写真:盛 千夏
地図を見る「アラゴン州のムデハル様式建造物」として世界遺産に登録されているテルエルのムデハル様式建造物は4つ。
・サンタ・マリア大聖堂の塔、屋根、ドーム
・サン・ペドロ教会と塔
・サン・マルティン教会と塔
・エル・サルバドール教会の塔
これらは全てテルエルのこじんまりとした旧市街にあり、テルエルっ子の生活に溶け込んだ世界遺産と言えます。
テルエルはキリスト教徒のレコンキスタ運動(イベリア半島をイスラム教徒から回復する運動)の後に、キリスト教徒の重要な拠点として建設された町でしたが、この地に留まったイスラム教徒もたくさんいました。
そして、当時世界最先端の建築技術を持つ残留イスラム教徒が、新しく支配者となったキリスト教徒に依頼され建築した物を「ムデハル」と呼びます。
ムデハル様式の特徴は、レンガの茶色と緑の陶器のコントラスト、そして建築に関わった人達。なぜならムデハル建築物は、異なった宗教ならがらも、互いを信頼し共存をしていた時代の証だからです。
写真:盛 千夏
地図を見るテルエルのカテドラルである「サンタ・マリア大聖堂」の塔、屋根そしてドームは世界遺産に指定されている建物の一つです。
このカテドラルの一番の見どころは、「ムデハル芸術のシスティーナ礼拝堂」と称される見事な天井の細工。スペインの他の教会では見ることの出来ない、素晴らしいムデハル様式天井を、カテドラルの椅子に座りゆっくり鑑賞して下さい。
残念ながらカテドラルの塔や屋根に登ることは出来ませんが、嬉しい事にカテドラルの入場料は無料です。スペインでは近年入場料を取るカテドラルが多いこと、世界遺産の一部だという事を考慮すると、観光客には嬉しい限り。
1909年に完成したネオ・ムデハル様式のファサードと、カテドラルの塔を広場から眺めることもお忘れなく!
写真:盛 千夏
地図を見るテルエルに現存するムデハル様式の建物で、唯一内側から楽しめるのが「エル・サルバドール教会の塔」。こちらの塔の下は通りぬけ出来るような仕組みになっています。これは塔があることにより道が塞がれ、住民たちが回り道をしなくても良いように、との工夫です。
「エル・サルバドールの塔」は四層に分けられた塔内を、登りながら見学することが出来ます。一層から三層までは、テルエルの歴史、ムデハル様式、建築技術などが、ジオラマやパネルにより詳しく説明されいます。
そして最上階の四層目は教会の鐘突き場です。
ここからはテルエルの町の360度パノラマが楽しめ、絶景の撮影ポイントとなっています。鐘撞き男はいませんが、こちらの教会の鐘は今でも現役で、1時間毎に往時を忍ばせる鐘の音を聞くことが出来ます。
写真:盛 千夏
地図を見るスペイン中世のテルエル。
裕福な家の娘イサベルと貧しい家の息子ファン(ディエゴとも言われています)は恋人同士でしたが、身分の差からそれは当然実らない恋でした。ファンは当時スペインで盛んだったレコンキスタに参加し、5年後戦功を立て、きっと裕福になり戻ってくるとイサベルに約束し旅立ちます。
しかし5年経ってもファンはテルエルの町に現れず、両親にファンは死んだと聞かされたイサベルは、泣く泣く両親が勧める縁談を受け入れます。
ある日死んだはずのファンがテルエルに戦利品とともに帰還します。彼は人妻となったイサベルに口づけを求めますが、人妻であるイサベルは拒否してしまいます。ファンはイサベルに裏切られたと思い、絶望の余り息絶えてしまいました。そしてファンの葬式の場に現れたイサベルも、冷たくなった彼に口づけをした後に悲しみの余りその場で亡くなったといわれています。
このロマンチックな悲劇はテルエルっ子に口承され、今でもテルエルっ子の心に刻まれている物語です。
ただし「テルエルの恋人たち」は、ただのスペイン版ロミオとジュリエット伝説ではありません。彼らが実在したという文書も現存し、サン・ペドロ教会に安置されていた1対の男女のミイラも後に発見され、これは彼らのミイラだと言われています。そしてこの1対のミイラは、イサベルとファンが生きた時代の物と科学的にも証明されているのです。
「テルエルの恋人たち」のミイラは、現在は発見されたサン・ペドロ教会に隣接する霊廟に安置されています。
立派な彫刻を施された棺に彼らのミイラは保管されていますが、よく見ると2人が差し出す手は繋がれていません。これは現世では祝福されず、結ばれなかった彼らを表現しているのです。
写真:盛 千夏
地図を見る世界遺産巡りとテルエルの恋人たちの伝説を堪能したら、次はやっぱりグルメ!
スペイン名物の生ハムはいかがでしょう?
テルエルはスペインも有名な生ハムの産地で、どのバルにも豚の足がドーンと置いてあり、生ハムを注文するとその場でカットしてくれます。さすがに産地だけあり、バルの店員のカットも悦に入ったもの。値段も手頃で、まさに「美味」の一言。
写真の生ハムは「プラ・セパ」(Pura Cepa)というバルのものです。「プラ・セパ」は1階が立ち飲み、2階はテーブル席の小さな店で、テルエルっ子がご贔屓にしているお店です。グラスワインの種類も多く1杯1ユーロから2.8ユーロととてもリーズナブルです。是非カットしたての生ハムやタパスをお供にスペインワインも堪能して下さい。
ちょっと高級なグルメが好きな方は、世界3大珍味の一つトリュフもお試し下さい。テルエルはトリュフの産地としてもとても有名で、町のレストランでは日本と比べると驚くほどリーズナブルにトリュフを味わうことが出来ます。
テルエルにはここで紹介した以外にも、ネオ・ムデハル様式が素晴らしい大階段、水道橋、市民の憩いの場トリコ広場、くすんだグリーンと墨黒のコンビネーションが美しいテルエル焼き(陶器)など興味深いものがたくさんあります。
バレンシアからは1日約4便のバスがあり、所要時間は約2時間と日帰りも可能。
バレンシア観光のついでに是非足を伸ばしてみてくださいね。
この記事を書いたナビゲーター
盛 千夏
スペイン生活20年目に突入した、ちゃきちゃきの江戸っ子。スペイン歴の始まりは、アイルランド留学中にバケーションで訪れたアンダルシア地方。その後スペインの友人に誘われ、「火祭り」、「パエリア」、「トマト…
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