今回ご紹介する中国の世界遺産「開平楼閣の村落」は、食の都広州や中国の世界遺産「マカオ歴史地区」から、バスで2時間ほど移動した広東省・開平にあります。
赤坎鎮・自力村・方氏灯楼・蜆岡鎮・百合鎮(すべて村の名前)と、開平市内の少し離れた位置に点在している世界遺産ですが、公共バスを利用して見て回れます。時間がない場合や中国語が心配な方は、バイタクやタクシーを1日チャーターしましょう。
それでは「自力村」に出発です!
なぜこのような場所に建物が作られたのでしょうか?
19世紀中頃、アメリカはゴールドラッシュに湧いていました。多くの中国人もまた一攫千金を夢見て渡米しましたが、その後アメリカ政府の排華政策により、帰郷を余儀なくされてしまいます。故郷に戻った彼らには、試練が待ち受けていました。帰郷した多くの家族は裕福であったために、盗賊や馬賊の標的とされたのです。さらに開平では水害の被害にも苦しみました。そこで開平に戻った人々は、水害や盗賊・馬賊への対策として、1カ月位であれば籠城も可能な家を建てました。
田んぼに点在する不思議で奇妙な家には、そんな歴史があったのです。
盗賊などから防御するために建てられた家なのに、窓が多いのは、なぜでしょうか?当然窓がない方が、攻めにくく安全です。しかし、窓がある=その分警備員を増やす=金持ちの証拠!という、なんとも奇妙なプライドの象徴、なのです。
建物内の構造も、普通の家とは違いがみられます。特徴は、一人暮らしのマンションのように、各階にバスルームと台所が備え付けられていることです。親族がまとめて一棟に暮らし、家族ごとに1フロア専有していたのも理由ですが、水害や盗賊の襲来などで下の階が使えなくなったとしても、問題ないように考慮していたそうです。
建物内には、家具や調度品などがあり、当時の生活の様子をうかがい知ることができます。コンクリートで覆われた殺風景な室内を飾る豪華な家具と、鉄格子が取り付けられた窓を見ていると、お城に幽閉された王や貴族もこんな生活をしていたのかな?と思い描いてしまいます。
お金持ちのプライドは窓の数だけでなく、外観や内装の造りにも現れています。中国と西洋を折衷した外壁、古代ギリシア・古代ローマとイスラムなどの建築様式など、当時の良さそうな物を、とにかく詰め込んでいるように見えます。
裕福ではなさそうに見える家庭の調理場の壁にも、こて絵やフレスコ画の技術などのさまざまな技術を利用して描かれた中国風の風景画が見られます。
良く言えば多様性にあふれ、悪く言えばお金持ちの道楽が過ぎて、まとまりがなくなっていたのかもしれません。しかし、たくさんの建築様式を1つの建物で見られるのも「開平楼閣」の魅力なのでしょう。
*こて絵
漆喰(しっくい)を用いて作られるレリーフ
田んぼに抜ける未舗装の道を少し歩けば、「自力村」を一望できます。田んぼの間からニョキニョキとそびえ立つ「開平楼閣」は、当時の人々の富の象徴であり、その富を守る牢獄だったのかもしれません。
中国でも変わった世界遺産「開平楼閣の村落」を、広州やマカオの旅に加えてみてはいかがでしょうか。
「開平楼閣の村落」は、旅の思い出を不思議な色にしてくれるはずです。
■アクセス・参考情報
マカオから:拱北汽車総站ー開平汽車総站
広州から:広州汽車総站ー開平汽車総站
どちらも所要時間は約2時間、早朝から1時間に1〜3本程度にバスが頻発しています。マカオから出発する場合は、中国本土への入出国が発生しますので、パスポートを忘れずに持参してください。
自力村へ:义祠(イーチー)站から自力村へ行くバスが、早朝から夕方まで20分間隔で出発しています。自力村バス停から、自力村までは30分ほど歩くことになります。
開平汽車総站―义祠(イーチー)站間のバスもあります。
*汽車総站=バスターミナル 站=駅
それぞれ「村」ですが、入場料を払う必要があります。いろいろ見て回りたい場合は、3村共通券がお勧めです。
いずれも2013年11月時点の情報となります。最新情報は現地で確認をお願いします。
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(2024/9/9更新)
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