LOVE白蓮。愛しさ残る「旧伊藤伝右衛門邸」福岡・飯塚

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LOVE白蓮。愛しさ残る「旧伊藤伝右衛門邸」福岡・飯塚

LOVE白蓮。愛しさ残る「旧伊藤伝右衛門邸」福岡・飯塚

更新日:2016/01/06 16:24

タケモト スグルのプロフィール写真 タケモト スグル 美術館バカ、感動写真家

NHK連続テレビ小説「花子とアン」。赤毛のアンの翻訳で知られる村岡花子を通して、その時代や人間模様が描かれています。花子(劇中名:安東はな)、白蓮事件で知られる柳原白蓮(葉山蓮子,蓮さま)、炭坑王伊藤伝右衛門(嘉納伝助)等、各人物像が魅力的です。
ここでは「惚れたとたい!」の台詞で視聴者を貫いた伝助の愛を「旧伊藤伝右衛門邸」に見ると共に、九州で大人気の駅弁「かしわめし」をご紹介したいと思います。

炭坑王 伊藤伝右衛門(いとうでんえもん)

炭坑王 伊藤伝右衛門(いとうでんえもん)

写真:タケモト スグル

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白蓮事件(びゃくれんじけん)。

伊藤伝右衛門の妻「白蓮(本名:Y子(あきこ))」による一大スキャンダルのことです。姦通罪のある大正の世で、不義密通、駆け落ち、そして絶縁状の新聞掲載と、世間を大いに騒がせました。小説「真珠夫人」などの元ネタともなったこの夫婦の関係は、これまで白蓮目線で描かれる事が多く、伝右衛門には成金・無作法・無教養などのイメージが付きまとっていますが、実際の人物像はどうだったのでしょうか。

伊藤伝右衛門は、江戸幕末、現福岡県飯塚市に生まれました。生活は決して裕福ではなく、幼い身で丁稚奉公にも出ています。やがて父親が始めた炭坑業を手伝うようになり、過酷な採掘などにも従事して事業を軌道に載せました。

独り立ちしたのは父を亡くした40歳の時です。その後、銀行取締役や衆議院議員なども経て、炭坑王の道を進みました。勲四等旭日章も受賞しています。

こう見ると、作法や教養が仮に高くなかったとしても、より広い尺度で見るべき大きな方のようです。無作法・無教養をクローズアップすることは視野の狭さの現れでしょう。

実際、旧伊藤伝右衛門邸を見ると、邸宅のあらゆる場所に優美な装飾が施されており、建築主の懐の深さが感じられます。街に点在する有名建築などにおいても言えることですが、建築主が裕福であれば建物が素晴らしくなるというわけではありません。建築主には、設計者や職人さんの想いを受け止める器の大きさが必要です。伝右衛門は、場を任せられた一人ひとりが頑張りたくなる空気を作ることができる人なのだと思います。

個人宅離れのお庭。名勝「旧伊藤傳右エ門氏庭園」

個人宅離れのお庭。名勝「旧伊藤傳右エ門氏庭園」

写真:タケモト スグル

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旧伊藤伝右衛門邸の見どころは大きく分けて2つあります。1つは建屋、1つは庭園です。その庭園はオマケのレベルではなく、敷地の約半分を占める規模があります。造りは回遊式庭園(歩いてまわり鑑賞する庭園)で、場所ごとに変わる景色がまた見ものです。

当庭園の芸術性は、大きな流れ、石造の太鼓橋、噴水、石塔、石燈篭、八角屋根の四阿(あずまや)等々にも現れていますが、特に異質に思うのは、建屋が主役となる事を意識して庭を造ったと感じさせる点です。庭のどこから見ても建屋が景色を作ります。ご自身で撮った写真を眺めてみてください。きっとほとんどの写真に建屋が写っているはずです。

感動!白蓮居室の大パノラマ

感動!白蓮居室の大パノラマ

写真:タケモト スグル

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「うわぁ!」建屋2階の白蓮居室で何度も聞く言葉です。入った途端、この空間の特別さが分かります。日本に邸宅は数多くありますが、誰もが声を上げる部屋はそう多くはありません。刺激にあふれる現代でも圧巻のこの空間が、はたして大正の世ではどう見えていたのか、想像し難いものがあります。

