また一つ、関西に建築家安藤忠雄氏の手による美術館ができました。山手館と地中につくられた「地中の宝石箱」です。本館である大山崎山荘とはそれぞれ回廊で結ばれていて、地中の宝石箱へは回廊内の階段でつながっています。残念ながら内部は撮影禁止。外側から撮影してみました。回廊内の階段を降りて、地下に造られた半円形の小さな美術館へ。
コンクリート打ちっぱなし、スクエアな空間づくり、安藤忠雄氏らしい設計です。四角い箱の「山手館」では随時企画展が開催され、対照的な半円形空間を持つ「地中の宝石箱」では、クロード・モネの「睡蓮」をはじめとする絵画のコレクションが常設展示されています。
天王山を切り開いて大山崎山荘を建てたのはニッカウヰスキーの創設者、加賀正太郎氏です。彼は日本人として初めてスイスのユングフラウに登頂した人。イギリスでは、王室の植物園キューガーデンで蘭の花に出会い、自身も蘭の栽培に情熱を燃やし、山荘内にはかつて蘭の温室があったそうです。
いち早く西洋の文化を身体で感じ取り、それを日本の暮らしに取り入れようとしたのでしょう。昭和の粋人? 手広く事業を展開しながら、自分の世界も持っていた人です。
山荘内を歩きながら、彼の人生と生き方に興味がわいてきます。
加賀正太郎はイギリスに留学した時に見た炭坑主の家を参考に大山崎山荘を建てたといわれています。構造は鉄筋コンクリート、屋根の部分は鉄骨、上棟部はイギリスのハーフティンバー工法によるものだそうです。見た目にはすべて木造の建物のように思えます。大正時代に建てられ、昭和に増築されたそうです。
山荘内を歩き、室内のインテリアや装飾を見ていると実業家加賀氏が、自分のあらゆる夢、思いを込めてこの場をつくっていったことが伝わってきます。男のロマンの集積なのでしょうか? 事業だけでは満たされなかった夢を注ぎ込んだのかもしれません。癒しの場かも・・・?!
邸内には、建築中の家を観察するための棟「白雲楼」も建てられています。さぞかし、楽しかったでしょう。夢が実現していく過程を眺めていることは・・・。
本館、山手館、地中の宝石箱におさめられている絵画や遺跡、工芸品などのコレクションの数々は、加賀氏が後に山荘の運営を託したアサヒビールの初代社長山本為三郎氏が集めたものです。本館には山本氏が特に思いを寄せた民芸運動の立役者たちの作品が数多く展示されています。大山崎山荘ではたびたび、この民芸運動をテーマにした企画展が開催されます。
なんと、本館でシリアのアレッポにある遺跡の一部を見つけました。思わず「本物ですか?」と聞いてしまいましたが、本物だそうです。
5500坪の敷地にある大山崎山荘美術館では、美術品の鑑賞だけでなく、邸内をゆっくり散策して四季折々の自然を楽しめます。見逃せないのはテラスからの眺め。京都を流れる3つの川が一望できます。広いテラスでゆっくりお茶を。
家主を失い、行き場をなくしてしまった素敵な山荘を京都府の依頼でアサヒビールが買い取り、天王山の景観とともに未来へつないだのが大山崎山荘美術館です。10年の歳月をかけて再生と近代的な美術館が増築されました。昭和の実業家のロマンが受け継がれ、豊かな自然と歴史ある建物が保存されてよかったと思います。
山崎は小さな町ですが、歴史があり見所がたくさん。小さな駅には観光案内所のデスクもあるくらい。ぜひ、町歩き、歴史散策をお楽しみください。
- PR -
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索