写真:菊池 模糊
地図を見る花の文化園は「花と人との関わりを理解する場」をコンセプトに、普通の植物園とは少し異なる視点でつくられたものです。
ここでは楽しみながら積極的に体験することがおすすめですが、そのひとつとして花の写真撮影を取り上げてみます。以下、撮影技法を交えた花の歳時記を参考にしてください。
花の文化園では、早春からまず花木が咲き始めます。
ロウバイが黄色い輝きを見せると、続いて各種の梅の花が梅林でたくさん開花します。ツバキ園もあり風情のある花を咲かせます。「梅は枝ぶり」「ツバキは花のアップ」を心がけて撮りましょう。
イチゴノキ、ミツマタ、マンサクといった個性的な春の花木も早春を彩ります。
露地では水仙類やスノードロップ、クロッカスなどが咲きはじめます。これらの早春の花は、まだ周囲の緑が少ないので撮影しやすく、主題を際立たせることが出来ます。
こうして、花がいろいろ咲き出し、日毎に暖かさが増して行けば、多くのカメラマン達が腕の見せどころとばかり撮影に励むようになります。
他に見られない花の文化園の特徴は、春に咲くクリスマローズです。おそらく質量ともに日本有数と思われるクリスマローズたちは圧巻ですが、深く頭(こうべ)を垂れる恥ずかしがり屋の花なので、写真撮影するのには、なかなか手ごわい相手です。ぜひローアングルの撮影を試みてください。
また、春先は、スプリング・エフェメラルと呼ばれる可憐で繊細な花たちが、あちらこちらに咲いてくれます。
林床で、他の大きな植物がまだ芽も吹かない早春に花を広げ、木々が葉をつけ陽が射さなくなると休眠してしまう、まさに春の妖精です。
セツブンソウ、カタクリ、フクジュソウ、ユキワリソウ、イチリンソウ、ショウジョウバカマといった花たちですが、小柄なので接写できるカメラ機材で撮るのがコツです。
そして、いよいよ桜の季節が到来します。花の文化園の桜は規模は小さいですが、いろいろな品種があり、それぞれに個性的な表情を見せてくれます。大温室近くのエドヒガン桜と、ハーブ園近くの枝垂れ桜が被写体としておすすめです。
また、桜は散ったところも風情があります。
写真に載せましたのは、散った桜と椿の花一輪ですが、こうした春の花同士の組み合わせも一興です。
写真:菊池 模糊
地図を見る桜が終わると、春の花がいっせいに咲きはじめます。
チューリップをはじめとする球根系の花や、ポピー、アネモネなどが咲けば、いよいよ本格的な花の季節の到来です。
真紅や黄色のチューリップなどは色が強すぎて、写真に撮ると色飽和してしまうことがあります。その際は彩度を下げて色の質感が表現できるようにしてください。
花の文化園には、牡丹園があり豪華絢爛な花を満喫できます。牡丹は大きくて撮りやすい花なので思うがままにカメラに収めてください。
シャクヤクやフジ、エキウム、ツツジ・シャクナゲ類も撮影しやすい被写体です。
また、花の文化園は山野草類にも力を入れており、奇妙な形のテンナンショウ類やエビネをはじめとする東洋ラン類、水辺に映えるアヤメ類、高貴なサクラソウ類、サンザシやヤマボウシ・ハクウンボク・カラタネオガタマといった上品な花木たちが次々と素敵な花の姿を見せてくれます。コマクサなど貴重な高山植物を植えたロックガーデンもあります。
これらの花は、一見地味で背景に埋没しやすいので、撮影する際は絞りを開いて後景をボケさせるなどの工夫が必要です。
写真に載せましたのは、上品な花木の代表であるハンカチノキの花びら(正確には苞葉)です。ひらひらと舞い降りてきて、木漏れ日のあたるベンチの上に落ちた瞬間を撮影しました。ピントを中心の蘂に合わせて前後を柔らかく表現しています。こういう撮り方も時には面白いものです。
