写真:乾口 達司
地図を見る数々の骨董を収集したのは、白鶴酒造の創業家である嘉納家に婿養子として入った第7代・治兵衛(1862年〜1951年)。治兵衛が骨董に入れ込んだ背景には、みずからの出身家が奈良・興福寺唐院お蔵預かりの家柄であったこととも深く関わっています。実際、その目利きは素晴らしく、治兵衛が蒐集した骨董のうち、現在、2点が国宝、22点が国の重要文化財に指定されています。文化財クラスの骨董が多い点からも、治兵衛が偉大な実業家であるとともに、当代随一のコレクターであったことがおわかりになるでしょう。
住吉川に沿って山手方面へと進むと、山腹にご覧の建造物が見えてきます。これが白鶴美術館の本館。鉄筋コンクリート造り。昭和9年の建造で設計・施工は竹中工務店。現在、登録有形文化財に指定されています。なかでも、注目したいのは、本館の前面に立てられている八角燈籠。この八角燈籠、どこかでご覧になった記憶がありませんか?実はこれ、奈良・東大寺大仏殿の前面に立てられている国宝・八角燈籠(奈良時代)を模したものなのです。八角燈籠は当館のオープンにあわせて建造されたもので、発願者は治兵衛その人。大仏殿の八角燈籠を模したものをわざわざ設置したことからは、治兵衛が当館を大仏殿のような立派なものとして後世に伝えたいという思いがあったことがうかがえます。
写真:乾口 達司
地図を見る正面入口側に立つ事務棟(受付棟)と展示室のある本館とは長い渡り廊下によって結ばれています。ご覧のように、長大でふかふかの絨毯が敷かれており、観覧者はその上を歩きながら本館へと進みます。したがって、つい足許ばかりに気をとられてしまいがちですが、天井の方もご覧ください。天井には何本もの梁が均等にわたされている上、ところによっては蛙股(蛙が足を広げたような形をしている建築部材)まで設けられています。もちろん、鉄筋コンクリート造りなのでこういった部材をわざわざ置く必然性はないのですが、その意匠からも伝統的な和風建築がひしめく奈良の地で生まれ育った治兵衛の、伝統文化に対する強いこだわりが感じられるでしょう。
写真:乾口 達司
地図を見る天井を見上げる際、見落としてならないのは、天井から吊り下げられている照明器具の意匠。よく見ると、そこには白鶴酒造の代名詞というべき鶴が描かれています。鶴の意匠は各所に見られ、2階展示室の天井に描かれているのもやはり鶴。釘隠しの意匠もやはり鶴!日本を代表する酒造メーカーとしての誇りが感じられますよね。
写真:乾口 達司
地図を見るしかし、当館の意匠は決して和風一辺倒ではありません。そのことが顕著にうかがえるのは、事務棟の内部。ご覧のように従来の和風建築には見られない西洋風の意匠がほどこされており、当館の意匠が和洋折衷のスタイルであることを教えてくれます。どこにどのような意匠がほどこされているのか、実際に当館に足を運び、ご自身の目でお確かめください。
写真:乾口 達司
地図を見る写真は本館1階から2階へと続く階段付近を撮影したもの。ご覧のように、西洋式の椅子やテーブルが並べられた休憩スペースが設けられていますが、年代ものの椅子やテーブルが古き良き時代の西洋を印象付け、何ともゴージャスな気分にひたれます。階段の手摺も重厚そのもの。壁にめぐらされた意匠ともども、ぜひ、手摺に触れながら、2階の展示室へと進んでください。
白鶴美術館の意匠がいかに豪壮で華麗であるか、おわかりになられたでしょうか?本館の眼下には神戸の街並みが広がり、眺望も素晴らしい!の一言に尽きます。道路を挟んだ向かいには、平成7年、開館60周年を記念して建てられた新館(日本初の絨毯専門美術館)もあり、本館とはまた異なる現代的な意匠が随所に凝らされています。神戸を訪れた折、白鶴美術館に足を運び、そのすぐれた建築美をご堪能ください。
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(2023/11/30更新)
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