写真:鷹野 圭
地図を見る小合溜(こあいだめ)を抜きにして、水元公園を語ることは絶対にできません。そもそも水元公園はこの小合溜を中心として草地や雑木林などのコンテンツが周囲に散りばめられているのですが、そこに小合溜からクモの巣状に水路が広がり、常に間近に「水」のある環境となっているのです。それは蓮池であったり、釣堀であったり、小川であったり……淡水域で見られる水景観のほとんどすべてが水元公園内に凝集されているといっても過言ではありません。
小合溜は公園の水源……言い換えるならばまさに「水の元」です。その規模は東京都内でもトップクラスであり、それだけに水鳥の飛来数も相当数に及びます。冬場は主にシベリアなどから写真のように多数のカモが飛来しますが、これとて氷山の一角中の一角に過ぎません。到底数え切れるものではないでしょう。
カモの種類は、最も数が多く目立ちやすいと思われるヒドリガモ(オスは茶色い頭にクリーム色のリーゼントという特徴的な柄なので、見分けるのはとても簡単です)を始めとして、マガモ、コガモ、キンクロハジロ、オナガガモ、ホシハジロ、ハシビロガモなどの首都圏で比較的よく見られるカモはほぼすべて小合溜で観察できます。一方、人の立ち入りの少ないバードサンクチュアリや水産試験場跡地の池では、警戒心の強いオカヨシガモなどを見かけることも。同じカモ科でも種によって好む環境が違うので、ぜひ直接見て回りながら比較してみてください。
写真:鷹野 圭
地図を見るそれなりの広さの池沼さえあれば、カモ類は首都圏でも比較的簡単に観察されます。大抵水面に浮いているので、じっくり探す必要がないのが最大の理由。しかしこれがすばしっこい小鳥となると大変です。小鳥は天敵に見つかりにくい場所を棲み家にしますので、水辺で待っていても簡単には出会えないでしょう。かといってバードサンクチュアリでは観察小屋の小さな窓から覗かないと中を見られないので、観察できる場所が限られ、思ったほどの成果が上がりません。これは水元公園のサンクチュアリでも同じことが言えます。
とはいえ、色とりどりの可愛らしい冬の小鳥は、バードウォッチングをするならぜひ見ておきたいもの。では、簡単に出会える場所はどこでしょうか?
最も遭遇率が高いと思われるのが、小合溜の西側にあるヨシ原と周囲の湿地帯。湿地から生えるヨシの茎や木の枝などをチェックすると、ジョウビタキやシメなどの色の美しい冬鳥が見られます。ここは比較的見晴らしがよく、定点観察にはちょうど良いスポット。写真のように冬場にはバードウォッチャーが多く訪れます。中には地面に降りて種などをついばんでいる鳥もいて、そういう時は観察・撮影の格好のチャンス。彼らも、人が湿地の中にまで入ってこないことを知っているのか、思いのほか無防備な姿を見せてくれます。鳥を身近に感じる良い機会となることでしょう。
写真:鷹野 圭
地図を見る写真の鳥はクイナといい、これでもツルの仲間。上記の小合溜に隣接する湿地帯で撮影したものです。大きさは一般的なカモ類よりも少し小さめといったところでしょうか? 沖縄に生息するヤンバルクイナの名前はご存知かと思いますが、まさにあの鳥の仲間です。
このクイナ、湿原や田んぼなどで地面にクチバシを突っ込んで種子や昆虫などを食べるのですが、近年はこうした環境が減っているためか首都圏に限らず日本中で飛来数が減り、多くの都道府県で絶滅危惧種に指定されています。さらに、警戒心が非常に強いのもポイント。足音を聞いたり人の姿を見かけると走って藪の中に逃げ込んでしまうので、観察には結構苦労する鳥です。
ところが、ここ水元公園のクイナはなぜか警戒心が薄く、湿地帯でバッタリ遭遇しても慌てず騒がず、時には平気で食事を続けたりすることもあります。写真の個体も、こちらから距離にして5メートルもないのに、クチバシを地面に突っ込むばかりか逆立ちまでしてミミズ(?)を探し出す始末。やはり「ここの人間は近づいてこない」ということを学習して知っているのか? 単に好奇心旺盛なのか? いずれにしても首都圏では割と珍しい鳥を間近で拝めますので、ぜひ一度は足を運んでいただきたいですね。
※不用意に音を立てたり、騒いだりはしないようにしましょう。
写真:鷹野 圭
地図を見る公園の西端に位置する、川と池に隣接したかわせみの里。正確には水元小合溜水質浄化センターといい、その名の通り水質を改善し、元々この水辺に生息していた生きものを呼び戻すことを目標とした施設です。実際にカワセミが頻繁に飛来し、建物『水辺のふれあいルーム』の窓からは池が一望できますので、暖房の利いた建物内からカワセミの観察・撮影をすることも可能。寒い冬場にはとてもありがたい建物です。
他にも、園内で撮影されたカワセミを始めとする生きものの写真や各種資料など、水元公園の歴史や自然環境などを色々と学べる情報センターとしての役割も担っています。生きている魚やカエル、実際に園内に生えている植物などの展示もあり、公園を巡る前に一度立ち寄っておくと良い予習になることでしょう。また、専門のスタッフが園内の案内をしてくれるネイチャーガイド(無料)も実施中。約30分ほどの短い時間ではありますが、経験豊富なガイドスタッフによる解説を通じて水元公園のいろはを学べますので、初めて訪れた方には特におススメです。
ちなみにカワセミは、ここのセンター内のみでしか見られないというわけではなく、小合溜を始めとして園内各所で観察できます。
写真:鷹野 圭
地図を見る写真は2014年の初頭に撮影したヒドリガモの群れ。普段は小合溜の水面に浮かんでいるのですが、あまりに数が多過ぎて(?)エサが足りないのか、まれに陸地に上がってきて食料を探し始めることもあります。何十羽という大群で上陸しては、芝生広場で草木の種や実などをついばむことが多い模様。人間慣れしているのか、人が近くを通りかかっても逃げ出すことはあまりありません。
カルガモ親子のお散歩が一時期都内で人気になったのと同様に、普段水に浮いているカモが陸地を歩く姿は珍しく大変可愛らしいもの。とはいえ本来陸地を走り回るのは決して得意ではありませんので、あまり脅かしたりしないようにしましょう。
この他に、さすがに芝生広場まで上がってくることは滅多にありませんが、コサギやアオサギなどが小合溜畔の人通りの多い遊歩道の近くを徘徊したりすることがあります。広い池面積と恵まれた自然を有する、水元公園ならではの面白い光景といえそうです。
水源地を思わせる水元公園という名称ですが、実際に池あり、川あり、湿地ありと「水」をベースとした多種多様な空間が広がっており、ここまで豊富な水景観を有する公園は首都圏でもごくまれです。当然、水場を好む生きものが多く暮らしており、とりわけ冬場は水鳥の楽園となります。
東京都内で本格的なバードウォッチングを楽しめる数少ないスポットの一つであり、敷地が非常に広いので1日たっぷりと散策を楽しめます(むしろ1日では堪能し切れないかもしれません)。ただでさえ日の短い冬場には、時間に余裕を持って朝早くから訪れるといいでしょう。早朝は人が少ない分、普段以上に野鳥も安心して姿を見せてくれるかもしれません。
【アクセス】
JR常磐線・東京メトロ千代田線「金町駅」より、京成バスで「水元公園」下車後、徒歩7分。または金町駅より徒歩25分。
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(2024/4/18更新)
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