写真:橘 凛
地図を見るサンジミニャーノは、町全体が城壁で取り囲まれている町。そのため、すべての訪問客は、城壁にある門から入ります。門は全部で5つあり、南門がサンジョヴァンニ門、北門がマッテオ門。多くの観光客は、南門から入ることになります。メインストリートはサンマッテオ通りで、ここが後述するフランス街道にあたります。サンジミニャーノ繁栄の鍵となった道です。
町自体はとても小さく、数時間あれば全体を見回ることができるでしょう。ここで暮らしている人々は千人もいないと言われています。中心地には、チステルナ広場とドゥオモ広場があり、周辺には塔が建ち並んでいます。ちなみに、チステルナとは井戸という意味で、今も広場の中心には井戸を見ることができます。
9世紀から13世紀にかけて発展したといわれるサンジミニャーノですが、城壁内の建物は、ほとんどが繁栄を極めた14世紀までのものであり、現在の町並みは当時とほぼ変わっていないと言われています。まさに、町そのものがタイムカプセルなのです。
写真:橘 凛
地図を見るサンジミニャーノは、フランス街道(フランチージェナ街道)と呼ばれる、ローマ・カトリックの三大巡礼道上に位置します。フランス街道の起点は、はるか英国イングランドのカンタベリー(この町も中世を代表する巡礼地)で、なんとその距離は1600キロにも及びます!ピサとフィレンツェを結ぶピサーナ街道も交わる好立地にあったサンジミニャーノは重要な流通ポイントとして発展し、町は莫大な富を得ることになります。
ひとたび富を得ると、高い塔を建造したくなるのは、人間の性なのでしょうか?
当時の富豪たちは、競い合うように高い塔を次々建て、ピーク時には小さな町の中に72本もの塔がひしめきあい、サンジミニャーノの空を支配しました。その後、内部の権力争いとペストの大流行という運命によってサンジミニャーノは急速に衰退、フィレンツェ共和国の統治下に入ることになります。
1990年には、町ごと世界文化遺産に登録され、世にその名を知られるようになりました。現在は、塔は14本のみが残り、行政と住民によって大切に保存されています。写真は、町中で最も高いグロッサの塔(高さ54メートル)から見下ろした、サンジミニャーノの風景です。
写真:橘 凛
地図を見るサンジミニャーノに訪れたら、絶対におすすめしたいレストランがあります。
それが「ベルソッジョルノ」というレストラン。窓からは、はるかトスカーナの田園と平原が見渡せます。サンジミニャーノの町と同じく、おそらく何百年を越えて変わらない風景なのでしょう。
眺望もさることながら、トスカーナ料理の美味しさも負けていません!写真は、牛肉のラグーのラザニアです。トスカーナ名物である牛肉やポルチーニ茸、トリュフ料理の何層も深みのある味わいに、イタリアの食文化に感心することになるはずです。また、フランス街道に富をもたらした要因のひとつであり、サンジミニャーノの特産物ともなっている香辛料のサフランがあります。サフラン料理もぜひ試してみましょう。
また、サンジミニャーノには、ジェラート世界大会で2度も優勝に輝いたジェラート屋さんがあります!チステルナ広場に行けば、行列しているジェラート屋さんがあるので、すぐにわかります。ドンドリさんという方が経営する「ジェラテリア・ディ・ピアッツァ」というお店で、味の良さと種類の豊富さが有名で、日本のテレビでも何度も放映されているのだとか!どれも美味しそうで迷ってしまいますが、ピスタチオ味がおすすめだそうです。
写真:橘 凛
地図を見る標高324メートルの丘の上にあるサンジミニャーノは、遠くから見てもとても目立ちます。サンジミニャーノ周辺には、オリーブ畑・ブドウ畑が広がっており、それらを経営する農家に宿泊するアグリツーリズモがたくさんあります。また、トスカーナ地方には多くの温泉地があり、豊かな土地であることを実感できます。
去り際に、サンジミニャーノの町を振り返ると、城壁の中にそびえる塔の姿が、見る者の胸に迫ります。この町は、14世紀以降の衰退期からは、流通基点としての存在感も失い、近代化から完全に取り残されてきました。が、それゆえに、今も全く変わらぬ姿で、私達を出迎えてくれるのです。
サンジミニャーノ、いかがでしたでしょうか?
今回、この町の名を初めて知った方も、ここがイタリア珠玉の古都だということがおわかりになったことでしょう。
サンジミニャーノの衰退後に花開いたフィレンツェやシエナのような、現代も活気あるトスカーナの町は多くあります。が、中世から時間が止まっているような感覚を味わいたい方には、この町もあわせて訪問することを強くおすすめします。
華やかさはないけれど、訪れた者の心の底にずっと残る町。
フランス街道のかつての賑わいに想いを馳せながら、サンジミニャーノを訪れてみませんか。
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(2024/12/14更新)
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