春も深まると、いよいよ薔薇とクレマチスのシーズンです。花の文化園ではこの両花のガーデンがあり、たくさん栽培されています。品種が豊富で花期も長い花たちで存分に楽しめることから、多くのカメラマンが熱心に撮影しています。
特に薔薇は写真撮影の代表的な被写体なので、構図を工夫し自分ならではの個性を出すように努力しましょう。
梅雨に入るとアジサイ園では、たくさんの種類のアジサイが咲き出します。アジサイは晴れた日より曇りや雨の日の方が雰囲気が出ます。撮影時には、しっとりとした風情を表現してみましょう。
写真:菊池 模糊
地図を見るアジサイの季節が終わるといよいよ夏です。
大輪のユリ類やヒマワリが夏の到来を知らせてくれます。
こうした大きな花を撮影する際は、下から狙って青空をバックにすれば、背景に余計なものが写らなくなります。
青い空を青く写すためには、順光で撮ることが基本です。
花の文化園で、夏に見られる独特の花は、ギボウシとトウテイランです。ともに花期が長く、ギボウシは6〜8月、トウテイランは8〜9月に楽しめます。他所ではあまり多く見られない花たちですので、忘れずに撮影しましょう。
そして、夏の真打ちは、ヒョウタン池周辺で見られる、スイレンと蓮です。
とても美しく整った花ですので、その造形の美しさを写真で表現してみましょう。
掲載した写真は、開きかかった蓮の花を主題に、遠くに開ききった蓮をボカして入れたものです。このようにメインの花だけでなく、背景の写りも考えながら撮影しましょう。
真夏になると、さすがに花の種類は減りますが、元気に咲いてくれる花たちも見られます。
露地ではトレニアやジニア(百日草)が咲き、大温室ではベゴニア類やハイビスカスの仲間が咲き続けています。
これらは濃厚な花色の品種が多いので、色飽和しないように、なるべく淡めに撮ってちょうど良くなります。
真夏に屋外で花の撮影をする場合は、熱中症に注意してください。水分の補給を万全にし、帽子や日焼け止めクリームなどを使って紫外線の防止を心がけましょう。
写真:菊池 模糊
地図を見る初秋になると植物はまた元気を取り戻し、多くの花が咲き出します。
ハギ、キキョウ、ナデシコといった紫系の花たちが、秋の七草通りで見られます。
この時期は、リンドウ、セージ、スターチスといった青系の花も多く咲き出し、いよいよ秋だなあと実感します。、
こうした秋の花の青〜紫色を忠実に再現するのは案外難しいので、撮影結果を確認しながら、出来ればホワイトバランスを調整するのがベストです。
薔薇やクレマチスも秋になると再び咲き出します。春とはまた違った雰囲気を撮影しておきましょう。
秋も深まれば、ヒガンバナの仲間や、ダリア・コスモス・シュウメイギク・ツワブキといったキク科の花がたくさん咲きます。
なかでもコスモスは、しなやかな風情があり、秋の花として最高の被写体です。風に揺れる繊細な動きを表現したり、あえて逆光で撮影してコスモスの透明感を表現してみてください。
もちろん晩秋は花だけでなく、紅葉を楽しむ季節です。
もみじ谷付近で見られる紅葉はとても綺麗で、和風に造成されているので、写真に最適です。谷筋にかかる木橋などを入れて撮影してみてください。
またガマズミやソヨゴといった赤い実も見逃せませんし、散った落ち葉も朽ちゆく美の醍醐味を味わえる被写体です。
掲載した写真は、晩秋にカエデの種が垂れて風にそよいでいたので、背景紅葉の丸ボケを活かして逆光で撮影したものです。逆光は難しいですが、独特の表現が可能なので、いろいろ挑戦してみてください。
写真:菊池 模糊
地図を見る真冬は路地では花が少なくなりますが、実はこの時期は大温室の花が見頃なのです。
カトレアを代表とする洋ラン類や冬咲き原種球根類、各種観葉植物などがたくさん見られます。
