比叡山最古の釈迦堂を中心にひろがる荘厳な西塔(滋賀県)の諸堂

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比叡山最古の釈迦堂を中心にひろがる荘厳な西塔(滋賀県)の諸堂

比叡山最古の釈迦堂を中心にひろがる荘厳な西塔(滋賀県)の諸堂

更新日:2014/11/30 10:08

ナツキのプロフィール写真 ナツキ きのこの文化研究家、博物学者

東塔の北1kmのところにある西塔は、比叡山でも残存する堂宇の中では最古の釈迦堂を中心に静かな中にも荘厳な雰囲気が漂う、もっとも心なごむエリア。西塔では堂塔巡りはそこそこにして、比叡山の山気を全身に浴び、のんびりと自然を楽しみましょう。

比叡山最古の御堂の釈迦堂

比叡山最古の御堂の釈迦堂

写真:ナツキ

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信長の比叡山焼討ちののちの文禄4(1595)年、秀吉が弟の秀次が園城寺と通じているとの言いがかりをつけて、突然、園城寺の廃絶を命じます。
正式には「転法輪堂」というこの釈迦堂は、その時、園城寺(三井寺)の弥勒堂(金堂)を強制的に移築再建したものと言われています。
山中では最も古い鎌倉時代の建造物とされていますが、そのたたずまいの美しさは格別です。

なお、本堂脇で売られている「叡山香」は、比叡山オリジナルの線香で絶品です。
本尊は伝教大師自ら刻んだ釈迦牟尼仏と伝えられます。
この釈迦堂の右手奥の山中に次項で述べる弥勒石仏が、ひそかに厳と鎮座まします。

釈迦堂の裏山の林の中にある弥勒座像

釈迦堂の裏山の林の中にある弥勒座像

写真:ナツキ

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釈迦堂の裏を右に登ったところを香炉ケ丘呼び、その雑木林の平地に高さ2.5m余りの弥勒石仏が、堂々とした山林修行者のお姿で瞑想にふけっておられます。鎌倉初期の作とみられ、向背裏面には釈迦、文殊、普賢の種字が刻まれ、その下面に経巻を奉納したと思われる穴を設けています。西塔の中心は表向きには釈迦堂、しかし、実際はこの弥勒座像だと筆者は考えています。
また、釈迦堂の前方西側には、江戸時代の仏足石もあります。

山門派、寺門派の抗争のきっかけとなった山王院

山門派、寺門派の抗争のきっかけとなった山王院

写真:ナツキ

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山王院堂は、弁慶が千日修行をしたことで有名であり、その折に直径1.5mはゆうにあろうかと思われる巨木数本の根元から湧き出る水を仏に供えたことから弁慶水と名づけられています。
弁慶地蔵尊が目印のこの弁慶水に黙祷してしばらく行くと山王院に至ります。
第六祖智証大師円珍の住まいで、千手観音をお祀りすることから千手堂の名で知られています。

円珍大師の滅後100年余りののち、円珍派と円仁派の学僧の間で紛争が起こり、円珍派はこの堂から智証大師・円珍の木像を背負って三井寺へ移り住んだと言われています。このお堂は、山門、寺門派の根深い対立のはじまりとなった歴史的にとても重要な場所です。

比叡山のもっとも比叡山らしい自然一杯の西塔エリア

比叡山のもっとも比叡山らしい自然一杯の西塔エリア

写真:ナツキ

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東塔はちょっとにぎやか過ぎ、横川は遠いなと思われる方におすすめのスポットが西塔です。
今紹介した場所のほか、伝教大師・最澄の御廟のある浄土院。信長焼討ちを唯一まぬがれた瑠璃堂。法華堂、常行堂の同形の二堂が渡り廊下でつながっており、弁慶が天秤棒のようにしてかついだとされたこと伝えられる弁慶のにない堂。聖徳太子が杖にしていた椿の枝をさしてかえったところ、根をおろしたと伝えられる千手観音をまつる椿堂などなど、西塔駐車場からさほど遠くないところに見どころは一杯あります。
神仏にさほど関心のない人でも、これらの堂塔をつなぐ途中の参道ではさまざまな野草や小動物に出会うことが出来、慰められます。

おわりに

比叡山は全山、足下には屍と埋経が満たされており「歩く時には経典と屍の上を踏む思いを持ちなさい」と昔聞いたことがあります。埋経を行とした横川の根本如法塔の周りはとりわけそうだと言われています。
世界中のいたるところで魂の平安を得るために、かぞえきれないほどの命が奪われてきました。わが国仏教の母山とて例外ではありません。
そんな、血なまぐさい霊山にも花は咲きほころび、月日はめぐって、怨嗟の声に変わってかぐわしい風や虫の声が耳に届きます。過ち多き人の歴史を、このすがすがしい山巓から眺めるとき、人はつかの間詩人になるのでしょうか。しかし、そのためにこそ、この天空の霊場は必要だったのではないかと思っています。
旅人は誰でも、ここへ来るたびにそんな思いにとらわれることでしょう。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2010/05/23 訪問

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