日本橋から、東京の過去・現在・未来を60分クルージング!

| 東京都

| 旅の専門家がお届けする観光情報

日本橋から、東京の過去・現在・未来を60分クルージング!

日本橋から、東京の過去・現在・未来を60分クルージング!

更新日:2014/11/10 16:13

カナマル トモヨシのプロフィール写真 カナマル トモヨシ 航海作家、船旅ジャーナリスト

あまり意識されることはありませんが、東京都内には多くの川が流れ、運河が張り巡らされています。
江戸の昔から日本の交通の中心だった日本橋。
いま、そこはさまざまな会社による川・運河クルーズの発着ステーションとなっています。
そのなかでも江戸の面影を残す下町と、2020年の五輪に向けた新たな顔をわずか60分で体験できる船旅を紹介したいと思います。

タイムマシーンならぬ「エスエスNANO」号で日本橋から時間航海へ

タイムマシーンならぬ「エスエスNANO」号で日本橋から時間航海へ

写真:カナマル トモヨシ

地図を見る

今回紹介するのは(株)東京湾クルージングの「日本橋・東京港めぐり60分コース」です。
東京湾クルージングではこのほかに「日本橋・隅田川めぐり45分コース」を実施しています。
日によって運航本数も異なりますが、45分コースが1日に複数回実施なのに対し、60分コースはだいたい1日1本という割合で行われています。
運賃は45分が1500円、60分が2000円です。
乗船の事前予約は行っておらず、その日の始発便の1時間前から日本橋のたもとにある「日本橋船着場」でチケットを売り出します。

クルーズに使用されるのは「エスエスNANO」号。
オープンエアー型のリバークルーザーです。
屋根がないため、天候によっては運航が中止されることもありますので、空模様が怪しいときは問い合わせるのがベターでしょう。
また、定員40名とやや少なめのキャパシティのため、とりわけ週末はすぐに満席となってしまうこともありますので、ご注意ください。
この「エスエスNANO」にはお手洗いも完備され、快適なリバークルーズを保証してくれる船となっています。

45分コースも素敵ですが、東京港にまで足を伸ばす60分コースは「隠れたオススメクルーズ」と言ってもいいでしょう。
というのも、わずか60分の船旅で古くからの下町情緒と未来の東京をまとめて見ることができるからです。
そう言う意味で「エスエスNANO」は、水辺を行くタイムマシーンかもしれません。
それでは日本橋から時間航海に出かけましょう!

頭上すれすれの橋をくぐって日本橋川と隅田川から東京見物

頭上すれすれの橋をくぐって日本橋川と隅田川から東京見物

写真:カナマル トモヨシ

地図を見る

日本橋船着場を出発した「エスエスNANO」はまず、目の前にある日本橋をくぐります。
日本橋は渡るものばかりだと思ったら大間違い。
船にはガイドが乗り込み、日本橋などこれからくぐってゆくさまざまな橋、さらに川や運河とその周辺の地域についての歴史やうんちくを、軽妙な語り口で語ってくれます。
また、東京に暮らしている人でも「へ〜」「ほほう」と思わずうなってしまうようなトリビアがガイドによって次々と明かされていくのも、このクルーズのだいご味。

だいご味と言えば、画像のような橋の通過も忘れてはいけません。
頭上すれすれを通過しますが、リバークルーザー「エスエスNANO」なら衝突の心配は無用。
橋を渡っていく人々や、河岸を歩く人たちが船に向かって手を振ってくれ、乗客もそれに対して手を振り返すという光景も珍しくありません。

「エスエスNANO」は一度くぐった日本橋を、折り返して再びくぐり、日本橋川を下ってゆきます。
江戸橋、鎧(よろい)橋、茅場(かやば)橋、湊橋、豊海(とよみ)橋とそれぞれ個性的な橋をくぐり、隅田川に合流。
清洲橋の背後には新たな東京のランドマーク・東京スカイツリーも見えますので、ここはシャッターチャンスです。
永代(えいたい)橋をくぐり終えると、目の前にはまるでニューヨークのマンハッタンのような大川端リバーシティ21が見えてきます。
この東京マンハッタンを右手に行けば、隅田川とはお別れして晴海運河となります。

もんじゃタウンをぬけるとそこは・・・2020年五輪選手村だった

もんじゃタウンをぬけるとそこは・・・2020年五輪選手村だった

写真:カナマル トモヨシ

地図を見る

隅田川リバークルーズから晴海運河さらに朝潮運河クルーズと、新たな局面に入った「エスエスNANO」。
45分クルーズは運河に入らないコースのため、ここからは60分クルーズじゃないと見ることができません。
右手には「もんじゃタウン」として有名な月島の町並が望めます。
月島に行ったことがある人は多いと思いますが、水面からこの下町を眺めるという珍しい体験をした人はまだまだ少ないのではないでしょうか。

いっぽう左手にはそんな下町情緒とは対照的な未来都市が現れ始めます。
3棟の高層ビルがそびえ立つ晴海アイランドトリトンスクエアです。
トリトンブリッジ、黎明(れいめい)橋をくぐると、住友不動産が現在建設中のツインタワー「晴海ドゥ・トゥール」が見えます。
このように新しい東京風景が続く朝潮運河ですが、その最後に左手に見えてくるのが晴海客船ターミナルです。
その周辺はなんの変哲もない空き地が広がっています。
実はここが、2020年の東京五輪で選手村となる空間なのです。

