら今年で創業10年目を迎えます。
せんべい作りで最も神経を使う部分は焼きあげ工程で「薄焼きのせんべいを焦がさず程よい焼け色にする」時は、「誰とも話したくない」くらい真剣なんですね!
それではそのこだわりの手作りの工程を追いかけてみましょう!
まず魚はご主人が早朝の魚市場で仕入れ。
せんべいの大きさに合う小さめの魚を自ら選別します。選別された小魚は、加工場でウロコを取った後、ハラワタを除去、三枚におろして中骨までを一匹一匹丁寧に取り除きます。魚の種類によっては、小骨が残っているので、乾燥後さらに木槌でたたいてつぶしていきます。
下処理を終えた魚は写真のように乾燥工程へ移動。
乾燥工程で最も時間が掛かるのは「タコ」。乾燥には2〜3日(延べ10時間ほど)掛けてゆっくり乾燥させます。またタコが踊っているように見せるために乾燥前に指先で形を整えます。
この様に作業は気が遠くなるほど地味な仕事ですが、ご主人は「手間が掛かる仕事ほどやりがいを感じる」とのこと。さすが職人さんですね!
乾燥工程を経たおととは、焼きの工程へ。
写真は鉄板に生地を薄く広げてタコを乗せ、焼きあげる前のものですが、薄焼きせんべいを“程よい焼け色にする”ためには、魚の種類や大きさによって「微妙に違う焼き時間をいかに見極めるかが重要」と語るご主人。その日の気温や湿度によっても焼き方を変えているというから職人の世界は奥が深いのです!
仕上げはあぶりの工程です。
炭火で一枚一枚丁寧にあぶっていきます。焼き工程と同様に焦がさず波打たないようにそっとやさしくあぶるのには熟練の技が必要だとか・・。
このように手間ひま掛けて出来上がった手作りのおととせんべいは、機械式の大量生産品とは一線を画しているのです。
「ココのせんべいは、魚の風味豊かで昔なつかしい味やし、サクサク香ばしいけん、ウチの子どもが好きなんよ!このタコがええやろ?」と、たまたま来店中の常連さんも太鼓判!
試食用のせんべいを1枚食べてみるとサクサク感と魚の風味のほかに「ピリッ」と辛い感じがしたので聞いてみると、京都祇園の老舗・原了郭の一味を使用しているのだとか。
象屋元蔵の無添加手作りおととせんべいは、本店のほかにJR高松駅や高松空港、道の駅などでも販売されていますが、箱入り(詰め合わせ)販売であり、バラ売りはしていません。本店では写真のように魚の種類も豊富に揃い、1枚からでも買うことが可能。さらに運が良ければ「こわれもの」を定番品より安く手に入れることもできるのだとか!
ご主人は「わざわざ来店いただいて、“おししい”と喜んでもらえることがありがたくうれしいし、やりがいがあります!」と目を輝かせて話してくれました。
いかがでしたか?
小魚を使ったおととせんべいは、常時12種類ほどありますが、季節によって種類が少ない場合もあります。一番人気はやはり「タコ」。バラ買いができる本店にぜひ立ち寄ってみてください。お話し好きの店主さんや常連さんから“おととせんべい物語”を聞くのも楽しみのひとつとなるでしょう。
見た目にインパクトも有り、且つ軽いので、お土産にも丁度良いかもしれません。魚介類が豊富な瀬戸内らしいお菓子です。
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