東洋美術の最高峰!奈良薬師寺の仏様鑑賞ポイントと白鳳の美

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東洋美術の最高峰!奈良薬師寺の仏様鑑賞ポイントと白鳳の美

東洋美術の最高峰!奈良薬師寺の仏様鑑賞ポイントと白鳳の美

更新日:2014/10/01 18:34

いずみ ゆかのプロフィール写真 いずみ ゆか ライター

いにしえより仏教で栄えた世界遺産の古都奈良。「仏像を見るなら奈良、庭園を見るなら京都」と言われるほど、仏像天国の地です。特に、和辻哲郎氏が著書「古寺巡礼」で『東洋美術の最高峰』と謳った薬師寺の国宝「薬師三尊像」「聖観世音菩薩像」は息を飲むほどの美しさ。みうらじゅんさんの仏像探訪記で有名なJR東海「うましうるわし奈良」でご存じの方も多いのでは?今回は鑑賞ポイントを中心にその魅力をご紹介します。

薬師寺を満喫するための予備知識!「白鳳期の仏様の特徴」

薬師寺を満喫するための予備知識!「白鳳期の仏様の特徴」

写真:いずみ ゆか

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薬師寺の荘厳な大伽藍は「白鳳伽藍」で知られ、白鳳期の美が集結している事で有名です。しかし、‘’白鳳期の解釈・仏像鋳造期・造営(移建・非移建)”に関してはそれぞれ諸説あり、本によっても取り上げる学説や解釈は様々。ミステリアスな魅力を持つお寺でもあります。

薬師寺は680年、飛鳥の地(藤原京)で皇后・鵜野讃良皇女(うののさららひめみこ→後の持統天皇)の病気平癒のため、天武天皇が発願し造営を始めました。途中、天武天皇が崩御されたため、病が回復した持統天皇が引き継ぎ、孫である文武天皇の御代に完成。その後、平城京遷都に伴って現在の西ノ京の地に移された(※)南都七大寺の一つです。

薬師寺が藤原京に創建された白鳳時代は、日本書紀に示されていない元号で、一般的に概ね645年の大化の改新(乙巳の変)〜710年の平城京遷都までの飛鳥と天平の間を指します。この頃に花開いた白鳳文化は、記紀(古事記・日本書紀)や万葉文学が誕生し、隋や遣唐使による初唐文化(その他アジアの大陸文化)の影響を受けた仏教文化の隆盛が特徴。ブロンズの仏様も盛んに造られました。

特に仏様は飛鳥時代とは異なる特徴が見られます。
【目】「杏仁形」というアーモンド形→「入定相」という瞑想する時の半眼に
【鼻】ギリシアやインドの影響で高い鼻→丸みを帯びて小鼻が強調
【表情】アルカイックスマイルが消え、口角が水平に
【躰】写実表現が進み、プロポーションが健全な人体に近付く
【顔】面長→丸顔に近付く

※藤原京の旧寺(本薬師寺)は平安時代までは存続していた。

これぞ白鳳の美!国宝「薬師三尊像」の鑑賞ポイント

これぞ白鳳の美!国宝「薬師三尊像」の鑑賞ポイント

提供元:提供:法相宗大本山 薬師寺

薬師寺の参拝は、”初めに御鎮守社である「休ヶ岡八幡宮」に詣でてから”というお作法があるのをご存じでしょうか?。近鉄西ノ京駅とは反対側の薬師寺駐車場側にありますので、意外と知られていないのです。
休ヶ岡八幡宮から南門、そして中門をくぐると目の前に現れる壮麗な金堂(※1)に、多くの研究者が”完璧”と絶賛する御本尊の「薬師如来像」と脇侍仏で向かって右に「日光菩薩像」、左に「月光菩薩像」がおられます。三尊とも国宝で金銅造、7世紀〜8世紀初頭の作(※2)。
是非、下記を参考に現地で「薬師三尊像」の完璧な美を感じてみて下さい。

