地元の人から「大聖堂」と呼ばれる「アントワープ中央駅」は、アントワープの街中でもひときわ際立つ存在です。これはベルギーの建築家Louis Delacenserieにより設計されたもので、イギリスに次いで世界で2番目に産業革命を成し遂げたベルギーらしく、18世紀半ばに起こった産業革命と1885年のパリ万国博覧会を経て、1895年から着工されたものです。
駅は正面部分であるホール上の巨大なドームと、列車ホームの部分で構成されています。正面部分はフランスのヴェルサイユ宮殿でも使用されている、ベルギー特産の重厚な色大理石、そしてホーム部分は産業革命を象徴する、当時の最新技術であった鉄とガラスが多用されています。着工当時からまさに、伝統の職人技と最新技術が融合された斬新な建築であったに違いありません。
ここ「アントワープ中央駅」は映画「The Expatriate」をはじめ、数々の撮影舞台として選ばれている、ヨーロッパらしい重厚な造りが特徴の駅です。その大理石の量感は迫力に満ち、まるで彫刻作品を見るようです。
対して透明のガラスのホーム屋根と、それを支える細い鉄材は女性的で、1925年のパリ万国博覧会で花開くアール・デコへとつながる繊細なデザインで、それぞれをより魅力的に見せています。
この「アントワープ中央駅」は、通常利用される地上階だけでなく、近郊線、都市間線、地下鉄、高速列車タリスなどが、階により分かれて利用されています。各階に発着する列車を地上階から眺めると、ここからまた見知らぬ土地に出発したくなりますよね。
駅の地上階には、かつて王族が列車を利用する際の待合室であったという「ル・ロワイヤル・カフェ(LE ROYAL CAFE)」があります。駅の建物の素晴らしさにも増して、人混みの公共の場を避け、白と金色に統一された優雅でゆったりとしたプライベート空間で過ごす時間は、忘れられない旅の思い出になります。
建築当時の最新のアイデアが込められた設計図をここまで再現できたのは、ヨーロッパの長い歴史の中で、素材を扱う職人達の飛びぬけた力量があったからです。その意味で、この駅はアントワープを愛する人々の手による、伝統技術と最新テクノロジーが結集した芸術作品であると言えます。
尚、駅の左には世界最古と言われる、王立動物教会が運営する「アントワープ動物園」があります(写真左下はその正門部分)。また日本人には馴染み深い『フランダースの犬』に登場するルーベンスの絵が見られる「ノートルダム大聖堂」へも、ここでの下車となります。
ベルギーで観光地と言えば、ブリュッセルの「グラン・プラス」と「マヌカンピス(小便小僧)」がまず思い浮かびます。
ベルギーの首都ブリュッセルは、EUの本部があることからヨーロッパの政治的首都でもありますが、ベルギー建国に際しての複雑な政治的背景もあり、フランダース語圏である北西部「フランダース地方」とフランス語圏の南東部「ワロン地方」、元々フランス語圏の飛び地領であった「ブリュッセル首都圏」の三連邦制に移行しつつある今、両民族を抱える首都ブリュッセルは、古き良き時代から変化しつつあります。
巨大観光地としても国際色豊かなブリュッセルに対し、アントワープはむしろ地元の人達が普通に暮らす、普段通りの街という感じでしょうか。それぞれの土地の良さを感じながらの街歩きの出発点として、フランダース、そしてベルギーの誇りが終結したベルギーの北玄関「アントワープ中央駅」は必見の駅です。
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