千葉「船橋大神宮」の灯明台を見上げ、明治の息吹を感じる旅

千葉「船橋大神宮」の灯明台を見上げ、明治の息吹を感じる旅

更新日:2015/01/13 10:52

井伊 たびをのプロフィール写真 井伊 たびを 社寺ナビゲーター、狛犬愛好家
千葉県船橋市にある「船橋大神宮」は、平安中期に格式ある神社を記したとされる『延喜式』の「神名帳」に、「意富比神社(おおひじんじゃ)」と記されている。関東地方では数少ない「式内社」である。当社には、明治天皇、大正天皇、昭和天皇などの歴代天皇も参拝に訪れている。境内にある常盤神社には家康の歯を納めた家康木造が安置されている。また境内にあるオシャレな「灯明台」は、明治時代の息吹を感じひときわ目を惹く。

参拝者で賑わう意富比神社への参道

参拝者で賑わう意富比神社への参道

写真:井伊 たびを

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この神社は、景行天皇40年に皇子日本武尊(やまとたけるのみこと)が、東国平定の折り、当地にて東国平定の成就を祈願した事が始まるとされている。あわせて日照りに苦しんでいた住民のために、地元で崇敬されていた「意富比神」に祈願したともされている。

のちにこのあたりが伊勢神宮の御厨となり、その守護として「神明宮」がまつられたが、のちに廃れ「意富比神社」に合祀された。その後、天照大御神の信仰が強くなり、「意富比神社」の社名は徐徐にうすれ「船橋大神宮」と呼称されるようになった。

当社は朝廷や将軍家などから崇敬を受け、平将門、源頼朝、徳川家康などが社領の寄進や社殿の造営・改修をおこなったとされる。

主祭神を「天照皇大神(あまてらすすめおおかみ)」とし、万幡豊秋津姫命・天手力雄命を配祀されている。また徳川家康公、秀忠公も合祀されている。

オシャレな灯明台(千葉県有形民俗文化財)

オシャレな灯明台(千葉県有形民俗文化財)

写真:井伊 たびを

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境内東方の丘に立てられている木造瓦葺の「灯明台」から、明治時代の息吹が伝わってくる。ひときは目を惹く建物で、現存する「灯明台」としては国内最大級である。

船橋市教育委員会掲示によれば、かつてこの場所にあった常夜灯は、船橋沿岸を航行する船の目印となっていた。ところが、慶應4年(1868)の戊辰戦争で、社殿とともに焼失してしまった。

現在の灯明台は、明治13年(1880)に地元の漁業関係者によって、再建されたものであり、明治28年(1895)に停止するまでの間、政府公認の私設灯台として利用されていた。

標高27mの丘の上にあり、浅間神社のあった場所に建てられたので、「浅間山灯明台」とも呼ばれていた。

その建築様式は和洋折衷の「擬洋風建築」で、高さ12m程あり1階・2階は和風、3階の灯室が西洋式灯台のデザインを取り入れたオシャレな六角形のつくりになっいる。

光源は石油ランプ3基に錫製の反射鏡3基を組み合わせ、光の到達距離は約6海里(約11km)あり、その当時の最新式の設備であった。

大鳥神社

大鳥神社

写真:井伊 たびを

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境内社のひとつである「大鳥神社」の御祭神は、日本武尊である。例年十二月の酉の日、壱之酉、弍之酉が例祭日で、境内は酉の市として賑わい、多くの露天商が出、夜遅くまで参拝者で活気にあふれ、「船橋のお酉様」として親しまれている。

「酉の市」といえば、通常11月の酉の日に行なわれるのが一般的だが、当社では月遅れの12月に行われる。当日、境内で販売される熊手は、「福をかきこむ縁起物」として広く知られている。

個人は小さな熊手を、会社や商店の人は大きな熊手を買い求めるケースが多い。屋台で買い求めると、三三七拍子の景気付けが行われ、お店の人総出で「開運招福」を祈ってくれる。

豊受姫神社(外宮)にある「歯固め石」

豊受姫神社(外宮)にある「歯固め石」

写真:井伊 たびを

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豊受姫神社の御祭神である豊受大神は、伊勢豊受大神宮(外宮)に御祀りされ、天照皇大御神のお食事を司られる神様で、五穀豊穣と衣食住の守りの神様だ。

そんな関係でこちらには、「お食初め」に使う「歯固め石」が、用意されている。

歯固め石とは、もちろんこの小石を赤ちゃんに食べさせるわけではなく、赤ちゃんに「石のように丈夫な歯」が生えてくるように、さらに頭が早く固まりますようにの願いを込めて、「お食初め」の際に用意する小石のことであり、箸に小石をつけて歯茎にあてる真似事をする儀式に用いられる。

奉納相撲がおこなわれる土俵

奉納相撲がおこなわれる土俵

写真:井伊 たびを

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かつて、徳川家康は下総でよく鷹狩りを行っていた。その際の宿舎地(現在の船橋東照宮)が、船橋に設けられていた。

そんな関係で、家康公が船橋に宿泊時、漁師の子供達の相撲を供覧したのが、この「土俵」の始まりと伝わている。秋の例大祭の10月20日には、大人の奉納相撲が開催されるが、「しょっぱな」はこの故事にならい子供同士の形だけの取組が行われ、その後大人の取組が行われる。子供達の相撲は例大祭日前の土日を選んで行われる。

この奉納相撲は、天正18年(1590)の家康の上覧相撲が、起源とされている。実に400年以上の歴史と伝統があるということだ。

まとめて

境内社の中には、他にも舟を形取ったユニークな「船玉神社」や、徳川家康公を御祀りしている「常磐神社」などがある。この「常磐神社」には、徳川家康の「歯」が埋められた柱が祀られている。ところが、現在は改修中(平成27年10月完成予定)で、残念ながらお参りすることはできない。

また境内にある「神楽殿」では、例大祭(10月20日)をはじめ、正月三が日・節分・12月の二の酉に神楽が演じられる。これは、船橋市指定無形民俗文化財となっている。

こちらへ訪れるのなら、「大神宮下駅」から徒歩3分の「京成電鉄」がオススメだ!

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/01/03 訪問

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