ベルギー南西部に位置するワロンは、アルデンヌの高原の自然資源に恵まれた地域です。元々アルプス山脈につながる、海底の隆起によって高原になった地域で、地底部分は大理石、石灰石、石炭、水などの資源脈に恵まれ、地上部分はその土地に根ざした豊かな生植によって、木材、農業、酪農などの第一次産業に適しています。
つまり、新鮮で美味しい食材の産地でもあるのです。例えば、ここでは狭い牛舎で牛を飼う必要はありません。放牧して、自然のままの草を食み、ストレスの無い中で育てれば、肉も牛乳もおいしいし、そこから加工されるハムもチーズも美味しいのです。
またフランス料理に欠かせないジビエ達も、目の前の森にいます。ここでジビエは食べるだけでなく、森の中を歩けば出会うこともある、身近な野生動物です。
ひたすら森と草原の緑の水平線が続く、非常に素朴なところですが、現在はそれが転じて観光資源となり、ジビエ料理で世界に知られるデルビュイに代表されるように、数々のミシュラン・ガイドのスター付きレストランを抱え、一年を通してヨーロッパ中から主に家族連れの観光客がヴァカンスに訪れ、年々増加の傾向にあります。
ベルギーの首都ブリュッセルにある、19世紀のアール・デコを代表するデザイナー、オルタ邸は、その歴史的資料価値から世界遺産に登録されています。
この「ホステルリ・ディスパ」のレストランでは、産業革命後の19世紀に、製鉄の技術革新から、その技術が美術的に応用されるようになった、古きよき時代の面影を見ることが出来ます。
庭園に面した壁面と天井に施された優美なステンド・グラスをはじめ、この地方特産の鉄製また大理石の装飾暖炉、また床面の大理石のモザイク等、インテリアのデコレーションが美しいレストランです。
ワロン地域はフォアグラの生産もしており、「ホステルリ・ディスパ」のあるワルクールの町にも生産者から直接購入できる直売所があります。
フォアグラは世界三大珍味のひとつですが、日本人にはやや脂っこいイメージがあるのでは?
でも、新鮮なフォアグラは全然そんなことありません。むしろさっぱりと味噌のような旨みとコクを感じさせ、大変美味しいものです。
(写真はフォアグラとホタテのカルパッチョ)
「ホステルリ・ディスパ」の料理は、とにかく地元産の食材にこだわり、それを生かすために最低限しか手を加えず、また火を通さない技術とセンスが光ります。
フランス料理といえば、複数種類のスパイスやワインで創り出される、こっくりした味わいのイメージがありますが、現代フレンチは日本の会席料理の影響なども受けていることから、眼にも美しく、シンプルです。
さらにワロン地域が残しているのは、ブリュッセル近くのワーテルローでナポレオンが敗戦した1813年以前の、古いフランス料理のスタイルです。
バターひとつとってもフランスのエシレのような醗酵バターも含め、産地によって味と風味の違いがあります。さらに生食用、加熱用と分かれ、それぞれで使い方が異なります。食材のひとつひとつが伝統に沿って丁寧に扱われ、素朴ながらそれぞれの素材の良さを最大限に引き出す工夫がなされています。
フランス料理は、食材とフルーツのあわせ方が絶妙な料理でもあります。
地元産の新鮮な季節の素材を使い、無駄なものを全てそぎ落として、ひたすらシンプルで美しい食事は、さすがにミシュラン・ガイドで2スターを獲得したレストランです。フレンドリーでありながら、洗練された本物のレストランのサービスはさすがです。
ミシュラン掲載レストランと言うと、日本では高価で敷居が高いイメージがありますが、ここは平日のランチなら26ユーロで楽しめます(ドリンクは含まず)。
本当においしい料理を食べたときは、驚きで言葉にならず、むしろ人は沈黙します。
ここで食事をすること自体がひとつの体験となる、おすすめのレストランです。
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