写真:平川 郁世
地図を見るバーゼルは、フランス・ドイツと隣接する町。「あしたは歯医者だから、ドイツに行ってくる」なんて言うのがごく当たり前な土地なのです。
国境を通過するには、税関で入国審査官によるパスポートチェックや、口頭質問があったりしますよね。しかしここには標識が1本、ぽつんと立っているだけ。税関と書いてあるものの、税関審査官はおろか建物すらありません。
初めて訪れた人がつい撮りたくなる写真は、お決まりの このポーズ。こっちの森がスイス、あっちのとうもろこし畑がフランスというわけ。一見しただけでは、この地理的要因がまったくわからないからです!
二国間を隔てる道を歩きながら、フランス→スイス、スイス→またフランスと、1分間に何十回と瞬間移動することも可能です!?
アクセスは簡単なので、バーゼル観光の合間にぜひ足を伸ばしてみましょう!
バーゼルの中央駅前から路面電車10番(Rodersdorf方面)に乗り、オーバーヴィル(Oberwil)まで約20分。そこから丘まで歩いて登るか、またはバス64番(Bachgraben方面)に乗って3つ目の高校前(Gymnasium)で下車。
丘は東西の両方にありますが、フランス国境があるのは西側にある丘です。もしも分からない場合は、「ツィーゲライ(Ziegerei)はどちらですか」と尋ねてみてください。急勾配ではないのですが、体力に自信のない方、時間がない方はまずバスで高度を上げてから、下車して丘を歩くといいですね。
高校前で降りると、周辺は畑、空き地と牧場、その向こうには森林が見えます。もとは人工林だったそうですが、とても人工には見えない、うっそうと茂った雑木林です。畑は季節により、ヒマワリなど摘み取りのできる花畑もあり、開花の時期には色がすっかり変わります。
空き地には沼がいくつかあって、ヒキガエルなどいくつかの貴重な動植物の生息空間として、自然保護区に指定されています(周辺の立ち入りには制限がありますが、ベンチに座って楽しめばOK)。農家が点在し、また丘の向こうの街並みを見渡すこともできます。
このように変化に富んだ眺めが、時間帯・季節・天候によっても異なり、実にさまざまな光景を楽しむことができるのです。加えて、空気の匂い(動物たちの匂い?)も感じてみてください。車道が遠くなると鳥の声、そして犬の吠える声が反対側からこだまして聞こえてきます。
ヨーロッパの街並みにはない電柱や電線が、この丘にはあります。ヨーロッパの電柱のほとんどは地下に埋めてあるのですが、このような田舎だと地上に出ていることがあるのです。日本人にはなじみの風景ですが、写真撮影の際には写らないよう気をつけたほうがいいかも?
写真:平川 郁世
地図を見る歩くコースは特に決められていません。各自が好きなように歩いてみましょう。オーバーヴィルに着いたら、役場(下記リンク参照)に寄って、地図をもらっておくといいですね。どのスタッフもとても親切に対応してくれます。英語も通じますので、おすすめのウォーキングコースなどを聞いてみましょう。
この丘には、乗馬センターがいくつかあります。馬は普段、ここで飼われていますが、毎日のようにオーナーがやって来て、丘の上での乗馬を楽しむのです。あぜ道や森の中で常に乗馬者に行き交うので、非常に安全なコースといえます。馬専用で人は通行禁止の道や、その逆で馬が通れない道もあります。
もしも道に迷ったら、馬上の人に聞いてみてください。大丈夫、誰も急いでいないので立ち止まって親切に教えてくれます。たいてい英語が通じますし、そうでなくても指差して説明してくれるはず。彼らは地図など持っていませんが、みんな頭の中にしっかり地図が刻み込まれています。時には馬の方向を変えてまで、一緒に歩いて連れていってくれたりします。
ただ問題は、道のあちこちにある馬の落とし物です・・・。よく注意して歩きましょう!
馬のほかに、この辺で飼われている動物は 牛、ニワトリ、ダチョウ、ガチョウ、ウサギ、ヒツジ、そして農家のネコや犬など。犬の散歩には常に出会いますが、秋から冬にかけて犬はつながれていないことが多いです。
牛や馬を囲っている柵には、電気が流れている場合がありますので、特に子どもが近づく際には充分気をつけましょう。
また、森の中には野生動物も。運がよければ、鹿に出会えます!人に慣れていないので、向こうから逃げていきますが・・・。ほかにも、リス、ハリネズミ、キツネ、アナグマ、野ウサギ、イノシシ、テン、ネコ、野ネズミなど。危険な動物はいないので安心してください。夜行性も多く、出会う機会はそれほど多くないのですが、よく観察してみましょう。鳥類も豊富にいますが、昼間はフクロウに出会えなくても、畑にコウノトリやサギなどが来ています。
なお、森の中にも自然保護区があり、立ち入りが制限されているところがあるので注意してください。
丘の上はなだらかで、高低差はあってもほんの数メートル。畑と畑の間のあぜ道は、たまにトラクターの通行があるものの、ウォーキングは認められています。ところどころにベンチがあり、疲れたら休憩もできます。視界が開けているので空が大きく見渡せ、場所によっては地平線もきれいに見えます。
畑の周辺を昼間に行き交うのはたいていウォーカー、ランナー、赤ちゃん連れ、子どものプレイグループ、そして犬の散歩など。小学生たちが理科の授業などで来ていることも。週末になるとカップル、家族連れ、バードウォッチャーまで。特に春から秋にかけてお天気がよい日曜となると、サイクリングも加わって、道も混雑するほど?!
