文化財を堪能して山伏祈祷!兵庫県三木市「伽耶院」の正月風景

文化財を堪能して山伏祈祷!兵庫県三木市「伽耶院」の正月風景

更新日:2023/12/06 14:32

乾口 達司のプロフィール写真 乾口 達司 著述業/日本近代文学会・昭和文学会・日本文学協会会員
兵庫県三木市の「伽耶院(がやいん)」は東播磨屈指の古刹。境内には重要文化財クラスの建造物や仏像が点在していますが、普段は静まりかえっている境内も正月三が日は参詣者で賑わい、数々の文化財を間近で拝観することも可能です。しかも、修験道と深く関わる由緒ある寺院であるということもあり、三が日は山伏によるお祓いやご祈祷も受けられるのです。今回は伽耶院の正月風景をご紹介しましょう。

国の重要文化財に指定されている本堂および多宝塔

国の重要文化財に指定されている本堂および多宝塔

写真:乾口 達司

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伽耶院は天台系修験道の寺院。寺によるいい伝えによると、創建は7世紀半ばの大化年間。天竺から飛来したという法道仙人によって建立されました。当初は大谿寺(だいけいじ)と称していましたが、1681年、後西上皇の勅により、その名を伽耶院とあらためました。伽耶院の名は仏教の聖地として知られるインドの都市・ブッダガヤ(仏陀伽耶)にちなんでいます。

中世には隆盛を誇りましたが、その後、兵火や失火により荒廃。現在の堂塔は江戸時代前期に建立されたものです。写真の手前は本堂。その向うに見えているのは多宝塔。いずれも江戸時代前期の再建で国の重要文化財に指定されています。正月三が日は本堂・多宝塔いずれも開放されており、内部の拝観が許されています。

国の重要文化財・毘沙門天立像は必見!本堂の内部

国の重要文化財・毘沙門天立像は必見!本堂の内部

写真:乾口 達司

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公開されている本堂の内部は内陣と外陣という2つの区画から成り、それぞれは格子戸と欄間とによって分けられています。この形式は密教系の仏堂形式を踏襲しており、天台密教の流れをくむ伽耶院にふさわしい建築様式であるといえるでしょう。

内陣中央には大きな厨子が安置されており、その内部には御本尊の毘沙門天立像がおさめられています。毘沙門天立像は60年に一度だけ御開帳される秘仏。最近だと2010年に御開帳されました。画面の右手に立つ毘沙門天立像は60年に一度しか拝観の許されない御本尊の代わりに造られたお前立ち。あざやかな彩色がひときわ目をひく平安時代後期の作で、現在、国の重要文化財に指定されています。御本尊ほどではないにせよ、こちらも正月三が日など、年に数回しか御開帳されない貴重な仏像なので、仏像ファンの方は特にしっかりご覧ください。

行者堂も訪れよう!山伏によるお祓いとご祈祷

行者堂も訪れよう!山伏によるお祓いとご祈祷

写真:乾口 達司

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修験道の寺院であるだけに、正月三が日には山伏の一団が伽耶院を訪れ、参拝者のお祓いやご祈祷をおこなってくれます。山伏が集うのは境内の一角にある行者堂。参拝者が行者堂の正面軒下に立つ山伏の前まで進むと、山伏は棒の先に御幣のついた「梵天(ぼんてん)」を振りかざし、参拝者を一人ずつお祓いしてくれます。

堂内でご祈祷をしていただく場合は、別途、申し込みが必要ですが、行者を見かけることは稀にあっても、一般のものがお祓いを受ける機会は滅多にないはず。この機会にお祓いを受けてみてください。新年を新たな気持ちで迎えられますよ。

秀吉VS別所長治!三木合戦の惨状をいまに伝える仁王像

秀吉VS別所長治!三木合戦の惨状をいまに伝える仁王像

写真:乾口 達司

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伽耶院は1578年から1580年にかけて繰り広げられた三木合戦の戦場ともなりました。羽柴秀吉の播磨攻めに叛旗を翻した東播磨の雄・別所長治はみずからの居城である三木城に立てこもり、秀吉軍と対峙しますが、そのさなか、別所勢の拠点の一つであった伽耶院は秀吉軍による焼き討ちにあいました。

写真は仁王門に残る仁王像の残骸。ご覧のように胴体部分しか残されていませんが、これは秀吉軍の焼き討ちによるものとされています。三木合戦の惨状がいまも伽耶院に残されているとは、驚きですね。

草引きが入山料!?境内に掲げられた案内板

草引きが入山料!?境内に掲げられた案内板

写真:乾口 達司

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伽耶院の入山料は、写真にあるとおり、雑草10本を引き抜くこと。こんな入山料は全国津々浦々の寺院を探しても滅多にないはず。もちろん、この時期、境内に雑草らしきものは生えておりませんが、その代わり、それ相応の御志を賽銭箱にお供えしましょう。

初詣は伽耶院へ!

文化財の宝庫・伽耶院の正月風景がどのようなものか、おわかりになったのではないでしょうか。車だと山陽自動車道・三木東インターから数分の距離にあり、アクセスも快適。正月は伽耶院に参拝し、貴重な文化財の数々を拝観するとともに行者によるお祓いを受けて、新たな一年をお迎えください。

2023年12月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/01/01 訪問

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