大きな感動を生む仕掛けとは何でしょうか。それは、居室からの眺めです。北面から東面にかけて広くガラス窓となっています。しかも現代の高級マンションのようなハイサッシ(床面から天井の高さまであるサッシのこと)で、大パノラマと言っても決して過言ではありません。

その他、細部に渡る意匠は特別続きで、天井から床まで次々に見どころが現れます。現地のガイドさんを通じてでも良し、伝右衛門の心に是非触れてみてください。

白蓮に届かなかった伝右衛門の愛

白蓮に届かなかった伝右衛門の愛

写真:タケモト スグル

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伯爵家出身で大正天皇の従妹。歌人として有名で、様々な相手と歌や手紙で恋愛の駆け引きをする。白蓮の経歴はまるで浮世離れした平安時代の貴族のようです。

対して伊藤伝右衛門は、派手な女性遍歴に加えて、妾が家を取り仕切るなどしています。この点については、事の大小はあるにせよ、どっちもどっちです。

では、伝右衛門にとって白蓮は女遊びの1つだったのでしょうか。いいえ、経歴や建物を拝見する限り、特別なものであったことでしょう。

伝右衛門にあったであろう恋心。ですが、大実業家であった分その伝え方が“下手”で、モノよりコトバを重視する白蓮には届かなかったと思われます。現代の恋愛事情にも繋がりそうなことですが、高貴な方に対しモノで示すということは、刺激が弱い(=効果が薄い)ことなのかもしれません。

なお、白蓮事件において伝右衛門との対立を決定的にし、世間に白蓮を下品に広めたのは絶縁状の新聞掲載ですが、その文面には、駆け落ち相手で社会運動家である宮崎龍介の友人による改ざんが見られます。紙面と白蓮原文を比べると(ショップで購入可)、原文にある白蓮の「切なる訴え」が紙面では「下品で攻撃的な喧嘩文句」です。これは龍介自身を考えれば容易に予想できる範囲であり、「友人が改ざんしました」で済まされることではありません。伝右衛門と白蓮とで語られることの多い事件ですが、愛する人を自身の思想に利用したこの人こそ、本当の悪役なのかもしれません。

九州エリアで大人気!駅弁「かしわめし」

九州エリアで大人気!駅弁「かしわめし」

写真:タケモト スグル

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旧伊藤伝右衛門邸の所在は福岡県の飯塚市。主要都市のある沿岸部ではなく内陸に位置する町です。そのため、関門海峡以東の方は福岡博多経由か北九州小倉経由で訪問することになります。博多と聞けばラーメンが気になるところですが、そこはグッと抑えて、昼は小倉、夜に博多を楽しむルートを選んでください。

なぜ小倉経由を推奨するのか。それは、北九州に九州エリア級で大人気の駅弁があるためです。

その名は「かしわめし」。鶏の風味が豊かで、ダシの染みた炊き込みご飯が絶品です。冷えていることで益々味が深まっています。味が口に広がることが幸せで、お茶を飲むことさえ惜しい感じです。

価格は770円(東筑軒)。駅弁としてはかなりお手頃です。種類は主に2つで、折尾名物「かしわめし(東筑軒 とうちくけん)」と小倉名物「かしわめし(北九州駅弁当)」とがあります(写真は東筑軒)。

旧伊藤伝右衛門邸へ訪問の際には、是非にご賞味ください。

おわりに(追記)

今回は、福岡県飯塚市の「旧伊藤伝右衛門邸」と駅弁「かしわめし」をご紹介しました。旧伊藤伝右衛門邸は、景観だけではなく物語も流れる大変珍しい邸宅です。

感動を心に、カメラをその手に。

白蓮に伝えられなかった伝右衛門の心を写真に収めてみてください。

【追記】
旧伊藤伝右衛門邸にはもう1つ、大きな大きな魅力があります。それは、2011年に世界記憶遺産として登録された「山本作兵衛氏の炭鉱図 原画」が常設展示されていることです。
そこに描かれている、正確な仕事内容、あふれる生活感、人々の明るさ。想定以上に鮮やかで、眺めているとその光景が広がり音や声が聴こえてきます。逃さずご覧ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/08/25 訪問

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