夜行列車で現役SLを見に行こう!〜中国・遼寧省阜新市探訪鉄道の旅

夜行列車で現役SLを見に行こう!〜中国・遼寧省阜新市探訪鉄道の旅

更新日:2014/10/17 15:19

もんTのプロフィール写真 もんT チューター、フリーライター
急速な近代化が進む中国。21世紀初頭にはまだあちこちに残っていた蒸気機関車も、今では辺鄙な炭鉱地帯に残るのみとなりました。その中でも遼寧省阜新市は、国鉄利用だけでSLを見に行けるおススメのスポット。コアなSLファンのみならず、中国で鉄道の旅がしてみたい…という皆さんにもおススメです。今回は北京から夜行列車に乗って、中国蒸気機関車の最後の活躍を見に行く旅を紹介します。

中国のSLの現状は…?

中国のSLの現状は…?

写真:もんT

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石炭の産出量世界一の中国では、21世紀に入ってからも、炭鉱地方では蒸気機関車が特に貨物輸送で活躍していました。しかし動力の近代化や機関車の老朽化もあり、今や急速にその数を減らしています。
各地で細々と残るSLたちの最後の活躍を見に、世界各地からコアなSLファンが中国を訪れます。しかし大抵の場所は、個人旅行ではアクセスが容易でなく、車やガイドをチャーターするか、高額なツアーに参加しなければなりません…。ちょっと見るだけ…というファンにとっては、時間もお金も手間もかかります。

そんな中、今回紹介する遼寧省阜新市は、個人旅行でもアクセス容易なポイント。タクシーやバスに乗る必要もなく、気軽に国鉄利用だけで訪問が可能な場所は今やここだけ!旅客列車の運行は廃止されてしまいましたが、石炭輸送ではまだまだ多くの蒸気機関車が稼働中。うまく計画を立てれば、北京から夜行日帰りというプランも可能なので、中国SLの最後の活躍を一目見てみたいという方には、最後で最高の場所です。

阜新のSLの情報についてですが、SLを観光資源としてPRしているわけではないので、現地の自治体や観光局などからの公式情報は期待できません…。むしろ、英文ですが、欧米の熱心なSLファンのウェブサイトの情報が信頼できます。”Fuxin steam”のワードで検索をかけると、旅行レポートや動画・写真なども含めて、最近の情報が見つかるでしょう。(”SL”は和製英語…。国際的には”steam”が、蒸気機関車の短縮表現です。)

まずは列車の切符をおさえよう!…中国国鉄の切符の買い方

まずは列車の切符をおさえよう!…中国国鉄の切符の買い方

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今回の旅は下準備として、現地までの列車の切符を入手する必要があります。中国の中・長距離列車は、「软卧」【1等寝台】、「硬卧」【2等寝台】、「软座」【1等座席】、「硬座」【2等座席】の4タイプの車両をつないでいます。切符が売り切れているものの、どうしてもその列車に乗りたい場合は、「無座」という切符を買って、ずっと通路に立ちっぱなし…ということになります。したがって、長距離旅行の場合は確実に寝台車の切符をおさえたいところです。

切符の購入窓口は、北京市内であれば、北京駅や北京北駅などのターミナル駅窓口が分かりやすく便利。切符には、パスポートの番号が入力されるので、購入そして乗車の際は実際に乗車する人全員分のパスポートが必要です。中国語に不安があっても、乗りたい列車の乗車日、区間、時刻、車次(列車番号)と車両種別をメモに書いて渡せば大丈夫!駅窓口での切符の発売は、乗車日の18日前からです。

ただ、中国に入国してから切符を買いに行くのでは、すでに売り切れということも…。確実に切符をおさえたい場合は、中国の旅行業者のウェブサイトから予約するのが安心。手配料がいくらかかかりますが、この方法ならば、日本からでも乗車日の18日前から切符の予約が可能!例えば、桂林中国国際旅行社が運営する「AraChina」のウェブサイトは、日本語で列車の時刻検索から予約までできて、とてもすぐれものです。

基本的にこのような方法で予約した場合は、出発当日までに出発駅にて予約番号とパスポートを提示して、切符を受け取る…というシステム。やはり窓口には並ぶ必要があるので、当日受け取りの場合は時間に余裕をみておきましょう。

最初に乗車する列車は、北京北14:09発→阜新6:18着の車次(列車番号)2101。
北京北駅は、地下鉄2号線の西直門駅下車すぐです。他のターミナル駅と間違えないように気をつけて…。
写真は巨大ターミナルに生まれ変わった北京北駅。列車は北京北駅を出ると、一路、東北方面へと向かいます。夜中に瀋陽を経て、翌早朝には阜新に到着です。

阜新到着…さっそく炭鉱鉄道の踏切へ!

