マテーラは、サッシ(イタリア語で、石や岩を意味する言葉の複数形)と呼ばれる洞窟住居群で成り立っています。蜂の巣の穴のように見えるひとつひとつが、洞窟型をした住居なのです。崖に張り付いたように見えるおびただしい数のサッシは、南イタリアの青い青い空の下、まるで蜃気楼の中に存在するような奇妙な雰囲気を漂わせています。イタリアの街並みというと、フィレンツェのような中世ルネサンス的な風景を思い浮かべがちですが、ここは何から何まで、全くの別世界といえるでしょう。
見るからに古めかしい洞窟住居群ですが、それもそのはず。約9000年も昔から人々が住んでいた、非常に長い歴史を持った地域といわれています。現在は、ほとんどの人々は、小高い丘の上にある新市街のほうに居住しており、サッシは空き家となっているところがほとんどです。新市街と旧市街は歩いて移動できる距離なので、その違いを確かめられてみるのも面白いものです。
写真:橘 凛
地図を見る洞窟住居でどのような生活を送っていたのか?ということを興味深く学ぶことができるのが「Casagrotta del Casalnuovo」という洞窟博物館です。マテーラ中心地に程近い便利な立地にあります。博物館は多言語対応しているので、受付で日本人であることを告げると、日本語アナウンスを流してくれます。
洞窟住居内は意外に広く、地下数階にわたって続いています。入ってすぐの階が、生活空間であり、当時の人々の生活を垣間見ることが出来ます。最も低い階は貯蔵庫・ワインセラーとなっており、夏場でも薄暗く、肌寒い空間で、貯蔵にピッタリな環境です。
サッシは、19世紀ごろまでは比較的快適な住環境としてその役割を果たしていました。しかし、20世紀以降の人口激増に伴い、人々と家畜が同じ部屋で暮らしたり、貧しい小作農民が住む場所となっていきました。そしてその劣悪環境により、乳幼児死亡率が激増。これを危惧したイタリア政府が、1950年代に住民の強制移住を実行しました。こうして、人々は新市街などに移り住み、長らく住んだサッシを捨て去ることとなりました。これ以降、サッシは廃墟の街と化してしまいます。
が、近年、これらのユニークな住居群や、洞窟の地下同士で繋がる水道システムなど、その文化的価値が再評価され、1993年に世界文化遺産に登録されることとなりました。
写真:橘 凛
地図を見る近年、マテーラは積極的に観光客を誘致しており、それにつれて、洞窟住居に戻ってくる周辺住民も増えてきているそうです。観光ビジネスの目玉となっているのが、洞窟ホテル!洞窟に泊まるなんて経験、他ではそうそうできないのではないでしょうか?
日中、博物館見学や周辺散策で、サッシについて学んだ後ですと、洞窟ホテルとは一体どんなところだろうと気になるのはやまやまですが、意外にもとてもハイレベルなホテルが揃っています。
お部屋は、とてもモダンで洗練された内装となっており、夏はひんやりと涼しく、冬はほんのりと暖かい快適な環境です。ベッドルームやバスルームもドアで仕切られることないユニークな造りで、洞窟に住居していた人々の生活に想いを寄せながら過ごすことができます。
観光に力を入れているため、周囲にはレストランやバーも多くあります。マテーラ名物のマンテーカというチーズはぜひお試しあれ。なんとチーズのなかにバターが入っており、こうすることでバターの中に雑菌が入らず、保存にも最適という、土地ならではの知恵が詰まった食べ物なのです!バターにチーズ、ダブルで楽しめる美味しさです。
写真のように、サッシの丘の上にあるのが新市街です。新市街は、よく見られるイタリアの地方都市といった感じで、人々が多く行き交う活気ある街です。
洞窟住居群は、夕暮れ時は、明かりがもれ、ますますミステリアスなムードを漂わせているので、ぜひ一泊して、その雰囲気を楽しんでください。マテーラは、この地方きっての一大観光地ではありますが、夜間はサッシには街灯も少なく、空き家になっている住居が多いので、遅い時間にはあまり出歩かないほうが良いでしょう。
マテーラへのアクセスは、あまり良いものではありません。個人で行く方法としては、ローマやナポリからのバスを利用するのが効率的です。また、アドリア海側の街バーリから電車でアクセスすることができます。
最近では、南イタリア周遊が人気になってきており、アマルフィやアルベロベッロなどと組み合わせたツアーがたくさん組まれているので、それらに参加するのが最も良い方法でしょう。
いかがでしたでしょうか?
歴史の深さをまざまざと感じさせる、奇妙なサッシ群の姿に、少しゾクッとする半面、冒険心をくすぐられた方も多いのでは?南イタリアは、その他イタリアの有名都市とは違った、斬新な魅力を感じられる地域がたくさんあり、まさに通向けの旅行先といえるでしょう。
イタリア旅行の際は、ぜひ、南イタリアにも足を運ばれてみてください。
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この記事を書いたナビゲーター
橘 凛
イタリア在住ライターの橘 凛(たちばな りん)です。南欧をメインに、ヨーロッパ最新情報を現地の声たっぷりにお届けします。いつもよりちょっと贅沢したいセレブな旅、短時間でもフットワーク軽く効率的に楽しむ…
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