紀元1世紀。ローマ帝国の時代、イタリア南部のナポリ、ソレント、カプリ島などは貴族の避寒地として人気があり、別荘が立ち並ぶ街でした。そしてポンペイもまた、そんな都市の一つでした。当時は湾港都市として商業が発達しており、最盛期には人口約2万〜2万5千人だったと推定されています。
紀元63年、この地を大地震が襲い、街は瓦礫と化します。この災難に人々は力を合わせて街の再建に取りかかるのです。しかしこの時、地震の原因が、すぐ近くにそびえるヴェスヴィオ火山であったとは誰も気付いていませんでした。
それから16年後。紀元79年8月24日の昼ごろ、突如ヴェスヴィオ火山が噴火。復興の途中にあったポンペイを火山灰が襲います。翌25日の夜には火砕流が発生。火砕流とは高熱の火山ガスや火山灰・軽石などが混ざりあったものが、時速100キロ以上の速さで山から流れ落ちてくる現象です。これによって、ポンペイは一瞬にして火山灰の下に埋もれる事になったのです。
個人でポンペイへ行く場合、ナポリを拠点に電車で向かうのが便利です。
ポンペイ周辺にはいくつか駅があり、ナポリからもそれぞれ路線が走っているのですが、おすすめはヴェスヴィオ周遊鉄道(Circumvesuviana)。ナポリ中央駅から徒歩5分ほどのポルタ・ノラナ(Porta Nolana)駅が始発なので、ここから乗るのがわかりやすいと思います。ソレント行きに乗って約40分、ポンペイ・スカーヴィ - ヴィッラ・ディ・ミステリ(Pompei Scavi - Villa dei Misteri)駅で下車。駅前すぐが遺跡のマリーナ門の入口です。
この入口で全体マップをもらう事ができます。ポンペイは一つの街が遺跡になっているので、かなり広く、道が碁盤の目状に通っています。あると大変便利なので、忘れずにもらっておきましょう。
マリーナ門から入場した場合、道なりに進めば街の中心であったフォロへ出ます。ここには神殿や市場、浴場などが残っており、まさにポンペイ住人の生活の中心だった場所です。
浴場は内部の見学ができますので、ぜひ見ておきましょう!
ポンペイ入場料:11€
ポンペイ、エルコラーノ他、5遺跡共通券は20€(三日間有効)
火山灰に一瞬にして埋もれたがために、街は風化を免れ、形だけではなく、壁画の色までもが保存される事になりました。
遺跡を散策していると、石臼やかまどが残るパン屋や、ワインを入れていたであろう「かめ」が並ぶ酒屋などが所々で見られます。商店の壁には絵がそのまま残っているものもあり、約2000年前の人々の様子が想像できます。
モザイク画で面白いのは『悲劇詩人の家』の床のモザイク。「猛犬に注意」と書かれた犬のモザイク画が残っています。また『ファウヌスの家』では、有名なアレクサンダー大王のモザイク画が発見されました。ペルシアのダレイオス3世との戦いを描いたもので、本物はナポリ国立考古学博物館にあるのですが、ここでは本来あった元の場所で複製を見る事ができます。
時間があれば、ぜひ見学したいのが『秘儀荘』です。遺跡北西のはずれにあります。ここでは背景に「ポンペイの赤」と呼ばれる独特の赤色が美しい神秘的な壁画が残っています。
ポンペイの本格的な発掘は18世紀になってからでした。
19世紀には考古学者のフィオレルリが、火山灰の穴に石膏を流し込み、固まった後に回りを削るという方法で、人間の形を再現させました。火山灰が人間の上に降積もって固まり、長い時間の中で人間の体は朽ち果てて空洞になっていたのです。
現在、遺跡の中には所々に展示スペースがあり、悲劇の瞬間の様子を見る事ができます。石膏と言えども、表情がはっきりとわかるものもあり、生々しさが伝わってきます。
なお、この噴火で亡くなった方は全人口の約1割であったと考えられています。街と一緒に人々も全滅したと思われている方も多いのではないでしょうか?実際、火山が噴火してから火砕流が発生するまでには半日ほどの時間があり、9割の人は逃げていたのです。なぜ1割の人は逃げなかったのか?それを想像するのもまた歴史の楽しみ方ですね。
マリーナ門から正反対の場所には、紀元前70年頃に造られたと考えられる円形闘技場も残っています。これは現存する円形闘技場の中では最古のものです。有名なローマのコロッセオが完成したのが紀元80年なので、それよりも100年以上も前のものなのです。この円形闘技場は、ポンペイの街の規模や当時の人口から考えると、収容人数の規模が大きすぎる造りとなっているため、ポンペイ以外の街から人々がやって来ていた事を証明しています。
闘技場は中に入る事ができます。実際に中心に立ってみると、当時ここで行われていた剣闘士達の気持ちになれるかもしれません。
ポンペイを全部見て回ろうとすると丸一日かかってしまいます。有名な場所だけを回るとしても、2〜3時間は必要です。特に秘儀荘や円形闘技場は、主要スポットが集中しているフォロ周辺から距離があるので気をつけましょう。効率よく回るために、あらかじめ見たい場所を決めておいた方が賢明です。
遺跡内の通路は昔のまま残っており石畳の道が続きます。歩きやすい靴は必須です。また日陰の場所も少ないので、帽子と水も忘れずに。特に夏場は気をつけましょう。
世界遺産としては「ポンペイ、エルコラーノ及びトッレ・アヌンツィアータの考古地区」という名で登録されています。この、エルコラーノとトッレ・アヌンツィアータもポンペイと同じくヴェスヴィオ火山の噴火で廃墟と化した街です。エルコラーノはナポリとポンペイの間にありますので、時間があれば、こちらも一緒に見ておかれてはいかがでしょうか?
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(2024/12/5更新)
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