阜新到着…さっそく炭鉱鉄道の踏切へ!

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お目当てのSLが活発に動いているのを見られるのは、ちょうど早朝から8時過ぎまでの時間帯。その点で、6時台の阜新駅到着はSL観察には最適です。早速、国鉄線の南側を走る炭坑鉄道へ向かいましょう。駅のちょうど裏側あたりを目指します。国鉄駅の立派な駅舎を背にして右(東)へ、そして大通りに出たら右(南)に折れて、国鉄線をアンダーパスでくぐります。くぐり終わったところで、右(西)へ伸びている道があるので、その道を道なりに進んでいくと、まず一つ目の踏み切りに出ます。ここは、そのまま行き過ぎて二つ目の大きな踏切まで進みましょう。ここまで、国鉄駅からは1kmちょっと。約15分で到着です。

蒸気機関車は、炭鉱が休みでない限りは早朝から活発に動いています。ちょうどこの大きな踏切付近が、貨車の入れ換えなどを行うヤードの端にあたり、SL観察にはベストのポイントです。

なお、ここの炭鉱鉄道のセキュリティは非常に厳しく、鉄道用地はしっかりとフェンスで囲われているほど…。敷地内への立ち入りは厳禁です。見学や写真撮影は、踏み切り脇や、フェンス越しから楽しみましょう。地元の人々や踏切番の職員は、SLを見にやってくる外国人には慣れっこの様子。ルールと常識をわきまえていれば、写真撮影をとがめられることはありません。

8時に全員集合?炭鉱鉄道のSLが勢ぞろい

8時に全員集合?炭鉱鉄道のSLが勢ぞろい

写真:もんT

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7時頃からすでに何台もの蒸気機関車が活発に構内の入れ換え作業で動いていますが、この鉄道風景のクライマックスは、朝の8時!夜間働いていたSLとこれから炭鉱へと出勤するSLとが、シフトチェンジする関係で、この場所に勢ぞろいします。その数は踏切から確認できるだけでも5台以上…、立ち上る白煙のすじを数えるならおよそ10台は集結している様子。
これだけの数の現役の蒸気機関車が一度に見られるのは、世界でも今やここだけでしょう。この壮観なシーン、ぜひお見逃しなく!先ほどの踏み切りでじっと見張っているのがベストです。

8時を過ぎると、機関車たちは周辺の点在する炭鉱へと散っていき、仕事を終えた機関車は車庫へと入っていきます。構内の入れ換え作業も、午前中いっぱいは行われているようです。のんびりと朝食をとりながら、そして周辺を散策しながら、心ゆくまで中国のSLの最後の活躍を見届けましょう…。

今の中国の地方都市の日常がここにあり…

今の中国の地方都市の日常がここにあり…

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阜新市にはSLを除けば、特別な観光資源は何もありません。駅の周辺は、繁華街というよりも住宅街。新しく建設された団地が広がります。市の郊外には炭鉱と、そこで採れた石炭を利用した火力発電所が立地。現在の中国の地方都市の日常がここにあります。
住宅街にはちょっとした飲食店や、超市(スーパーマーケット)もありますので、観光というよりは、しばし中国の日常生活の中に浸っていきましょう…。

お昼になると、ヤードでのSLの動きは閑散となります。それに阜新の駅前には、外国人が宿泊できるホテルが今のところありません。したがって、お昼過ぎには次の目的地に移動するのが良いでしょう。
団地内の広場のベンチでちょっと一休みしたら、お昼の列車で瀋陽に向かって出発です。

乗車する列車は、阜新12:42発→瀋陽16:02着の車次K7327。
瀋陽到着後は、急ぐのであれば、瀋陽北18:37発→北京23:30着の車次D8【高速鉄道】を利用すれば、その日のうちに北京に戻れます。ただし、阜新からの列車が遅れる可能性も考慮すると(さすがに中距離の列車で2時間も遅れることは普通はありませんが…)、瀋陽で1泊するプランが無難でしょう。瀋陽駅の駅舎は、満州鉄道時代に東京駅を模して造られたもの…、こちらもぜひお見逃しなく!

旅のまとめ

中国蒸気機関車探訪の旅はいかがでしたか?次々と蒸気機関車が消えていく中、ここ阜新でも、あと何年、その活躍が見られるのかは何ともわかりません。観光向けではない、本物の生きている現役蒸機を見るならば、今のうちでしょう。日本ではもはや見られなくなった鉄道の原風景…、SLファンの皆さんには、ぜひ見ていただきたいものです。蒸気機関車を訪ね求めて…、ユニークな中国鉄道の旅をぜひ楽しんできてください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/03/09 訪問

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