ラン類は、一年間いろいろな花が咲き、けっして冬だけとは言えないのですが、冬は花持ちが良く綺麗な状態のランの花を撮影できる一番のチャンスなのです。
もちろん花の文化園の誇るピラミッド型の大温室は外が寒くても中は暖かく、比較的人が少ないので、落ち着いて撮影に取り組むことが出来ます。
大温室に入ると、まず乾燥温室がありサボテン類や多肉植物を楽しめます。キンシャチというサボテンは迫力があり、奇想天外という植物には驚かされます。
続いて熱帯温室があります。トケイソウの奇妙な花が出迎えてくれ、マイナスイオンたっぷりの滝もあります。滝横の壁面にはストレストカーパス(イワタバコ類)が貼り付けてあり面白い写真が撮れます。豪華なストレリチア(極楽鳥花)や薄紫のフブキバナも見られます。
温室内通路を左へ登ると常温室に入ります。ここはパンダカンアオイなど珍しい山野草類が多く展示されています。小さな被写体ばかりなので、ぐっと寄って、接写して楽しみましょう。
常温室を出ると熱帯温室の二階部分となり、高さがあるので、ソーセージツリーやタコノキなどの熱帯樹木を見上げることが出来ます。左側には食虫植物のコーナーがあり、ウツボカズラをはじめとする独特の形と生態を楽しめます。
そしてランのコーナーでは、カトレアなどの各種の洋ランが咲き誇っています。花の女王と呼ばれるにふさわしい艶やかな姿です。
掲載した写真は、カトレアの花をメインにして、背後に赤いアンスリウムを少しボカして配したものです。このように、構図の工夫と背景をボカすことで、人工的な鉢や標識などを写らないようにすれば、自然な雰囲気が出ます。
温室は魅力的な植物がところ狭しと並んでいます。そこで、あまり多くの被写体を欲張らず、主題の花に注目させるのが温室植物撮影のコツです。
花の文化園では、四季それぞれに魅力的な花が咲いています。その美しさを写真に残してみませんか?
撮影するのは、見ることから一歩進んだ創作的行為です。さらに写真作品づくりを意識すれば新しい世界が広がります。
そうしたあなたに、花の文化園は、いつでも豊富な素材を提供してくれます。
本格的に写真撮影しようとすれば、最低限の技術が必要ですが、それにとらわれ過ぎてもいけません。一番大切なものは「感動する心」です。
特に花の撮影では、花の美しさに気づかなければ撮影出来ません。花への興味がモチベーションを高め、造化の妙に対する感受性が撮影の機会をとらえるのです。自分が感動した瞬間を素直に表現していけば、あなたの個性がおのずと写真に反映されて来るでしょう。
ぜひ、ここでの花との出会いを契機に、写真撮影にチャレンジしてみてください。
花の文化園では、植物展示を基本として、さまざまなイベントが行われており、ガーデニング、フルルマーケット、大道芸、フラワーコンサート、テラコッタドール作成、クラフト教室、花や植物の図書館、絵や写真の展覧会やコンテスト、コスプレの日、フルルの日、職員によるガイドツアーそしてガーデンウェディングに至るまで興味は尽きません。
楽しむとともに学ぶことも出来る体験型の植物園といえるでしょう。
なお、無料駐車場を共有する「奥河内くろまろの郷」がオープンし、JA大阪南農産物直売所や奥河内ビジターセンター、河内長野市立ふるさと歴史学習館もすぐ近くにあります。また、南大阪最大の冬季イルミネーションイベント「奥河内イルミナージュ」も始まりました。
ますます花の文化園の魅力が広がっています。
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(2024/12/13更新)
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