写真:渡部 洋一
地図を見るアンコール遺跡群として世界遺産にも登録されている、タ・プローム遺跡。
その西塔門には、観世音菩薩の顔が絶妙な微笑みで彫られています。後にヒンドゥー教の寺院に改宗されたタプロームですが、創建当初は仏教寺院であったことが、門を見るだけでもよくわかります。仏教とヒンドゥー教、2つの巨大宗教が入り混じる様も、カンボジアの遺跡の魅力かもしれません。
写真:渡部 洋一
地図を見るタ・プローム遺跡の建造物の多くは、これでもかというほど崩壊しています。そして、崩壊の跡がそのまま残されている希有な遺跡です。かつて建物の一部として、アンコール王朝の繁栄を歌い上げていたであろう石材の数々が、倒壊したままの姿で修復されることもなく散乱しています。
かつて5000人あまりの僧侶が暮らし、600人を超える踊り子が住んでいたとされるタ・プローム寺院。その中には、「パズー」という少年と「シータ」という少女もいたとかいなかったとか。しかし、アンコール王朝の衰退とともに人々は去り、19世紀後半に発見されるまで、数百年の間密林に眠り続けていました。人々に忘れ去られた遺跡の残骸を見守っていたのは、壁に掘られたデバター(女神のレリーフ)だけだったのかもしれません。
この場所に立っていると、「天空の城ラピュタ」の切ないメロディーが流れてくるようです。
なお、飛行石を持たない一般人が「バルス」と唱えても、何も起こらないことを申し添えます。
写真:渡部 洋一
地図を見る「崩壊」によって喚起された「ラピュタ」のイメージをさらに決定づけるものが、遺跡中を浸食する樹木の姿です。
人間が去った後、遺跡とともに生きてきたスポアン(ガジュマル)の木。自然の驚異が遺跡を襲っているようでもあり、逆に遺跡を崩壊から守っているようでもあります。
遺跡の発見後、自然の力の象徴として敢えて樹木の除去を行わずに残したために現在でも見ることのできる、歴史の生き証人です。
写真:渡部 洋一
地図を見る回廊に覆い被さる巨木はまるで遺跡を食べているようで、まさに「浸食」という表現がぴったりです。その圧倒的な迫力に、自然の力の大きさを改めて実感せずにはいられません。
樹齢300〜400年とも言われる大蛇のような巨木と、それに負けずに立っている遺跡。自然の力と人の力をまざまざと見せつけられる、カンボジアの遺跡観光のハイライトです。
写真:渡部 洋一
地図を見るタ・プロームには39の祠堂、塔があります。中央祠堂の内部に開いた無数の穴には、かつて宝石などの財宝が埋め込まれていたと言われています。上部の空洞から差し込む光に煌めく財宝の数々は、崩壊し樹木に浸食された現在の寺院の姿とはまた違った魅力を放っていたことでしょう。
この祠堂では、音を反響してエコーが響くことから、「エコーの祠堂」とも呼ばれています。
タ・プロームは、1186年の創建とされる歴史の長い寺院です。しかし、その年号を数字で見るまでもなく、途方も無く長い時の洗礼を受けてきたことは、その姿形を目で見ることではっきりとわかります。難しい教科書を読むだけでなく、実際にその目で見て強烈な記憶を残すこともまた、歴史を学ぶということかもしれません。
アンコール遺跡群に流れた、1000年近い時間。タ・プロームは、その時間の長さを私たちの五感で最も感じられる遺跡の一つと言えます。
そこにはシータもいなければロボット兵もいない、たまにムスカみたいな欧米人観光客がいるだけですが、悠久の歴史の中にある遺跡の前で、「バルス」と叫んでも何も起こらない自分という人間の無力さ、儚さを感じるのもまた、カンボジアの旅の1ページとなるはずです。
ジブリファン必見のタ・プローム遺跡、アンコール・ワットの観光と併せてオススメです。
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(2024/11/11更新)
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