山の挨拶がここでも交わされます。グリュエッツィ(Grüezi!)とスイスドイツ語で言えば、笑顔で返してくれることでしょう。
高校前の次のバス停(Im Buech)近くの道路わきに、「カレン(Kallen)」という無人の野菜直売所があります。畑のすぐ横にある店には、収穫したばかりの野菜、果物、卵などが常時運ばれてきます。店の奥に計りがあり、計算用紙、ボールペン、電卓も。壁にかかった箱に、料金を入れてください。買った品を持ち帰るための袋も用意されています。
森の入り口にあるバーベキュー場は、空いていれば誰でも使えます。どんなに寒くても野外バーベキューをするスイス人に習って、ここはあなたも丘に向かう前にソーセージやパンを買っていきましょう! その辺にある木の枝に刺して焼けば大丈夫。マッチかライターを忘れずに。
写真:平川 郁世
地図を見るこの森を抜けるとフランス、ノイヴィラーという村に着きます。畑や森などの風景となると、両国間に違いは見えないというのが実際のところですが・・・。
フランス側も農村なので、行き交う人はそれほど多くありません。いや、挨拶を交わすとわかるのですが、スイスから来たウォーカーが実は多かったりします!
フランスへの行き方はいくつかありますが、わかりやすいのはノイヴィラーシュトラッセ(Neuwilerstrasse)を進んでいく道です。標識の立つ国境に着きますから、そのままル・ドゥ・オーバーヴィル(rue d’Oberwil)を15分ほど歩くと、ぽつぽつとある農家を過ぎて、レストランにたどり着きます。実はこれが、バーゼルの公式レストランガイド(の中の、ドイツ・フランスのページ)に掲載されている、レストラン「スターク(Starck)」なのです。
オーナー兼シェフのガイガー氏を始め、スタッフは皆ドイツ語も堪能。フランス人はもちろん、スイス人、ドイツ人も訪れるといいます。いずれもウォーキングの際に立ち寄る人が多いので、朝の10時から夜中の12時まで営業(ただし水・木および金曜のランチは休業)。
フランス・アルザス料理を中心とした多国籍料理ですが、名物は「オべリックス」というステーキ(写真)。とにかくボリュームたっぷりで、値段もお手頃!
写真:平川 郁世
地図を見る写真:平川 郁世
地図を見る空がよく見えるこの丘は、夕焼けスポットでもあります。日没の時間帯になると、カメラを持った人によく出会います。この辺りはひこうき雲がきれいに見えるのですが、それをカメラに収めると、なぜか彗星か流れ星のように写るのです。静止しているので撮影も簡単。ぜひお試しください!
丘の上は基本的に街灯というものはないので、ご注意! 日が沈んだら、暗くなる前に丘を下りましょう。
帰りはぜひ徒歩で下山してみてください。丘の上はセレブの地区で、豪邸が並んでいるので家のウォッチングも楽しいですよ。民家の庭かと思いきや、細くても立派な公道である場合も。「Privatweg」と書いてある私道には、立ち入らないようにしてください。知らない道をぶらぶら行っても、とにかく下っていけば車道に出ます。バスが何本か通っていますし、車道に並行して路面電車も走っています。
それでも、夜の森が見てみたい方へ。フクロウなど夜行性のバードウォッチングのイベントを、オーバーヴィル野鳥の会が企画しています。詳細は下記のリンクをご覧ください。
バーゼルラント州(バーゼルの都市部に対する、田舎部という意味)の観光局が発行するウォーキング地図には、ウォーキングのモデルコースがいくつか示されています。ところがそれらは、無限に存在するルートのごくごく一部にすぎません! 実際に歩いてみると、あちこちにいくらでも素晴らしい道を発見することができます。
地図を見るとわかりますが、バーゼル中心部からほど近いアルシュヴィル(Allschwil)には広大な森が広がっており、バーゼル市民の憩いの場です。が、そこにわざわざ行かなくても、州のいたるところに手軽な丘と森が点在するので、ウォーキングコースには事欠かないのです。
目印は、黄色い菱形の標識。ウォーキングコース(Wanderwege)に適していますよという意味で、住宅街の舗装道路から畑のあぜ道まで、いたるところで黄色い菱形を目にします。
統計によると、スイス人の実に半数近くが、定期的にウォーキングをしています。
入場無料で年中無休、健康にもよく、色々な発見があって楽しいウォーキング。立派な登山靴やウォーキングポールがなくても気軽にできるので、スイスに来たら必ず試してみることをおすすめします!!
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(2024/9/18更新)
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