■「真黒なみずみずした色沢」「実質が張り切っていながらとろけそうに柔らかい」と和辻哲郎氏が表現。黒い艶のあるブロンズの肌。
元々は銅で鋳造後、鍍金が施され金色のお姿でしたが、過去の火災で、表面の金が溶けて黒光りしています。その肌が本当に美しい!江戸期に造られた光背の金色の輝きと黒光りの肌の対比が印象的で、この侘びを感じる艶肌は他のお寺の仏様には見られない、独特の美と言えます。

■完成度の高い写実美
均整のとれた体つき、躰に添って柔らかく流れる表現の衣、自然なポーズという写実性の中に気品があり、この高い写実美から白鳳期を代表する最高傑作と言われています。

■薬師如来像
東方浄瑠璃浄土の教主で現世利益の仏様。天平時代頃までの特徴で、薬壺(やっこ)を持っていません。「三十二相」という如来の要件を持った”正しく仏様”な像。「胸に卍相&顔料痕」や「首に三道という三本の線」「手に縵綱相(まんもうそう)という水かき」等は必見です!

■日光菩薩像&月光菩薩像の官能美
古代インド・グプタ期の様式で「首・腰・膝」を交互に左右に折り曲げる「三屈法(トリバンガ)」という姿態。正面から見ると、何だかインド舞踊を踊っている様にも見えませんか?

(※1)火災や争乱で東塔を除く全ての堂宇が焼失。金堂は1976年に復興。
(※2)制作年代には学界を二分する論争がある。
【移坐説=白鳳説】藤原京(本薬師寺)の御本尊が718年の平城京移転に伴い、移されたという説(更に、688年説と697年説がある)。
【新鋳説=天平説】平城京移転の際、新しく鋳造したという説
※写真は正式にお借りしたもの

薬師如来像の台座は必見!西から東へ!奈良はシルクロードの終着地

薬師如来像の台座は必見!西から東へ!奈良はシルクロードの終着地

写真:いずみ ゆか

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金堂を訪れたら、最後に御本尊の後ろに周って、国際色豊かな台座を絶対にお見逃しなく!
上から順に
・上框(かまち)に「ギリシャの葡萄唐草文様」
・その下に「ペルシャの蓮華文様」
・中框に「インドから伝わった鬼神=力神(蕃人)」(※諸説あり、夜叉とも)
・下框に「中国の四神(東=青竜、西=白虎、南=朱雀、北=玄武)」
のレリーフが見られます。これはギリシャ→ペルシャ→インド→中国を経て、奈良がシルクロードの終着地と言われる由縁でもあるとか。
東西の国際交流が分かる台座は独特のもので、薬師寺にしか存在しません。

※写真は東僧坊のレプリカ

あまりに美青年な仏様!国宝「聖観世音菩薩像」

あまりに美青年な仏様!国宝「聖観世音菩薩像」

写真:いずみ ゆか

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次に金堂の東側に位置し、少し外れた場所にある国宝・東院堂の「聖観世音菩薩像」に会いに行きましょう。この仏様は誰が見ても、ため息が出るほど美しいお姿!端正なお顔立ちで、しなやかな肢体と均整のとれたプロポーションはまるで凛とした青年の様です。何でも”仏像界のイケメン”と言われているとか!

国宝の金銅造で、7世紀〜8世紀初頭の作。薬師三尊像と同じく、制作年代は「白鳳説」と「天平説」があります。
是非、下記を参考にその美を現地で堪能してみて下さい。

■古代インドのグプタ様式の影響を受けた「覗いた足」
和辻哲郎氏は「古寺巡礼」の中でこの聖観音様の作者を「インドに向かってシルクロードを旅した玄奘三蔵と関係があり、日本へ遣唐使船に乗ってやって来た”西域人”では?」と空想して楽しんでいます。白鳳文化の源流をたどっていくと「隋・唐文化→ガンダーラ文化→ギリシャのヘレニズム文化」になるため、何となくオリエンタルな雰囲気が感じられるのも頷けます。