目の前にレインボーブリッジが迫ってきたとき、ここはもう東京港です。
江戸時代後期の思想家・林子平(はやししへい/1738〜93年)はその著『海国兵談』の中でこう書いています。
「江戸の日本橋より唐(中国)、阿蘭陀(オランダ)迄境なしの水路也」
首都高速道路にふたをされてしまい、空も見えなくなってしまった現在の日本橋では、日本橋川が遠く海外にまでつながっていることは非常に想像しがたいことに思われます。
でも、このクルーズでは、林子平の言葉が少しだけ実感できるような気がします。
そして林子平の時代から200年以上が経過した2020年、海を望む晴海は五輪の選手村という世界で最もインターナショナルな空間に変貌します。
日本橋は中国やヨーロッパとつながっている、と言った林子平も、さすがにここまでは予想しなかったのではないでしょうか。

新国立競技場〜虎ノ門ヒルズ〜選手村をつなぐ「五輪の架け橋」も必見

新国立競技場〜虎ノ門ヒルズ〜選手村をつなぐ「五輪の架け橋」も必見

写真:カナマル トモヨシ

地図を見る

さて、漂う潮の香りをかぎながら、「エスエスNANO」はレインボーブリッジに背を向けて隅田川の河口に向かいます。
左手に東京タワー、そして伊豆諸島に向かうフェリーや高速船が停泊する竹芝さん橋を見ながら進んでいく「エスエスNANO」の前に一本の架け橋が現れます。
この橋、2014年5月に仮設工事が完了し、同年9月30日に名前がついたばかり。
実は、まだ工事中なのです。

その橋の名は「築地大橋」。
築地と言えば中央卸売市場がその代名詞でしたが、2015年度内に豊洲新市場に移転の予定です。
その代わり、新しい橋に「築地」の名が残されることとなります。
築地大橋を走る道路は環状第2号線。
その先には2014年6月11日に開業した虎ノ門ヒルズがあり、さらに進んで四ッ谷から西に向かえば東京五輪のメーンスタジアムである新国立競技場!
いっぽう、この環状第2号線は晴海にも伸びます。
ということは新国立競技場と選手村をつなぐオリンピックロードであり、築地大橋は「五輪の架け橋」という役割を果たすことになります。
開通は2016年の予定です。

亀島川を通って日本橋にゴールイン

亀島川を通って日本橋にゴールイン

写真:カナマル トモヨシ

地図を見る

再び隅田川に戻った「エスエスNANO」は佃(つくだ)大橋をくぐると、いよいよ最後の見どころへと進んでいきます。
大きな水門の下をくぐって、「エスエスNANO」が入り込んだのは亀島川。
いまくぐった水門も「亀島川水門」といいます。
この亀島川、約1キロメートルほどの短い川ですが、江戸時代には「江戸の海の玄関口」だったところです。
江戸に入る船はこの川にある御船手奉行所で検査を受けねばならなかったのです。
この川には5本の橋が架かっており、いずれも橋と水面の間隔が短いため、乗客はこれまで以上にすれすれ通過のスリルが味わえます。
そして日本橋水門を通過すれば亀島川は終わり、再び日本橋川に入ります。

近い将来、首都高速道路のない日本橋川をクルーズできるかも?

江戸の海の玄関口だった日本橋川や亀島川界隈、そして下町情緒あふれる月島。
2020年東京五輪の開催決定を機に再開発が一気に進む晴海など臨海部。
江戸情緒と近未来への息吹をあわせて感じられる60分クルージングの大団円は、首都高速道路というフタによって青空と隔絶された日本橋川の船旅でした。

でも、この光景もひょっとしたら変わるかもしれませんよ。
日本橋船着場には「日本橋の景観復興を求める署名活動実施中」というのぼりのあるブースがあります。
日本橋川が首都高速道路によって覆われてしまう契機となったのは、1964年の第1次東京五輪開催でした。
五輪に間に合わせるため、土地収用の手間がかからない川が高速道路建設ルートとされたのです。
そしてこれがきっかけで、東京は江戸時代以来の「水運の街」から「自動車優先の街」へと転換を遂げたのでした。
高度成長時代まっただ中に開催された第1次東京五輪でしたが、それから半世紀以上を経て再び開催される五輪を取り巻く人々の価値観も大きく変わっています。
日本橋川から空を奪ってしまったのが五輪だったなら、それを取り戻すのも五輪。
青空の下にある日本橋川と、それに架かる日本橋の美しい景観を見てみたいと思う人も決して少なくないのでは。
乗船者に対して署名は強制はされませんが、その思いに賛同される方は署名用紙にペンを走らせてみるのもいいでしょう。

五輪という世界的なイベントの開催が決まり、東京はかつてない勢いで変貌している途中です。
そんな変化を、江戸の昔から変わらぬ川の水面から、ゆったりと眺めてみる。
こんな時間、ちょっと持ってみたいものですね。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/10/17 訪問

- PR -

条件を指定して検索

トラベルジェイピーで一緒に働きませんか?

- PR -

旅行ナビゲーター(在宅ライター)募集中!
この記事に関するお問い合わせ

- PR -