バルーンツアーの始まりは、まだ日も明けやらぬ早朝から。あけぼのの頃を狙ってテイクオフするのは、ただご来光を拝みたいからという訳ではない。なにせ風という自然現象がその行程と安全を左右する気球のこと。夜明けの頃が、最も安定したフライトを期待できるのだ。
今回ご紹介するのは、この地のバルーンツアーでは大手老舗の「KAPADOKYA BALLOONS」のツアー。ホテルまで迎えに来てくれるバスに乗り込みオフィスへ。ここで搭乗の手続きをし用意された軽食を頂きながら、日本語で注意事項の説明がある。
どの注意も安全にツアーを楽しむために大切なことだが、忘れてはならないのが、ここできっちりトイレを済ましておかなくてはいけないということだ。今から向かうのは、見渡す限り丘と緩やかな起伏があるのみのだだっ広い草原。気球に乗り込んでしまえば到着するまで他に逃げ場もないバスケットの中。無事着陸したところでそこにはトイレなど望むべくもない。くれぐれもお気をつけ願いたい。
まず送風機で内部に空気を送り込み、続いてバーナーに点火される。十分に気球が膨らむと、いよいよ搭乗の合図がだされる。
乗るといっても扉は無く、つまるところは仕切りのついたただのかご。結構な高さの枠をよいしょと乗り越え、あたりを見渡すと頭上にはバーナー。操縦室はバスケットの一角が仕切られ、ガスボンベがいくつか置かれた残りのスペースにパイロットと助手兼案内係が各一名乗り込む。それ以外の所が乗客のスペースとなるのだが、座席は無く、周囲につかまるためのロープが張られているのみというシンプルさだ。
全員が乗り込むと、そのロープを使って着陸時の体勢と心得の講習。日本語ではないがちゃんと分かる様に説明してくれる。これをきっちりやらないと後で文字通り痛い目にあう。
離陸はあっけないほど静かでなめらか。見る間に地面が遠くなる。人の話し声と、ときおり高度調整のために開かれるバーナーの音だけが響くフライトは、エンジン音の響く飛行機では味わえない新鮮な感覚である。
離陸の感動にひたっていると、間もなく目の前に奇妙な世界が現れる。
波打つもの、白く輝くもの、深い陰影を見せるもの、ユニークでかわいいもの、優しげなもの、恐ろしげなもの。言葉では表現しきれない自然の造形物の数々だ。キノコ岩はもちろん代表的な奇岩であるが、ここカッパドキアの魅力はそれだけではないことを思い知るだろう。
それと、特筆すべきはパイロットの飛行技術の高さである。写真からも、この気球がどれほど岩と大地に接近しているかがお分かりかと思う。間近で見る奇岩群の姿は素晴らしい迫力で見る者の目を奪う。
また、周囲を飛行するいくつもの気球を眺めるのも楽しいものである。
この奇岩の地に人類が足跡を残したのは、最も古い記録では紀元前6世紀後半であるという。以後営々と続けられてきた人々の生活は、これらの岩肌に無数の穴を穿つこととなる。しかもこれらの中には、現在も実際に個人の住居として利用されているものも多数存在している。
我々の目には、遺跡であるのか、単なる廃墟か、現役の住宅なのか、ホテルなどの施設であるのか、なかなか判別しがたいのであるが、ともかく何世紀もの長い時をかけて大自然と人とが共に創り上げてきた造形美を味わって頂きたい。
いよいよ旅の終わりが近付く。バルーンはいよいよ低空を飛び、地上を駆けるサポートの自動車と連絡を取り合いながらランディングのポイントを決める。
そして乗務員の合図で講習の際に教えられた体勢をとり、着陸の運びとなる。
短い旅の終わり。一人ひとりの名が呼ばれフライト証明書が手渡され、ここでようやくスパークリングワインタイム。素晴らしい感動を共有したみんなとともに祝杯をあげ、ささやかな歓談の宴が開かれるのである。
オフィスでの朝食から、ランディング後の祝杯まで参加者を飽きさせない、見どころ楽しみどころがギッシリ詰まったツアーである。
しかし気象に左右されやすい乗りものゆえ、安全のために当日中止もままある話。どうしても乗りたい方は、リスクを避けるため、少なくとも二泊以上のカッパドキア滞在をお勧めする。今日がだめでも明日があるさの精神でゆったりと構えることが大切。早朝からのツアーなので、日中の他のツアーへの差しさわりも少ない。
そして、訪問する季節とツアー会社はくれぐれもよく吟味して。
ぜひとも安全第一を念頭におき、一生の思い出となる旅にしていただきたい。
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