■「正面鑑賞」を重視した左右対称の姿形(衣の裾)
お堂の中で、是非、真正面に正座して拝観してみて下さい。衣の裾が銅製とは思えないほど、薄く透け感があって軽やか!まるで薄羽カゲロウの翅の様な美しさです。

■通常の聖観音像とは逆の「左手をあげて」いる。
この事から、金堂の薬師三尊像の左脇侍仏だったのでは?という説も。

この像の伝来に関しては、記録が無いと言われています。学術的な根拠は無く、真偽は定かではありませんが、政争に巻き込まれ、若くして殺された悲劇の皇子「有馬皇子」や「大津皇子」がモデルという話もあるそう。謎に満ちた神秘性を感じる仏様です。
※写真は許可を得て撮影

未来へ・・法相宗教義の大スペクタクル!「大講堂の仏様」

未来へ・・法相宗教義の大スペクタクル!「大講堂の仏様」

写真:いずみ ゆか

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最後に大講堂へ。薬師寺は法相宗の大本山なので、法相宗の教学「唯識論」の創始者である弥勒如来様(インド名・マイトレーヤ)がお祀りされています(※1)。両横には唯識論を大成した阿僧伽(アサンガ)菩薩と伐蘇畔度(ヴァスバンドゥ)菩薩の兄弟論師がおられます。
法相宗の始祖である玄奘三蔵様(※2)はインドのナーランダ寺院で唯識論を学んでおり、この大講堂の仏様の大スペクタクルは、まさに薬師寺の根幹を表しているとも言え、圧巻の一言!

(※1)「弥勒三尊像」・・脇侍仏で向かって右に「法苑林菩薩」と左に「大妙相菩薩」がおり、7世紀〜8世紀作の重要文化財。弥勒様は実在の人物で、お釈迦様から”必ず如来になる”と約束された後継者。「未来仏」と呼ばれる。
(※2)平成26年は玄奘三蔵様が入寂されて1350年であるため、「玄奘三蔵坐像」が一緒にお祀りされている。

シルクロードと東洋美術の最高峰を体感できるお寺!

仏様の様式や法相宗と玄奘三蔵様との関係から見ても、薬師寺はシルクロードの雰囲気を放つ、独特のお寺。和辻哲郎氏は「薬師三尊像」と「聖観世音菩薩像」について、「東洋文化の絶頂に対する秘密の鍵の存在」と述べています。
東洋文化とは西域(=シルクロード)も含めた文化を意味しているのでしょう。それが即ち、白鳳の美の魅力でもあるのです。
その他にも「玄奘三蔵院伽藍」では、年に4回期間限定(※)で、日本画の大家・平山郁夫画伯が玄奘三蔵様の中国からインドまでの旅を描いた、『大唐西域壁画』を拝観する事が出来ます。

壮大なシルクロードと東洋美術の最高峰の美を味わえる薬師寺。他のお寺では感じる事が出来ない世界がそこにはあります!
近くの唐招提寺と併せて、全ての美を堪能するには最低でも半日はかかるのため、ゆとりを持ったプランで訪れて下さい。

●「国宝薬師三尊像」の写真画像に関して、コピー・複写・転載等の二次利用は薬師寺により禁止されています。

(※)1月1日〜1月15日
  3月1〜6月30日
  8月13日〜15日
  9月16日〜11月30日

《参考文献》
■著:和辻哲郎「古寺巡礼」
■著:平山郁夫・薬師寺管主山田法胤「薬師寺」淡交社
■著:紺野敏文「奈良の仏像」アスキー新書
■著:山田隆之「仏像の秘密を読む」東方出版
■監修:水野敬三郎「日本仏像史」美術出版社
■著:西村公朝・小川光三「仏像の見分け方」新潮社
■「仏像ワンダーランド奈良」JTBパブリッシング

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/09/09 訪問

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