写真:菊池 模糊
地図を見るイエスは最後の晩餐の後、「弟子たちは皆、私につまずくであろう」と予言しました。
ペテロに対しては「あなたこそ今日、今夜、にわとりが鳴く前に、三度私を知らないと言うだろう」と伝えます。
これに対しペテロは「たとえあなたと一緒に死なねばならぬとしても、あなたを知らないなどとは、決して申しません」と断言します。
現在の、鶏鳴教会の上階裏入口の門扉のレリーフには、このイエスが伝えたペテロの三度の否認の予告が描かれています。写真のように、イエスが三本の指を立てて、ペテロを指し示しています。
この後、ゲッセマネの園でユダの裏切りによってイエスが捕縛された際、弟子たちは皆イエスを見捨てて逃げ去ったのです。
まさに、イエスの予言どおりでした。
そしてイエスは、大祭司カヤパ(カイアファ)の屋敷に連れていかれ、激しい尋問と拷問を受けます。
写真:菊池 模糊
地図を見るペテロもゲッセマネの園から逃げ去ったのですが、イエスの弟子のリーダーとして責任を感じたのでしょう。しばらくして、イエスが尋問と拷問を受けている大祭司の屋敷の中庭へ忍び込み、人にまじって様子をうかがっていました。
大祭司の女中のひとりが、ペテロが火にあたっているのを見て、「あなたもあのナザレ人イエスと一緒だった」と言うとペテロはそれを打ち消して、「私は知らない。あなたの言うことが何の事か、わからない」と否定します。
そして同じように計三度も否定します。その時、にわとりが鳴くのです。
ペテロはその瞬間「にわとりが鳴く前に、三度私を知らないと言う」と言われたイエスの言葉を思い出し、身を投げ出して号泣するのです。
これは、四つの福音書すべてに同じように書かれている衝撃的なエピソードです。
ペテロさえも否認した---この事実に誰もが愕然たる思いにとらわれます。
写真のように、鶏鳴教会の入口敷地に、ペテロの「知らない」という否認の像が立っています。
まさにここで、2000年前に起こった出来事ですから、ペトロの三度の否認を目前で見ているような気分になります。
写真:菊池 模糊
地図を見るペテロが三度否認した鶏鳴教会の内部には、イエスが尋問と拷問を受けた場所があります。
まずイエスが吊り下げられた地下牢があります。
拷問の主たるものは鞭打ちでした。鞭といっても柔らかいものではなく、硬い革に金属が埋め込まれた残酷なものでした。
鞭打たれ、吊り下げられたイエスは、瀕死の状態になるのです。この地下牢に入って天井を見上げると、イエスが上から吊るされた穴が見えます。ここは、イエスが夜を明かした牢獄でもあるわけです。
その後、1階から2階へと鶏鳴教会の内部を見学します。2階への階段にも十字がシンボライズされた素敵なステンドグラスの窓があります。
そしてなにより、写真にある天井の十字架状のステンドグラスは素晴らしいものですので、忘れないように見上げて、じっくりと鑑賞してください。
写真:菊池 模糊
地図を見るイエスは拷問や尋問を受けた際、何も言わなかったのですが、最後に大祭司が問うた質問には答えます。
「お前は、誉むべき者の子、キリストであるか」と最後に大祭司が問うとイエスは言います「私がそれである。あなたがたは人の子が力ある者の右に座し、天の雲に乗って来るのを見るであろう」
それを聞いた大祭司は衣を引き裂いて言います「これ以上証人の必要があろうか。汝らはこの冒涜を聞いたか。汝らの意見はどうか」
すると、ユダヤ教の審問官らは皆、イエスを死に当るものと断定したのです。
鶏鳴教会の内部の祭壇には、写真のような壁画があり、イエスの受けた尋問の様子が見られます。
ここでイエスがこのような尋問を受けたのかと思うと、私たちは戦慄を覚えます。
こうしてユダヤ教の大祭司宅で有罪と定められたイエスは、当時、十字架刑に処する権限を有していたローマ帝国の総督ピラトの官邸に連行され十字架刑の判決を受けることになります。そしてヴィア・ドロローサ(苦難の道)で自らの十字架を背負って歩かされゴルゴダの丘(現・聖墳墓教会)で処刑されるのです。
写真:菊池 模糊
地図を見るペテロは後に、イエス死後のキリスト教団の指導者となった人です。
普通は指導者の失敗や弱さを隠そうとするものです。しかし、このイエスを否認するというエピソードだけは明瞭に示されています・・・恐らくペテロ自身も隠さず語ったと思われます。このことも驚きです。
この新約聖書に書かれている重要なエピソードが実際に起こった場所である大祭司カヤパ(カイアファ)の屋敷は、現在は、ペテロの三度の否認をテーマとした印象的な教会となっているのです。
鶏鳴教会の正式名は、The Church of Saint Peter in Gallicantu すなわち「鶏鳴の聖ペテロ教会」と言います。
この教会建物自体はペテロ伝承に基づき新しく建てられたものですが、教会の側にある磨り減った石段はイエスの時代に建造されたもので、イエスその人が実際に歩いた可能性があります。この付近を踏みしめて歩けば、イエスの時代の風を感じていただけるでしょう。
シオンの丘の急な東斜面に立ったこの教会は、写真のようにモダンな雰囲気で、とても美しく、天辺には十字架とニワトリが金色に輝いています。
かつては、この鶏鳴教会もヴィア・ドロローサの巡礼ルートに加えられていたそうです。
この近くには、「最後の晩餐の部屋」「ダビデ王の墓」「聖母マリア永眠教会」といった重要な観光スポットもありますので、時間をとってゆっくり見学されることをおすすめします。
この鶏鳴教会でのペテロの三度の否認は、イエスの受難物語のひとつのキーポイントであり、イエスの否認予言からペテロの号泣まで劇的構成の重要挿話となっています。
ペテロはイエスを否認するという裏切りをなしたのですが、そのことを改心し逆説的なエネルギーに変えて、後にイエスの衣鉢を継ぎキリスト教団を指導して行くのです。そしてローマで殉教し、そのペテロの墓があるところに後世になって建てられたのがバチカンの中心である聖ペテロの寺院すなわちサン・ピエトロ大聖堂です。
改心とその責任の取り方、人間の弱さと強さ、負の行為を反省し正のエネルギーに変えるあり方、人生の再チャレンジの可能性など、キリスト教徒でなくとも、いろいろ考えさせられる話ではないでしょうか。
私たちが今、鶏鳴教会を見学する時、熱く胸をよぎるものがあります。ぜひここを旅して、2000年前のイエスとペテロの物語に思いを馳せてください。
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(2024/3/19更新)
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